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加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

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January 14, 2010
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カテゴリ:音楽
 昨年の最後のオペラも、今年の初オペラも、「椿姫」でした。
 昨年最後は静岡で、今年の最初は、作曲家の生地ベルガモにある、ドニゼッティ歌劇場の引っ越し公演。
 ドニゼッティ歌劇場は、「椿姫」と、ドニゼッティの名作「愛の妙薬」の2本立て。さすがというべきか、作曲家ゆかりの「愛妙」がはるかに楽しめました。

 もともとドニゼッティ歌劇場というのは、常打ちの劇場ではありません。オペラは特定の時期だけ、フェスティバルのようにしてドニゼッティのオペラを上演するだけです。
 昨年の秋、ちょうどベルガモに観光に行き、劇場のなかも見せてもらえましたが、伝統的で家庭的な雰囲気、といえばきこえはいいですが、要するにイタリアの田舎の劇場。常設のオケもなところです。
 ちょうど見学のとき、来日演目である「愛妙」の公演中で、舞台装置が舞台に乗っていました。シンプルといえばこれもきこえがいいですが、ちょっと庭園風の、どうということのない装置。うーん、どうでしょう、と思ったのは事実です。

 ところが、これがけっこう気がきいていたのですね。
 シンプルながら、庭園のような装置はまんなかの塀の部分が閉じたり開いたりして、うまく変化がついている。色彩も春のような淡い感じで、舞台で実際に観るとなかなか素敵です。
 加えて、衣装がそれにぴったりの、白をベースにした淡い色合いで、背景とうまくマッチしていました。
 ベロットというひとの演出自身も、とても気がきいていました。
 序曲の間には、幕前にドウルカマーラと、ベルコーレの一隊が登場。これから村へ向かって行くようすの描写、というわけです。
 ドウルカマーラには、男女それぞれ2人のバレリーナがおつきのようにつき従い、場面に応じてしゃれた演技を見せていました。
 歌手たちも、演技は堂にいっていました。日本人だと、残念ながらなかなかこうはいかないかな。とくにブッファの演技は、日本人はどうしても硬くなってしまいますね。

 とはいえ、公演に満足できた第一の理由は、やはり音楽。
 一にアデイーナのランカトーレ、2に指揮のステファノ・モンタナーリでしょうか。

 ランカトーレは成熟してきた感じです。10月にフィレンツェで聴いた「リゴレット」も素晴らしかったですが、今回もそれにまさるとも劣らず。存在感のある、しっとりしていながらきらめきのある声は完璧にコントロールされていました。何より、歌にも演技にも、そして容姿にもかわいらしさがあります。ほんと、観ているだけでチャーミングでした。
 以前、同じ役を森麻季さんで聴いたときも感心しましたが、やはりこれに比べると森さんはメカニカルというか、女性らしい湿り気が足りない気がします。

 ネモリーノ役のロベルト・イウリアーノも健闘。途中で声が出なくなってはらはらしましたが、「人知れぬ涙」は熱唱でした。このひと、プログラムの写真より本もののほうがずーと素敵でした。
 
 掘り出しもの?は指揮のモンタナーリ。経歴からみると古楽系のひとのようですが、そのせいもあるのでしょうか、痛快なほど活気に満ちていました。テンポも大胆ですが、歌手とは齟齬なく音楽がうまく流れていました。正直、「椿姫」のときとは別のオケのようだったのです。
 カーテンコールも盛り上がり、みなのりのりで、何度も手をつないで舞台奥にしりぞいては前面にかけだしてきていました。最後はオケピットの横の花道?まで出てくるノリようでした。
 
 これに比べると、「椿姫」はいまひとつ。
 主役のデヴィーアが売り物の公演でしたが、デヴィーアはとくに後半では熱演だったものの、第1幕はちょっとはらはらさせられました。
 声が少し重くなったような気もします。迫力はありますが・・・
 ほかの歌手は中堅どころ、ジェルモンのアルトマーレなど、イタリアではよく出ているひとだとおもうし、きいたこともあるとおもうのですが、そう印象に残っていません。
 アルフードのアントニオ・ガンディアは、声はいいですが、まあうまい、というところまでは、という感じです。アルトマーーレとならんで、そこそこ出ている、というクラスの歌手だと思います。
 もっとも今回の公演、歌手はデヴィーアとランカトーレが売りで、あとは中堅どころで固めていることは織り込み済みですから(お客さんも大半のひとはわかっているはず)、こんなところでしょう。
 「椿姫」の不満は、むしろパニッツアの演出とチンクエグラーニの指揮。「ベルエポック時代」とやらの演出は中途半端で、ベッドの枠(なぜか丸い)がアリアの間にぎいぎいいいながら上下するのは疑問でした。衣装もセンスがいいとはいえないような。
 指揮は、まあ何もないような。ただ振っているだけ。歌手との呼吸も合わない部分がありました。後できいたところによると、ゲネプロの時間がごくわずかだったとか。明らかにかけだしの指揮者、それは酷ですね。

 ともあれ、「愛妙」は、公演としては、これまで観た「愛妙」のベスト3に入るように感じました。さすが、手の内、というところでしょうか。やっぱりオペラって、伝統芸能、です。
 
 こういうのを観ると、イタリア・オペラ大好き!とあらためておもいます。批評家諸氏が絶賛していた新国の「ヴォツエック」より、私はやっぱりこっちがいいなあ。





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最終更新日  January 15, 2010 11:11:46 PM


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