3310342 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
December 26, 2013
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類

 イタリア旅行のこぼれ話、その3は、「ドレスコード」について。

 「オペラ」というと、ロングドレスにタキシード。そういう時代がはるか彼方のものになってしまったことは、ご存知の方も少なくないと思います。 もしくは、そのような正装の習慣が、一部のフェスティバル(ザルツブルクやグラインドボーン)、と、大劇場のシーズンオープニング(スカラ座をはじめイタリアの劇場やメトなど)に限られてしまっていることも。

 シーズンオープニングといっても、たとえばフランスなどまるで「正装」の空気はありません。2年前、リヨンの歌劇場のオープニング当日の「マクベス」に行った時、フランスにせよオープニングだからといちおう?ロングスカートをはいていって、場違い感を発信してしまいましたから。ドレスコードはカジュアルの一頃。ネクタイ姿もほとんど見かけず、お隣のジャーナリストらしき人物はスニーカーにリュックサックというていたらく(失礼!)。会場で会ったパリ在住のジャーナリストの知人にこぼしたら「だってここはフランスですよ」と言われてしまい、ぎゃふん。「リヨンは若いひとが多いから、よけいカジュアル」なんだそうでした。

 そんなわけで、当節、海外へオペラ観劇に出かけても、せいぜい「ちょっとおしゃれ」くらいが浮かないドレスコード。ま、国によって多少の差はありますし、観光客の多い大劇場ーウィーンやスカラーでは、観光客がおしゃれてしているのでそれに混じっておしゃれする、という手もあります。

 こういう風に「おしゃれしたい」と書いてしまうのは、海外でなければ着られない服を着よう、とついついもくろんでしまうせい。というのも、ヨーロッパに出かけた時、つい買ってしまうロング丈のドレスとかスカートが何枚か、日本では出番がなくて眠っているのです。「つい買ってしまう」のは、1万円以下で買えるような手頃なロングスカートなどを「つい見かけてしまう」(言い訳ですね)から。日本だと、まず見かけないたぐいのものです。

 この夏も、プロヴァンスに出かけた時、「つい買ってしまった」えんじ色のロングスカートが、日本ではまったく出番なし。だいたい日本だと、電車に乗らなければならないから着られないのです。タクシーで乗り付けるような優雅な身分なら、たまには冒険してみるのもありかもしれませんけれど。

 で、強引に、イタリアでデビューさせてしまいました。

 10月、スカラ座で一度。そして年内にもう一度どこかではきたいと、今回のイタリア旅に持参したのです。再度のお目見え?は、オペラ観劇最終日のローマ歌劇場でした。

 いやはやこれが、浮きまくり、でした。

 まず、イタリアの他の劇場と比べて、今のローマは多少客層が違う感じがあります。ムーティが来てから、オペラファンの間で人気が出ているせいでしょうけれど、わりとオペラ好き、オペラマニアという感じのひとが多い。その前に訪れたナポリのサンカルロ歌劇場は、地元の社交界という感じでローマよりは多少華やかだったのですが。

 そして、これはたまたまだと思うのですが、私が入ったボックス席ときたら、私以外の5人は全員男性、それも、いかにも筋金入りのオペラファン、という感じの、もの静かで地味なひとたちだったのです(前も書きましたが)。当然服装も地味。セーターにスニーカー、そして足元にリュック。あれは、ジャーナリスト席だったのでしょうか。。。 そのなかにひとり混じってロングスカート、というのは、今思い出しても笑えます。

  海外で思い切ったものを着てしまうのは、もし場違いで浮いても、ヨーロッパ人はわりとマイペースで他人のことを気にしないから、めいめい、思い思いにしている人が多いから、という理由なのですが、今回はさすがに気になりました。イタリアで、こんなに「浮いた」気分になったのは、初めてかも知れません。

 オペラやコンサートのドレスコードがカジュアルになるのは、悪いことではないと思っています。気軽に出かけられる場所であってほしいと思うからです。半世紀以上前、この歌劇場にマリア・カラスが出ていたときの劇場内の映像(モノクロ)を見たことがありますが、みなそれこそ舞台の歌手なみに、ティアラのようなアクセサリーも含めてデコデコに正装していました。あれでは、一般人はとても敷居をまたげないでしょう。

 けれど同時に、非日常のハレの場としての機能が皆無になるのも寂しい気がします。服装も含め、その「場を楽し」める雰囲気がなくなってしまうのは、由緒正しき社交場だった歌劇場の歴史を考えると物足りない。歌舞伎だって、和装のお客さんがいると映えますよね。いろんな人がそれぞれの楽しみ方ができる場所なら理想的なのに。

 今後はイタリアの歌劇場でロングスカートをはこうと思ったら、シーズンオープニングを目指さなければならないのかも、と、ロビーを行き交うノーネクタイの紳士たちの間を肩をすぼめてすり抜けながら思った、ローマの夜だったのでした。 

  

  






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  December 28, 2013 01:06:43 PM


PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

プロフィール

CasaHIRO

CasaHIRO

フリーページ

コメント新着

バックナンバー

April , 2024

© Rakuten Group, Inc.