カテゴリ:音楽
バリトンの堀内康雄さんといえば、日本を代表するオペラ歌手のひとりです。
個人的には、ほんとうに世界に通用する日本人歌手は、堀内さんと藤村実穂子さんだと思っています。 お2人とも、むらがなく、技術的に安定していて、しかも声に力があり、美しい。 そのおひとりである堀内さんを、朝日カルチャーセンターにお招きして、美声を披露していただきつつ、お話をうかがうことになりました。(6月7日) 数日前、帰国中の堀内さんと、打ち合わせをすることができました。 で、やはり出てしまいました。「イタリア・オペラの「声」の衰退」。 堀内さんいわく、「ヴェルディ・バリトン」の伝統にしても、グローバル化のなかで、わからなくなりつつある、というのです。 おそらく70年代くらいまでは、それが引き継がれていた。 ヴェルディが実際に起用したバリトン、ヴァレージやモレルといったひとたちの歌い方が、ディ・ルカ、バスティアニーニ、カップッチッリ、そしてブルゾンやヌッチくらいまでは、どこかで受け継がれていたのではないか。 けれど今はそれが見えにくくなっている。というのです。 ひとつは、グローバル化も関係しているけれど、「はやりの歌い方」の流行。 私は堀内さんの歌を聴いていると、イタリア語がきちんと美しく響いてきてとても心地いいのですが、そのような、声の魅力、声の色や声量、声の力で聴かせるのは、いまどきだとちょっと古くさい、と受け取られてしまう。 今は、声はわりとあっさりと、一方でビジュアルとか演技力が求められているのではないか。(これは声楽だけでなく、オケにもあてはまるような気がしますね)。 それから、これもよく言われることですが、最近だと歌手が早く出て行きすぎてしまう。下積み期間がない。 ヌッチの伝記にも書いてありましたが、スケールの練習ばかり6、7年やっていた時期があった、それが普通だった。また歌手の層が厚く、なかなか出ていけなかった。 けれど、最近はそんな話は聞きません。歌手が消耗品、使い捨て、になりつつある。 堀内さん、たとえばフランス料理でも、伝統的なものからヌーベルキュイジーヌ、へという流れがある、あれに似ているかも、と、いろいろ例をだしてくださいましたが、確かにオペラに限らずさまざまな面で、グローバル化の影響が出ている、ということなのでしょう。 それを「声」の面から具体的に説明されたのは、興味深かったです。 講座は6月7日の13時30分から。曲は「プロヴァンスの海と陸」、ほか1曲。2曲目は未定ですが、ヴェルディ・アリアになる予定です。残席が限られてきたので、ご興味のある方はぜひ! http://www.asahiculture-shinjuku.com/LES/detail.asp?CNO=66095&userflg=0 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
April 8, 2010 08:42:18 AM
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