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加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

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April 30, 2020
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カテゴリ:音楽
今月いっぱいの目的で書いてきた、「人生が変わったこの曲、この演奏」、最終回になりました。
 最後はやはりバッハ、そして鍵盤作品の大曲である「ゴルトベルク変奏曲」を取り上げたいと思います。
 「最後はやはりバッハ」と書いてしまう理由は、この先の見えない状況の中で、心を支えてくれる強い音楽は、少なくとも私にとってはバッハだし、同じ思いの方もいるのでは、と想像するからです。
 まったく個人的な考えですが、バッハの音楽が「強い」ものである大きな理由は、それが(最終的に)自己表現が目的なのではなく、彼方への捧げ物として書かれているところにあるのではないか、と思っています。
 
 バッハ56歳の1741年に出版された「ゴルトベルク変奏曲」は、バッハの鍵盤作品の集大成ではないでしょうか。「ロ短調ミサ曲」がバッハの声楽作品の集大成であるように。
 「クラヴィーア練習曲集」の最終巻として出版された本作、「二段鍵盤のチェンバロのためのアリアと種々の変奏曲」が正確なタイトルです。「ゴルトベルク変奏曲」と呼ばれるようになったのは、カイザーリング伯爵という人物が、お抱えのゴルトベルクという14歳のチェンバロ奏者に弾かせるために書かれたという、後世の伝記の逸話に由来します。カイザーリングやゴルトベルクと関係なく、バッハは変奏曲の集大成を準備していたという説もあります。
 「変奏曲」といえば、普通はメロディが変奏されていくものですが、この作品で千変万化するのは低音(左手)パートです。これは、バロック時代によく行われた手法でした。冒頭と最後には「アリア」が登場しますが、この曲はバッハの二番目の妻で、糟糠の妻として知られるアンナ・マグダレーナ・バッハのための「クラヴィーア小曲集」第2巻に登場する愛らしい曲です。バッハの真作かどうかは、不明なようですが。

 さて、「ゴルトベルク変奏曲」の演奏といえば、なんと言ってもグレン・グールドが有名です。華麗にして多彩、驚きと疾走感に満ちて痛快です。ピアニストとしてのデビュー盤が「ゴルトベルク」で、センセーションを巻き起こしました。
 こちらで全曲聴けます。

 ​「ゴルトベルク変奏曲」 グールド 1955

 晩年、1981年の演奏はこちら。演奏時間も13分!位違う、別人のような演奏です。そこもまた、グールドの魅力なのでしょう。

 ​「ゴルトベルク変奏曲」 グールド 1981

 全く私的な意見ですが、熱狂的なファン、というか信者の多さで、グールドは「マリア・カラス」に匹敵する存在であるように思います。
 もちろんこの2人が天才であることは間違いありませんし、素晴らしい水準の個性的な演奏を残してくれたことも全くその通りなのですが、私自身は、なるべく「今生で聴ける」演奏家を紹介したい、という思いがあります。
 その路線で行くと、ここでご紹介したいのは、ロシア出身のピアニスト、エフゲニー・コロリオフの演奏です。2008年のライプツィヒ、バッハフェスティバルで聴き、大変心を動かされました。ピアノらしい「ゴルトベルク」、クリアで立体的なピアノの美音を生かした、ピアノという楽器の可能性を開陳してくれた「ゴルトベルク」だと感じたのです。(グールドの場合、かなりチェンバロ的な手触りを感じるので)
 美音に抱かれ、確実な技巧に支えられつつ、バッハの知的で精緻な世界に導かれる喜び。それは、このシリーズでもご紹介した、レオニード・コーガン奏でるバッハのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタにも通じるかもしれません。コーガンよりこちらの方が、暖かな感触がありますが。
 ネットでの情報ですが、作曲家のリゲティは、無人島にCDを一枚持っていくとしたら、コロリオフの「ゴルトベルク」を選ぶと言ったそうです。
 この時の演奏はテレビ番組として録画され、日本でも放送されました。こちらから全曲聴けます。

 ​「ゴルトベルク変奏曲」 コロリオフ ライプツィヒ 2008年
 ​
 「人生が変わったこの曲、この演奏」は今日で最後にいたします。ご覧くださった方、ありがとうございました。
 なお、大変恐縮ですが、現在、コメントは書き込めない設定にしております。ご意見のある方は、申し訳ありませんが、Facebookかツイッター、あるいは私のホームページからお入りいただいてご意見をくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。





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最終更新日  April 30, 2020 02:18:58 PM


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