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加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

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July 20, 2021
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カテゴリ:音楽
兵庫県立芸術文化センターの看板、佐渡裕プロデュースオペラ。
 昨年は残念ながら中止に追い込まれましたが、今年は無事「メリー・ウィドー」が上演されました。

 最高に楽しい舞台でした。広渡勲氏の演出による、伝説の2008年制作の舞台をブラッシュアップ。「改訂版新制作」と謳っただけあって、当初予定の2時間45分という上演時間を大幅に上回る3時間半近くの長丁場になったのですが、その大きな理由は、全曲終了後に「第三部」とでもいうべきアンコール?を延々とやったからです。
 これが、広渡氏のサービス精神満載の一大ハイライトになっていました。バレエから合唱からコント?からフレンチ・カンカンまで、出演アーティストが一斉に再登場して「ビス」状態。最後は「ヴィリアの歌」で華麗に締め括り、客席は大喜びでした。カーテンコールでのお辞儀の仕方も、一斉に左、右、を向いてお辞儀する、レビューショー状態です。ほんと、タカラヅカみたい。
 
 この「メリー・ウィドー」は、「プロデュースオペラ」の中でも最大のヒット演目となった作品。評判は聞いていましたが、なるほど、ここでしか作れないプロダクションだと思いました。歌のないニエグシュ役に関西お笑いの大御所、桂文枝さんを起用してコントをたくさん混ぜたり(指揮者の佐渡さんとのやりとりも!)、宝塚出身の香寿たつきさんや鳥居かほりさんが出演し、芸文のテーマソングとでもいうべき「すみれの花咲く頃」を歌ったり。関西圏のお笑いやショー文化がたっぷり楽しめる。これは、ここならではの芸当でしょう。冒頭から、オーケストラピットに照明が当たり、指揮者がこちらを向くと、なんと文枝師匠なのですから。(もちろんその後、師匠は舞台に上がるのですが)。

 台本は大幅に改訂。三幕が、二幕構成(と言っていいと思う)のように仕立て直されており、曲順もかなり入れ替わっていました。台本は演出の広渡先生が書かれたそうで、広渡版「メリー」ですね。

 一番面白かったのは、有名な「女、女、女」の男声アンサンブルの後に、女声アンサンブルで、同じ音楽による「男、男、男」が加わっていたこと。いやほんと、同じ内容で女性側の曲も「あったらいいのに」と思っていたのです。これは受けます。NBSで長年、オペラやバレエの公演に関わり、今日のように「第三部」的なアンコールが振る舞われる「ガラ」を演出してきた広渡氏、お客さんの心理をよくわかっています。
 
 第一幕の舞台はピアノ(手前が鍵盤になっている)に見立てられ、黒白が基調でアール・ヌーヴォ風の衣装。第二幕はパリの夜景を背景にしたカラフルでエキゾチックな「ポンテヴェドロ」風のパーティに、ハンナ邸での擬似「マキシム」のレビューと、それぞれ「華やかさ」が全開でした。やっぱり美しいものは楽しい。そして、ヴィヴィッドで元気の出る美しさなのです。以前、「コロナ禍の今だからこそ、この舞台でウサを吹き飛ばしてほしい」と劇場の方が仰っていたのは納得です。
 (プログラムに鹿島茂先生のエッセイがあり、実際の「マキシム」がどんな場所だったか(キックバックを払って高級娼婦を入れていた)、ハンナ邸での「擬似マキシム」がどうして意味があるのか(実際の「マキシム」にはなかったフレンチカンカンができる)などがよくわかり、面白かった。こういうのが読みたいのです)
 
 キャストはベテランから若手まで、注目どころ、有名どころが揃っていました。1番の目玉は、主役カップルに抜擢されたお二人、ハンナ役の高野百合絵さんとダニロ役黒田ゆう(すみません、字が出ません)貴さん。お二人とも押し出し満点、とくに高野さんはやはりハンナ役を得意としたルネ・フレミングを感じさせる華があります。地声がよく響いて座りがいいのもポイント。女優の才能がある。歌は清冽な高音域が魅力、これからの充実に期待したいです。黒田さんは芸大在学中より色々な賞を受賞している注目株。スタイリッシュな美声は大きな将来性を感じさせます。長身細身で舞台映えもし、目の表情の豊かさは特筆ものでした。ちなみにお父様は二期会のスターバリトンの黒田博さん。東京ではお父様が「ファルスタッフ」で主役を歌っている最中。父子でコメディオペラの大役を演じています。
 大ベテランの折江忠道さんのツェータ男爵は至芸。ヴァランシェンヌ役高橋維さんはチャーミングな存在感。カミーユ役小堀勇介さんは、舞台に立てる喜びを明るく発散しつつ、甘く豊かな美声、柔軟なフレージングで耳を奪いました。さすが日本を代表するロッシーニテノールです。

 他のキャストも、森雅史さん、泉良平さん、押見朋子さん、小貫岩夫さん、志村文彦さん、大沼徹さんら日本オペラ界を背負っている方々が勢揃い。コロナだから、これだけのメンバーが集まった面もあるかも???みなさん、(オペラの舞台上演が厳しい中で)ステージに立つ喜びに溢れていました。これもまた、コロナ禍のささやかなプラス面かもしれません。





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最終更新日  July 20, 2021 11:02:22 AM


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