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加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

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October 12, 2015
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  夏枯れといいたくなるようなオペラ日照り?の夏が終わり、ロイヤルオペラの公演などを皮切りに、がぜん活況を呈してきたオペラ公演。

 前のブログに書いた「椿姫」の直前には、ふたつのマイナー作品を鑑賞してきました。

 紀尾井ホール主催、ペルゴレージの「オリンピーアデ」、そして東京フィルの定期で演奏会形式で上演された、リムスキー=コルサコフの「不死身のカッシェイ」です。

 1735年にローマで初演された「オリンピーアデ」は、オリンピック競技が重要な小道具となるオペラ・セリア。誤解やさまざまな事情で引き裂かれた2組の恋人が、競技を通じて再会し、結ばれるまでを描く作品です。台本はオペラ・セリアの神様のようなメタスタージオ。バロック・オペラならではのアリア合戦、そしてペルゴレージの美しい、リリカルなメロディが堪能できます。本邦初演であると同時に、アジア圏でも初めての上演ということでした。

 なぜ、ペルゴレージなのか、主催者にきいてみましたら、紀尾井ホールという規模を生かせるのはバロック・オペラだというところからスタートしたよう。なるほどです。

 一方、よく言われることですが、日本ではバロック・オペラの上演が欧米に比べて極端に少ない。今、フランスなどを中心に、ドイツ、イギリスなどオペラ上演がさかんな国ではバロック・オペラはレパートリーなのに、日本では、新国立劇場では中劇場で「ポッペアの戴冠」が上演されただけ。北とぴあなどが頑張ってはいますが、まだまだです。なので、そのような意味でも、画期的な公演でした。歌手も、今日本で活躍している第一線の歌手が、カンパニーやマネージメントの枠を超えて集まり(指揮とチェンバロを担当した河原忠之さんのネットワークのよう)、その点でも豪華な公演でした。

 セミステージ形式でしたが、ギリシャ古典劇をイメージできる、波や島を象徴した白い舞台装置に、人間関係を分かりやすく提示する衣装(たとえばカップル同士に同じ色の衣装を着せる)など、見せる工夫も凝らされていました(演出は粟國淳さん)。

  歌手の水準も高かったですが、純度の高い澄んだ声と完璧な技術がレパートリー的にとても合っていたアリステーア役の幸田浩子さん、ロッシーニなどでも大活躍、巧さが光ったメガークレ役の向野由美子さん、そしてようやく?本懐を遂げられて、堂々たるアリアを聴かせてくれたカウンターテノール、アルカンドロ役の弥勒忠史さんなどが光っていたように思います。

 オーケストラ(紀尾井オペラアンサンブル)は、正直、もっと大胆さや冒険心が欲しかった。バロックもので国際的に活躍する日本人は多いですから、もっといい線行けるのではないかと思います。

 とはいえ、日本でもようやく!バロック・オペラの本格的な公演が立ち上がり始めたのは嬉しい事。世界からは10年単位で遅れていますが、これを機に盛り上がって欲しいものです。 

 翌日の「不死身のカッシェイ」。これまた、 「今」のオペラ界の空気を伝えてくれるものでした。

 東フィルの「特別客演指揮者」に就任した、ミハイル・プレトニョフのお披露目公演とのことでしたが、それにふさわしい充実したものであったと同時に、今のオペラ界のスーパーパワーであるロシア人歌手の実力を見せ付けられた公演だったからです。

 「不死身のカッシェイ」は、ロシア生まれのメルヘン・オペラ。「娘」に不死身の秘密を託している悪魔のカッシェイが、王子と王女の「愛」に打たれた娘が滅びることによって、命を失うというストーリーです。悪魔のカッシェイは、ロシア人にはなじみの深いキャラクターだそう。1幕3場の短いオペラですが、「悪」と「善」、「愛」と「死」がきちんともりこまれたストーリーはわかりやすく、聴きどころも満載。音楽も、ロシアの大地や自然がたちのぼってくるようで魅力的でした。「秋の日のオペラ」と表現した専門家がいるようですが、「秋から春へ至るオペラ」というのが、全曲を聴いた印象です。それくらい、(激烈ではないですが)起伏の多い、豊かな音楽でした。オーケストラを咆哮させない、プレトニョフのあうんの呼吸にみちたコントロールも巧みだったのだと思います。

 そして、充実していたのが歌手陣。主役4人はロシアから呼ばれていましたが、みな声量も、声の個性も十分。悪役であるカッシェイの娘を歌ったクセーニャ・ヴァイズニコヴァ(メッゾソプラノ)は、エキゾティックな美貌と、深く陰影に富んだ声の持ち主で、足元から這い上がってくるようなドラマティックな声は圧巻でしたし、カッシェイ役のミハイル・グブスキー(テノール)もヒール役としての迫力十分。ヴァイズニコヴァに劣らず、ひょっとしたらそれ以上印象的だったのは、王女役のアナスタシア・モスクヴィナ(ソプラノ)。クリアな美しさを湛えた声は北国の湖のようで、伸びも柔軟性もあり、声の色も幅があって聴かせます。ヴァイズニコヴァとモスクヴィナの「声」のコントラストは素晴らしいものでした。王子役のボリス・デャコフは3人に比べるとやや声量は控えめですが、ノーブルな声の美しさは王子役にぴったり。声の色はちょっとテノール風で、バリトンだというのでやや驚いたくらい。じつはカッシェイ役のグブスキーは、テノールだというのですがバリトンのような声の色で、こちらもちょっと驚き。女声2人の声が声域にふさわしいものだったので、男性2人の声の対比がちょっとミステリアスに感じられました。

 とはいえ、これだけの水準の「知られざる」ロシアオペラの傑作が日本で聴けるということに、ロシア勢が世界のオペラハウスを席巻している現状の一端が垣間見られて、とても興味ふかい公演でした。

 これから、東フィルとプレトニョフのこのようなレパートリーのシリーズが、定期的に行われていけば、日本のオペラ界の貴重な財産になるのではないでしょうか。

   

  






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最終更新日  October 17, 2015 11:19:45 PM


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