カテゴリ:音楽
コロナ禍で外国人アーティストが来日できず、少なくとも一部の日本人アーティスト、特に指揮者にとってはチャンスが続いています。オーケストラの演奏会には指揮者が必要だから、指揮者がいなければオーケストラは再開できません。実力があれば引っ張りだこになります。
で、この機会に頭角を現す(よく知られるようになった)日本人の若い方も何人もいて。鈴木優人さんや原田慶太楼さんは好例でしょう。彼らは実力に加え、発信力もすごいので、その相乗効果で出てきている。 とはいえ、自分から積極的に発信するタイプでなくとも、力があれば注目される状況であるのは確かです。 8日の木曜日、新日本フィル定期で、その好例を知りました。 熊倉優さん。1992年!生まれ、まだ20代の若さです。沖澤のどかさんが優勝した時の東京国際音楽コンクールで3位。N響でパーヴォ・ヤルヴィのアシスタントを務めました。すでにN響をはじめいくつものオーケストラと共演。以前、フェスタサマーミューザでN響とショスタコーヴィチの10番をやったそう。聴き逃して残念です。 今回、熊倉さんが面白い!と思ったのは、自分はこれをやりたい!という意思が明確であること。それがひしひしと伝わるのは、そうそうあることではありません。 前半は竹澤恭子さんとの共演で、ブラームスのヴァイオリン協奏曲。これは竹澤さんの横綱相撲というか。竹澤さんは日本人ヴァイオリニストの中ではやや肉食系(?)の、濃厚な演奏をする方で、貫禄で引っ張った面はありました。第二楽章での弓をいっぱいに使ったねっとりした旋律の歌わせ方、高いテンションは特筆もの。熊倉さんのサポートも過不足なかったと思います。アンコールのバッハ「パルティータ第2番」の「サラバンド」は、弦を全て使い尽くすのか!というような凄まじい表現力で、震えました。 後半のチャイコフスキーの4番交響曲では、熊倉さんの全身全霊を傾けた演奏が聴けました。第1楽章では正直冷や冷やした部分もありましたし、重心が低くてテンポが遅くて、これじゃ終演は何時になるだろう?と気掛かりになったほどでしたが、後半の2つの楽章ではそれが嘘のような快速調で、これ!と突き進むテンションの高さがマックスに。ここへ持ってくるための計算だったのか?と思わせられるほどでした。スローなところも含めて(とくにスローなところの持続力)テンションが張り詰めていて、テンションの弧が大きい。この長いテンションに加えて、この曲はこうやりたい!という確信があるところや、出てくる音色の美しさなど、ちょっとバッティストーニみたいなんです(といったら熊倉さんに失礼かもしれませんが)。これでバッティみたいなカリスマ性が加わったら、本当にすごいことになるかもしれません。第3楽章のピッツィカートも重心が低いのによく鳴って、寄せては返すうねり感も生き生きとしてヴィヴィッドで、音色も多彩でした。 木管楽器群のソロもみなさん美しかったですが、オーボエの小畑さんのソロが、。音色の甘さ艶やかさ美しさなどで一際飛び抜けていました(ブラームスの第2楽章のソロの素晴らしかったこと!)。かつてはベルリンフィルでも活躍したらしい。芸大も退官され、新日本フィルももう「卒業」されたようですが、またぜひ聴かせていただきたいです。小畑さんにとってはお孫さんに近い年齢のマエストロとの共演、楽しんでいらしたのではないでしょうか。 熊倉さん、来月はN響で藤田真央さんと共演ですね。 帰宅後、熊倉さんが原田慶太楼さんの「Music today」に出ていたのを見つけて視聴していたら、どうやらヨーロッパでポストを持つらしい。日本のオケでもポストを持って欲しいですね。日本のオケには、この機会に、こういう方を取り込んで育てて欲しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
October 11, 2020 10:05:06 AM
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