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加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

March 17, 2010
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カテゴリ:音楽
 サントリーホール名物、ホール・オペラ。
 3年前から始まった、モーツアルト=ダ・ポンテ三部作が今年で終わり、ホール・オペラも一区切りなようです。文字通り、「ホール」でのオペラの可能性を押し広げた企画でしたから、残念ですね。
 その三部作の最後は、「コジ・ファン・トウッテ」。個人的にはそのシンメトリーな美しさに、近年とみに心を惹かれる作品です。
 指揮は最近の常連、ニコラ・ルイゾッティ、演出はガブリエーレ・ラヴィーア。

 昨年の「ドン・ジョヴァンニ」では、日本にしてはかなり過激な演出で話題を呼んだラヴィーアですが、今回は伝統的なものの枠をはみ出さずに、工夫もあり、しゃれた舞台でした。

 個性的だったのは、作品の舞台であるナポリにちなんだ、コメディア・デラルテの道化師(
プルチネッラ)たち。
 白と黒の衣装をまとった彼らが舞台に頻出し、その場の空気や、人物の感情を演出します。といってもドイツ系の演出家のような忙しさはないので、音楽を邪魔することはありません。
 また装置の入れ替えも、黒い衣装の彼らが行うので、黒子のようでスムーズです。このあたり、日本の伝統芸能にも造詣が深いというラヴィーアならではのアイデアかもしれません。
  
 そのほかの装置などはごくシンプルかつオーソドツクス。アイボリー色のパラソルやソファ、ベッドや天蓋が場面ごとに出入りし、簡潔かつ雄弁に場面を説明していました。

 歌手はさすがにそろっていました。
 一番安定していたのは、フィオルディリ-ジ役のセレーナ・ファルノッキア。ホール・オペラの常連でもあり、貫禄です。あぶなげがない。やや華に乏しい印象もありますが、安心して聴いていられました。
 ドラベッラ役のニーノ・スルグラーゼは、グルジア出身の若手。スカラ座あたりでも活躍しているようです。パワフルで若々しい声は、やや蓮っ葉な妹に似合わないでもありません。ヴィジュアルもよく、若きネトレプコみたいな感じです。
 デスピーナ役のダヴィニア・ロドリゲスは、美声と安定度、コミカルな演技で将来有望と思わされました。会場で会った知人の話だと、指揮者のフリッツア夫人とか???知らなかったなあ。

 男声陣では、グリエルモ役のマルクス・ウェルバが頭ひとつ出ていたでしょうか。スタイリッシュな美声、うまいです。
 フェッランド役のフランチェスコ・デムーロは、リサイタルを聴いたときと同じ感想、素質はありますが、きちんと歌う、という点ではこれから。でも将来が楽しみではあります。
 ドン・アルフォンソ役のエンツオ・カプアノは、安定していましたがパンチには欠けるかもしれません。声の魅力がいまひとつほしかったかもしれない。

 けれど、音楽面での一番は、ルイゾッティ指揮のオーケストラ(東響)。「コジ」がこんなに官能的だったなんて!第1幕の姉妹とアルフォンソの小三重唱など、「宗教的」という声もきく曲ですが、今日はなめらかなにおい立つような弦のせいでしょうか、じつに官能的でした。
 音楽面では、アリアをすべて演奏し(なのでやや長い。また第1幕のグリエルモのアリアはK584)、通奏低音に、チェンバロ、フォルテピアノ、テオルボを用意して使い分けていた(プログラムによれば指揮者の発案)のも発見でした。
 ルイゾッティ自ら奏でていたフォルテピアノのパートでは、レチタティーヴォでロッシーニの歌曲!(ピアノフォルテのみ)を入れる遊び心もあり。

 そして注目の最後の演出。今回、2組のカップルは、2度入れ替わり、もとのさやに戻ります。
 知人いわく、「男は愛していなくとも浮気し、女は新しい男が現れればなびく。そんなものだよ、ということなのでは」。
 その彼は、やはり原作通り、もとのさやに戻る(というのは上に書いたような意味なのですが)のが、一番好きなのだ、と言っていました。

 なるほど、ねえ。

 「コジ・ファン・トウッテ」。やはり奥の深いオペラです。






最終更新日  March 19, 2010 12:25:41 AM
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