加藤浩子の　La bella vita（美しき人生）

[旅] カテゴリの記事

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• バッティストーニが案内する、彼の故郷ヴェローナのオンラインツアーを開催します！

  コロナ禍で、まだまだ自由とは言えない海外への渡航。　この期間、オンラインツアーを試み、二度にわたって「バッハへの旅」のオンラインツアーを行ってきましたが、この度、初めてのイタリア！オンラインツアーを行うことになりました。　指揮者、アンドレア・バッティストーニが、彼の故郷ヴェローナを案内するスペシャルなツアーです。　バッティストーニは、北イタリアのヴェローナ出身。「ロメオとジュリエット」の舞台になった世界遺産の古都であり、古代ローマ帝国時代の闘技場アレーナで開催される、夏のオペラ祭でも有名な素敵な街です。　彼はここで生まれ育ち、アレーナや、屋内劇場であるフィラルモニコ劇場でオペラに接し、また自ら指揮をとってきました。　今回のツアーでは、バッティストーニがヴェローナのお気に入りの場所や、劇場を案内するほか、旧市街にあるお気に入りのレストランでヴェローナの名物料理を紹介したり、あのダンテ・アリギエーリの子孫が経営する郊外のワイナリーで、オーナーとともにワイナリーを案内します。　今来日中のバッティストーニからのメッセージももらいますし、東フィルさんとの演奏動画もお楽しみいただけます。　また、彼の盟友で、東フィルの首席クラリネット奏者のアレッサンドロ・ベヴェラリもヴェローナ出身。彼も日本から参加して、ヴェローナの魅力を語ってくれることになりました。　そして、内容は明らかにできないのですが、あとで送られる特典映像もあります。これはなかなかすごいです。ぜひご期待ください。　　イタリアのオンラインツアーは初めてで、現地との交渉に時間がかかり、リリースがギリギリになってしまいましたが、これは絶対お楽しみいただけると思います。　ワインなどお土産付きのコースも、色々ご用意しました。　ライブは10月28日午後。その後１０日間の見逃し配信がありますので、当日ご都合がつかなくても大丈夫です。　日本に居ながらにして、ヴェローナの空気をたっぷり味わってくださいますよう。　詳細はこちらから。　　ヴェローナ　オンラインツアー

  October 17, 2021

• 「バッハへの旅」オンラインツアー、第２弾を行います！

  コロナ感染拡大で、海外旅行はもとより、国内での移動も難しくなってしまいました。　　そんな折だから、というわけでもありませんが、昨年暮れに実施して好評をいただきました、「バッハへの旅」オンラインツアーの第２弾を行うことになりました。　日時は８月１６日、14時半〜。ギリギリのお知らせで申し訳ありませんが、オンデマンド配信が１０日間ありますので、ご都合の良い時にご覧いただけます。　今回のテーマは「バッハとライプツィヒ」。バッハが後半生を過ごしたライプツィヒにスポットを当て、町の現在の紹介、バッハの活動や遺品、作品の紹介、そして「ライプツィヒ・バッハ音楽祭」のハイライト動画（現地でのコンサート動画）をお楽しみいただきます。　そして今回、特別ゲストとして、世界的なバッハ演奏家、鈴木雅明先生をお迎えすることになりました！　雅明先生は、バッハ演奏の第一線で活躍してきたのはもちろん、バッハ音楽祭にも西暦２０００年以来何度も招かれ、バッハの音楽の啓蒙に貢献した演奏家や研究者に贈られる「バッハメダル」を、日ヨーロッパ人として初めて受章された方です。これ以上のゲストは考えられないのではないでしょうか。　また、ライプツィヒ周辺の歴史的オルガンのご紹介も入れますが、そのパートでは、雅明先生が実際にドイツの歴史的オルガンを演奏した動画もお楽しみいただきます。　なかなか海外への渡航が叶わない今、ご自宅にいながら、バッハの街と音楽をたっぷり味わっていただければ幸いです。　　詳細、お申し込みはこちらから。　​バッハへの旅　オンラインツアー　第２弾​

  August 6, 2021

• 「バッハへの旅」オンラインツアー、リハーサル終了！詳細決定しました！

  以前このブログでも告知しました、「バッハへの旅」　オンラインツアー。​　15日の実施まで、あと数日となりました。　先日、主催の旅行会社でリハーサルを行い、現地とのネットライブも試して、内容を最終確認いたしました。　まず、いつもツアーが到着するフランクフルトの空港を振り出しに、ツアーで訪れるバッハゆかりの街を、写真と解説でご案内。　生地のアイゼナッハから、１０代の前半を過ごしたオールドルフ、初めて就職したアルンシュタット、２度目の勤務地で、最初の結婚をしたミュールハウゼン、生活も仕事も軌道に乗ったヴァイマール、宮廷楽長として器楽の名作を連発したケーテンをめぐり、後半生を過ごしたライプツィヒへ。　ライプツィヒでは、ゲヴァントハウス管弦楽団のコントラバス奏者で、バッハの研究者でもあり、アンナ・マグダレーナ・バッハの研究で博士号を取られたエーバーハルト・シュプレーさんに、バッハゆかりの地をご案内いただきます（録画）。　続いて、世界的なバッハ研究者で（２００５年にヴァイマールの図書館で、バッハの「真作」であるリートBWV1127を発見。トーマス合唱団の研究で博士号）、２０１８年からライプツィヒ ・バッハ音楽祭の芸術監督を務めるミヒャエル・マウル氏が登場。ネットでライブ中継を行い、マウル博士が勤務するバッハ・アルヒーフ所蔵の貴重な資料のご紹介、そして、音楽祭のご紹介をいただきます。　ライプツィヒ巡りの最後は、トーマス教会のオルガニストで、日本にも何度も来日しているウルリヒ・ベーメさんによるオルガン演奏。トーマス教会の、ベーメさんも設計に関わった「バッハ・オルガン」を使い、バッハの大作「トッカータとフーガ　ドーリア調」を演奏してくださいます。演奏の前には、ベーメさんご自身による作品解説もあります（録画）。　旅の最後はドレスデン。スライドで街をご案内した後は、ドレスデンにお店「DWGハンデル」を構える日本人ソムリエ、沼尻慎一さんがライブで出演。沼尻さんが魅せられたドイツワインの魅力をたっぷり語っていただきます。　　今、出来る限りの内容を盛り込みました。きっと、お楽しみいただけることと思います。ツアーは15日の十五時半〜ですが、オンデマンドで一週間視聴が可能です。　詳細、お申し込みはこちらから。どうぞよろしくお願いいたします。　　バッハへの旅　オンラインツアー​

  December 11, 2020

• 「バッハヘの旅」オンラインツアーを実施します！

  皆さまご承知のように、今年は一般の人間にとっては、海外旅行のできない年になってしまいました。　そんな中、「バッハへの旅」のオンラインツアーを企画いたしました。　郵船トラベルの主催で、２０年来続けている、音楽ツアーのオンライン版です。　バッハゆかりの地を訪ね、現地でオルガンを聴いたり、ライプツィヒのバッハ音楽祭のハイライトを聴くツアーなのですが、今回のオンライン版では、ツアーで訪問するバッハゆかりの地を写真入りで解説するほか、メインの訪問地であるライプツィヒで、スペシャルゲストに登場いただきます。　まず、ゲヴァントハウス管弦楽団の現役コントラバス奏者で、バッハの二人目の妻であるアンナ・マグダレーナの研究で博士号を取られた、エーバーハルト、シュプレーさんによる、ライプツィヒのバッハゆかりの地巡り。（録画）　続いて、気鋭のバッハ学者で、ライプツィヒ・バッハ音楽祭の芸術監督であるミヒャエル・マウル氏による、音楽祭とバッハ博物館案内。これはライブでお届けします。　そして、聖トーマス教会オルガニスト、ウルリヒ・ベーメ氏による、トーマス教会のバッハオルガンを使ってのオルガン演奏。（一部は録画）　最後はドレスデンに足を延ばし、ドレスデンでワイン店を経営する日本人ソムリエの沼尻さんに、ドイツワインの解説をいただきます。　２時間で、バッハツアーのエッセンスをご体験いただけるオンラインツアーです。　これまで「バッハへの旅」にご参加くださった方も、これからの参加を検討されている方も、予定はないけど興味はある方も、是非ぜひご参加くださいませ。　現地との関係もあり、平日午後の時間帯ですが、オンデマンド配信も行いますので、その日にご都合のつかない方でもご参加いただけます。　今年はずいぶんオンライン講座をやりましたが、これが、その総決算です。　ぜひ、宜しくお願い申し上げます。　詳細、お申し込みはこちらから。　「バッハへの旅」オンラインツアー

  November 22, 2020

• 「加藤浩子の旅びと通信」、第２回が配信されました！

  今月初めから、講師として同行する音楽ツアーを主催していただいている「郵船トラベル」さんのサイトで、「加藤浩子の旅びと通信」を連載しています。　数日前に、第２回が配信されました。　第１回では、足掛け２０年続いている「バッハへの旅」事始めについてお話ししましたが、第２回は、その「バッハへの旅」の大きな個性になっている、「バッハのオルガン巡り」についてです。　教会のオルガン巡りは、ヨーロッパの音楽旅ならではですし、ましてそれがバッハが弾いたオルガンとなると、一段と興味がそそられます。　「バッハへの旅」では、バッハが弾いたオルガンの音色を、ツアー専用のプライベートコンサートで楽しんでいただいています。　写真、そしてオルガン演奏の動画もありますので、ぜひご覧ください。　加藤浩子の旅びと通信　第２回

  May 23, 2020

• 郵船トラベルさんのサイトで、連載コラム「加藤浩子の旅びと通信」を始めました。第１回は「バッハへの旅」事始めの記です

  新型コロナウィルスの影響で、海外渡航が難しくなっている昨今。　音楽ツアーの仕事も、個人的に計画していた音楽旅も当面キャンセルになり、先が見えない状態が続いています。　　そんな中、音楽ツアーを４６年間手がけてきたこの方面のスペシャリストで、私の講師同行ツアーを主催してくださっている郵船トラベルさんの「音楽・美術の旅」チームは、音楽ツアーの楽しみを少しでもお伝えし続けたいと、頻繁にブログを更新し、現地の今の様子などをレポートしています。　その郵船さんの「音楽・美術の旅」サイトで、「加藤浩子の旅びと通信」と題して、連載コラムを持たせていただくことになりました。　月２、３回のペースで、更新していければと考えています。　第１回は、私の同行ツアーの第一弾で、現在でも続いており、合計２８回、参加者数は延べ８００人を超え、「音楽ツアーのベストセラー」と言っていいと思っている、「バッハへの旅」事始めの記です。　「バッハへの旅」は、バッハ没後２５０年のアニバーサリーイヤーである西暦２０００年に始まったのですが、どのような経緯で始まったのか、そして記念すべき第１回の様子などを、写真も交えてお伝えしています。　ぜひ、ご覧いただければ嬉しいです。　リンクはこちらです。　​「加藤浩子の旅びと通信」第１回​

  May 9, 2020

• 石

  　やっぱり「石」に終わってしまいました・・・　旅の前に購入した、電子辞書のことです。　旅で使おうと思って購入する、あるいは持参する電子機器。　使い方がわからない、あるいは使うことができないと（たとえばパソコンを接続できないとか）、ただの「石」です。それも、取り扱い注意の「石」。　電子辞書、みんな持っているからなあ、ということもあって購入したのですが、一度も開かないうちに旅が終わってしまいました。お世話になったのは、結局いつものポケット小型辞典でした・・・

  October 27, 2009

• ヴェネツィアでオペラを見る、ということ

  　今回のヴェネツィア訪問の第一の目的、ビオンディ指揮のヘンデル「アグリッピーナ」に出かけました。　会場は有名なフェニ－チェではなく、「マリブラン劇場」という、１９世紀の歌姫の名をかぶせた劇場。主催はフェニ－チェのカンパニーです。　マリブラン劇場は、外観はとても小さく感じられたのですが、中は奥行きがあってびっくり。馬蹄形の、かなりちゃんとした？劇場です。７、８００席はあるでしょうか。　客席からはドイツ語がかなり聴こえました。ドイツ人のヘンデルファンが来ているのかな。　ところで、今回、生まれて初めてＧパンでオペラに行く羽目になりました。　原因は、寒さ。　数日前からかなり冷えてきており、たまりかねてコートやショールを買ったのですが、それにしても、ホテルから歩いて３０分くらいかかる劇場まで、スカートにヒールの靴で行くのは無理、と思ったのです。　ご存知の方もあるでしょうが、ヴェネツィアは水の都。運河を運行する水上バスは効率が悪く、目的地に早く着こうと思うとまず歩くしかありません。タクシーで劇場に乗り付ける、というわけにはいかないのです。　足元もいいわけではないので、ヒールは歩きやすいとはいえません。　げんに女性観客は、多少ドレッシーな格好をしていても足元は平靴、というひとがほとんどでした。　　ヴェネツィアでオペラを見る。水の都でそれなりにしていこうとすると、それなりの準備がいるわけですね。

  October 18, 2009

• ストラスブールは「スイス」？

  　旅も終盤戦。今日は、2日間滞在したボーヌから、アルザス地方（現在は「県」）のストラスブールへやってきました。ドイツとの国境近く、歴史上ドイツ、フランスの間で翻弄された地域です。　地理的な問題もあって、アルザスは「ドイツに近い」とよく言われます。　料理もドイツ風だし（じゃが芋とかソーセージが名物）、ワインも白が大半、街並みも木組みの建物が多くて、ドイツ的なのです。　ここに来てまずほっとしたのは、駅。　まずホームにエスカレーター（かエレベーター）がある。日本の大きな駅ではそんなのあたり前ですが、フランスの多くの駅にはありません。　それから、列車の時刻表や、乗り継ぎの案内がある。　これも、フランスの駅にはたいがいないのです。だから、乗り継ぎの場合、荷物をひきずりながら一度ホームを降り、大きなコンコースへいって、そこにある電光掲示板などで、時刻表や発車ホームを確認しなければなりません。ホームも、けっこうぎりぎりまで（出発１０分くらい前まで）決まらないことが多いのです。　そして、列車の遅れが多いのはイタリア並み。　いやはや、列車に関しては先進国とはとうていいえません。　その点、アルザスはドイツに近いだけあって、列車の表示、運行とも親切でした。　駅前旅館に荷物を置いて、町を歩きます。　２０年以上前に一度来たきりなので、記憶はないも同然。　大聖堂に圧倒され、大司教が建てたフランス風の宮殿で、美術品の大コレクションに圧倒され（カトリックの聖職者はほんとに金持ち！）、運河をめぐる船に乗って町のぐるりを眺めました。　一部のファンの間で評価が高いオペラハウスも、その前までは行きました。　長袖が必需品だったボーヌよりはかなり暑く、陽射しがきびしい。半そででも暑い感じです。　　「ドイツ的」という表現が先に立つストラスブールですが、町の清潔度はドイツに比べるといまひとつ。なんとなく、ドイツというよりドイツ語圏スイス、という印象でした。ドイツ語も思ったより通じない。　ドイツ風料理、は悪くありませんでしたが、絶品だったのは名産の白ワイン。　とくに「ゲヴュルツトラミネア」というぶどうを使ったものはここならでは、という話で、濃い目の味にすっかりはまってしまいました。ホテルへの帰途、怪しげな食品店で買い求めてしまったほどです。　　　明日はドイツ。旅もいよいよ最後です。 

  July 20, 2009

• アルルの闘牛の牛～レストランは文化

  　南仏オペラツアーも最終目的地、アルルに到達。　投宿したホテルは、その名も「ジュリアス・シーザー」（フランス語でジュール・セザール）。　　ホテル名が示すとおり、途中通ってきたニームもそうですが、ローマ時代にさかのぼる古い町です。　観光の定番は、街中に残るローマ時代の遺跡、そして郊外にある「ゴッホの跳ね橋」。　　　市内観光の最後には、郊外にあるワイン製造元を訪れ、自家製ワインの試飲をさせてもらいました。　白、ロゼ、赤と三種類提供されたワインは、おつまみに出た牛のパテとよく合いました。　実はこの牛、近くにある「カマルグ湿原」に住む水牛だというのですが、くさみがなく、いたって美味。さっそく、お土産用にひとびん買い求めます。　さて、今日の最後の晩餐は、市内にある、ミシュランのひとつ星のレストラン。　今回の旅では、けっこうレストランにもこだわったのですが、行く場所すべてに心あたりがあるわけではないので、口コミ、そしてミシュランガイドにも頼りました。　頼ってみて、改めて「ミシュラン」を見直しました。やはり、外れはありません。ひとつ星でも創意工夫があり、十分おいしいのです。　さて、今日のお店のお得意は、「闘牛肉のステーキ」だとか。　実はアルルは闘牛がさかん。古代の競技場で、今でも闘牛が行われる土地柄です。　そのために育てられた牛は、肉質がすこぶるしっかりして、おまけにジューシーなのだ、とはガイドさんの言葉でした。　その肉を、黒オリーブと赤ワインで煮るのが定番なのだそうです。うーん、おいしそう。　けれど、残念ながら煮込みはなくて、闘牛肉の料理はステーキでした。　なるほど、しっかりしてジューシーではありましたが、切り刻むのになかなか体力を要した、手ごわい相手でもあったのでした。　前菜にとったガスパチョも、さっぱりとジューシーでおいしく、夏の夜にぴったりの味でした。なんと、シリンダー用のガラス容器に入ってきて、ジュースみたいにストローで飲むのにはびっくりでしたが。　今回の旅でつくづく思ったのは、フランスではほんとうに、レストランは「文化」なのだなあ、ということです。　イタリアだってもちろんそうですが、たとえ店や服装がカジュアルであっても、レストランに出かけることが「ハレ」であり、オペラと同じような大人の楽しみと位置づけられている度合いは、フランスのほうが上のように思いました。　ガイドさんの話では、このところの不況と、飲酒運転への罰則の強化で、レストランの収入ががた落ちになり、このままでは「フランスの重要な文化であるレストランが危機に瀕してしまう」から、一般では２０％近くある消費税を、レストランだけは５％にしたらどうか、という法案が、国会に提出されているのだそうです。　そういう考え方って、すごいなあ、と思います。レストランが文化という考え方は、日本の伝統的な食事のとり方からは、なかなか出てこないのではないでしょうか。　耳に快い文化、口においしい文化。いろんな感覚を総動員して「文化」を楽しむのは、最高の贅沢ですね。　（耳はともかく、丸々となったお腹をどうするか、という問題が、残るのではありますが・・・）

  July 17, 2009

• 圧巻、オランジュ音楽祭　チョンミョンフン指揮「椿姫」

  　南仏オペラツアー、今日は今回の鑑賞オペラの最後、オランジュの「椿姫」に出かけました。　午前中は、アヴィニョンの町の観光。中世のままの城壁に囲まれ、有名な「アヴィニョンの橋」ことサン・ベネゼ橋、法王庁など、石造りの古い建物のひしめく町です。　法王庁の隣のプチ・パレ美術館で、ボッティチェッリの初期の「聖母子」に出会えたのは収穫でしたが、白く強い日差しが石に照りつけて、暑い！敷地が広くゆったりした、郊外のリゾートホテルに宿をとったのは、正解だったように思えました。　午後は暑さを避け、ホテルで休養。そして、オランジュヘ向けて出発です。　オランジュは小さな町で、ホテル事情がきわめて悪いので、ツアーで市内に泊るのはまず無理なのです。　途中、「シャトーヌフ・ド・パップ」という町にあるシャトーホテルで、夕食をとりました。　ここは、2年前、ひとりでオランジュに来たときに、たまたま投宿したホテルなのですが（ネットで探して、ここしか取れなかった）、あとでこの「シャトーヌフ・ド・パップ」が、いわゆる「コート・ド・ローヌ」の中でも有名な、赤ワインの産地だと知りました。　このホテル　fine Roches　でも、自分のところの畑でワインを造っています。　オランジュの会場のトイレ事情が悪いために、残念ながらワインをたっぷり楽しむ、というわけにはいきませんでしたが、グラスでとったハウスワインも、十分に味のある、飲み応えのあるものでした。　さて、オランジュのオペラフェスティバルは、ローマ時代の半円形の石造りの劇場（収容９０００人）を会場にした、野外フェスティバルで、夏のオペラフェスティバルとしてはエクスとならんで評判の高いものです。　同じローマ時代の建物を会場にしたフェスティバルとしては、もちろんヴェローナも有名ですが、オランジュはアクセスの悪さ、公演回数の少なさ（オペラは２演目を2回ずつ）などから、はるかに行きにくいものとなっています。　けれどヴェローナ同様、音響が抜群にいいし、会場の雰囲気は、ヴェローナよりあるかもしれません。　難点は、座席が石段に直接すわるか、板を渡しただけのものなので、背もたれもなく、ちょっと疲れること。　また、席に番号はあるものの、きちんと区切りがあるわけではなく、ひとりあたりの面積は結構狭いです。きつきつ、という感じ。　今回は、座席に敷こうと、ホテルからバスタオルを持参しました。ないよりは、はるかにましです。　いつも客席はびっしりですが、今日はとくにテレビ、ラジオの中継が入り、開演前から熱気がむんむんでした。　さて、公演はといいますと、今回観たオペラのなかでは、ステージとしてもっともバランスの取れたものでした。　まずチョンミョンフンの指揮が素晴らしかった。　音楽の呼吸をのみこみ、、基本的には細やかでありながら、メリハリをつけるところは思い切った緩急。ヴェルディの音楽の生きのよさが光り、ドラマがしっかり伝わります。　オーケストラ（ラジオフランス・フィル）も、よく応えていました。ときどき目頭が熱くなった、感動的な音楽づくりでした。 いつも思うことですが、とくにこういう演奏で聴くと、「椿姫」って腐っても？名作、と思ってしまいます。　歌手も好演。　ｳﾞｨオレッタを歌ったパトリツィア・チョーフィは、最近好調とは思いますが、今まできいたなかで一番の歌唱でした。　第1幕のアリアはコトラロラトゥーラがちょっと危なかったのですが、あとはまったく危なげなく、とくに第3幕のアリアは、細やかで感情がこもり、切なく、これも思わず涙腺がゆるんだほど。　演技も素晴らしく、かわいく、はかない女の運命を全身で表していました。　カーテンコールですごい喝采が沸き起こると、思わず両手で顔を覆ったり、飛び跳ねて喜びをあらわしていたのも、かわいらしくてじんときてしまいました。　そして、今回の注目だったらしいのが、アルフレード役のテノール、ヴィットリオ・グリゴーロ。　ドミンゴも評価しているという、30代前半のイタリアのテノールです。　1１日の初日では、絶賛されたとか。　今日は、会場の外で、「調子が悪いのでご容赦」というちらしが配られていましたが、どうして、声量もあるし、しっかりめのはりのある声だし、高音もきれいだし、才能のある歌手だと思いました。　ジェルモン役のマルツィオ・ジョッシは今ひとつでしたが・・・　演出（フレデリック・ベリ・ガルシア）は、ロンコーニ風の左右に動く舞台をポイントにし、オランジュの広い舞台をむだなく生かした空間づくりをしていました。　この動く舞台のおかげで、時間の経過もわかりやすくなっていました。　満足。真夜中すぎの夜空を見上げて、つくづく幸せだったオランジュ古代劇場の夜でした。

  July 15, 2009

• プロヴァンスは、ロゼ！

  　エクスやオランジュの音楽祭を中心とした南仏ツアー、エクスの日程が無事終了し、バスに乗ってアヴィニョンヘ。　郊外のホテルに泊り、明日はオランジュの「椿姫」に行くのです。　　途中、ピーター・メイルの「南仏プロヴァンスの12ヶ月」で有名になった、リュベロン地方を経由。　濃い緑のなかに、この地方特有の白っぽい岩肌がちらほら見える風景のなか、ゆっくりバスを走らせます。　実をぎっしりつけたオリーブや、上向き！の松かさをつけた松など、植生もまさにプロヴァンス。　これもプロヴァンス地方に典型的な、丘の上の小さな村、ボーニューを散策し、やはり丘の上に作られた古い町、ゴルドにあるホテルのレストランで昼食。　テラスに設けられた席からは、プロヴァンスの起伏ある景色が一望でした。白い光をじわじわと照りつけてくる太陽の暑さは、だんだんとこたえてきましたが・・・　ところで、プロヴァンスでよく飲まれるワインといえば、ロゼ。　手ごろな値段のテーブルワインとして、ロゼがひんぱんに出てくる地方は、ちょっと珍しい、かも。　現地のガイドさんの話によると、プロヴァンスのひとたちは、とくに夏になると、朝起きるとまずロゼを冷やし、昼食に備えるのだそうです。　　そうきくと、ますますロゼが飲みたくなりますね。　きゅっと冷えたロゼが、ステーキにもおいしく感じられてしまうのは、やっぱりプロヴァンス、だなあ。　

  July 14, 2009

• 「ほんもの」のブイヤベースと、ミンコフスキの「イドメネオ」

  　エクサン・プロヴァンス滞在も（到着日から数えて）４日目。　今日は、昼間は、マルセイユとカシの観光にでかけました。　夜にオペラが控えていることを考え、マルセイユの観光は、港にちょっと立ち寄り、高台のノートルダム・ド・ギャルド寺院を観て、眺望を楽しむ駆け足コース。　それでも、青い空に映える南仏の海をたっぷり望めましたが、それから海沿いにしばらく走り、観光客に人気だというおしゃれな港町、カシへ。　ここから、入江めぐりの遊覧船が出ているのです。　途中の道は、海ものぞめた一方で、山火事のせいという荒れた土地が気になりました。ここ数十年で、緑したたる林だった部分が、ほとんど焼けてしまったそうです。　人気があるというだけあって、カシの町はなかなかおしゃれ。海沿いにはカラフルな建物が建ち並び、かわいらしい雑貨やさんもちらほら見られます。　遊覧船は４５分と手ごろな時間ながら、３つの入江をめぐることができ、エメラルドグリーンに輝く海と、石灰の白い肌が目にまぶしい陸地、そしてそれにしがみつくように生えている松とのコントラストを楽しむことができました。　入江には、ときどきゴムボートが浮かんでいて、トップレスで日光浴をするブロンドの女性など、これもヨーロッパの夏ならではの景観？にも出会いました。　昼食はブイヤベース。といっても、観光用の写真でみるような、魚介のトマトスープ煮ではなく、まず魚介をだしにスープを取る、その後、だしがら？になった魚が山盛り運ばれてくる、という寸法です。　お店のひとによると、これが本当のブイヤベースだとか。　だから時間がかかるのは覚悟しなさい、と言われました。はいはい。　食前酒に提供されたキール、そしてよく冷えた「カシ」銘柄の白ワインで気持ちよくなるうちに、待望のブイヤベース登場。　えび色の、とろりとしたスープを一口。魚介のうまみが、じんわりと口いっぱいに広がりました。「おいしい！！」　添えられたフランスパンのかりっとしたトーストに、「ルイユ」と呼ばれる、アイオリににんにくをまぜたマヨネーズ状のソースを塗り、スープに落としますが、これがまた美味。　どれも塩味がうすく、素材の味が堪能できるところが素晴らしいです。　後から山盛りになって運ばれてきた魚は、まさに「だしがら」。半分も食べられないで終ってしまいました。なんとも贅沢な、魚の楽しみ方でした。　　　さて、これで夜は９時半から、エクス最後の演目である「イドメネオ」です。　エクスではオペラの開始が９時１０時があたり前なのですが（ヴェローナもそうですね。ようするに野外の劇場）、これは現地の事情を考えるとしごく納得がいきます。　日が長く、開始時間前後まで明るいのと、暑さが夜まで残るのです。　だいたいここに来るようなヨーロッパ人は、前も書いたように、昼間はのんびりして夕食をゆっくり取り、オペラに出かけてくるのですから、しごく理にかなった時間帯だと思います。　本当はこちらもそうしたいのはやまやまなのですが、限られた日程で盛りだくさんになってしまうのが日本のツアーの宿命というもの。ましてここ南仏は、今日のカシのように魅力的な観光地が多いのですから、ヨーロッパ人のような過ごし方は、やはり難しいかな、と、今回改めて思いました。　さて、今回の「イドメネオ」は、エクスの三演目のなかでは、個人的に一番期待していたものでした。　まず作品が素晴らしい。若きモーツァルトが全力投球したオペラ・セリア。彼のすべてを惜しげもなくさらけ出した、という感じです。フランス趣味のミュンヘン宮廷のために書かれたため、合唱の比重が大きいのもダイナミックで迫力があります。　加えて、指揮のミンコフスキへの期待。颯爽系古楽奏者の代表格だし、きっちり全曲やるほうのひとなので、ふだんは演奏されないバレエ音楽も聴けるかな、と思ったのです。　　果たして、バレエ音楽はあったのですが、それがプラスに働いたかどうか。　というのは、それにつけられた演出（振り付け）が大いに疑問だったからです。　いったいに演出（オｌリヴィエ・ピイ）にはあまり感心しませんでした。　現代風に読み替えるのはまあいいとして、まず冒頭で、トロイの人々をクレタ人が虐げるシーン。これが、トロイ人側が黒人なのです。（昨年も、ピーター・セラーズ演出の「ツァイーデ」で同じ趣向がありました。これって、いいのでしょうか？　本編が始まると、イダマンテ（ヤン・ブーロン）は都市計画の設計者？風。ミニチュア都市のなかで動き回る姿がちょっと違和感。モノトーンの無機質な舞台は、ひっきりなしに転回します。ちょっと目障りでもあります。　笑えたのは、海神ネプチューンが視覚化されていた（舞台に登場していた）こと。イドメネオを押さえてみたり、ちょこちょこ動いてちょっとマンガチックでした。　その彼が、最後の「天の声」で、実際に声を出したので二度びっくり。ルカ・ティントートというひとらしいのですが、いい声でした。　いただけなかったのはエレットラ（ミレイユ・デルンシュ）の演出。イリヤ（ゾフイー・カルトホイザー。このひとも虐げられる側なので黒人なのです）、イダマンテとの三角関係を強調するのはまあいいのですが（「アイーダ」みたい！すごく伝統的な三角関係なのですね）、最後は発狂して自殺する。それも血まみれになり、手首を短刀で何度も切る。いささかしつこいのです。　そして参ったのは、最後のバレエ音楽で、ストーリーをもう一度、ダンサーで繰り返したこと。もうげんなり。エレットラが男性ダンサーだったのもいただけませんでした。せっかくのバレエ音楽がちっとも楽しめない始末でした。　　音楽面では、期待のミンコフスキの指揮はややさっぱりしすぎ。会場の音響のせいもぁるのでしょうか。通奏低音のピアノフォルテ（フランチェスコ・コルティ）はよかったですが。　歌手ではタイトルロールのリチャード・クロフトがダントツでした。柔らかな美声がよく通り、テクニックも危なげなく、モーツァルト・テノールの美しさを存分に味わうことができました。　終演は午前１時。炎暑もおさまり、心地のいい夜風。　明日は、アヴィニョンに向けて出発です。　

  July 13, 2009

• レ・ボーのレストランとラトルの「黄昏」

  　ほんとうに、プロヴァンスというところは、フェスティバルもですが旅先として魅力のあるところです。　と思うのは、いろいろな小旅行を企画しても、ヴァラエティがあって楽しめるから。　今日は、ゴッホが滞在したサン・レミと、天然の要塞だったレ・ボーの町のふもとにあるレストランへ行きました。　サン・レミは、ゴッホがしばらく入っていた、精神病院のあるところ。　弟の世話になることを心苦しく思ったゴッホが、自ら望んで入った場所だといいます。　あたりが白くなるほど強い陽射し、銀いろに輝く葉が連なるオリーブの林、ローマ時代から残る遺跡、そして、もと修道院の一角に設けられた、鉄格子のはまったゴッホの部屋。。。　陽射しの明るさと、そこにあった心のドラマの対照がすさまじく、真昼の夢、をみているような場所でした。　昼食に選んだレ・ボーのレストランは、南仏一といわれる、ミシュランの２つ星つきのレストランのセカンドレストラン（星ひとつ）。　日本ではいまひとつ選考基準が分からないのですが、フランスに来ると、なるほどミシュランの星というのは信頼できるな、と思います。まず、外れることはないようです。　ここも最高でした。レストランといってもホテルをかねており、木の茂る広大な庭に面したテラスで、信じられないほどやわらかい豚の煮込みや、軽くも深い味のチョコレートのデザートなどをいただきました。　木漏れ日のきらめくテラスは風がとおって心地よく、冷えたロゼワインがどうにも利くのでした。　けれど今日は、こんなことをしている場合ではなく？、というのは、17時から、サイモン・ラトル＆ベルリン・フィルの「神々の黄昏」があるのです。　今回のフェスティバルの最大の目玉。まだ到着して日も浅いのに、こんないい気持ちになって、眠ってしまったら、どうしよう？　けれどいざオペラが始まってみたら、その心配は、ほとんどありませんでした。　面白かったから、とか、素晴らしかったから、といえればいいのですが、それはもちろん否定しませんが、一方で、大音響だったからです。　この、ラトルの「リング」プロジェクトのために建てられたプロヴァンス大劇場は、客席数１３６５．決して大きいとはいえません。また、音の通りが大変いい劇場。　なので、音がダイレクトに来るのです。　最初は「すごい！」と思いました。圧倒的な、それも正確無比な音の洪水。輝くばかりの凄み。　けれど、ワグネリアンには村八分にされるでしょうが、どこかで時々、「もうたくさん」というシャッターがおりてしまうのを感じてしまいました。私が、本当にはワーグナーを好きではないからかもしれませんが・・・。　ひとつには、その「音」が、歌手を圧倒してしまう部分があったからだと思います。　（ただ、ラトルの「リング」は、春にイースター音楽祭で「ジークフリート」を聴きましたが、あのときの劇場では、そんなことはなかったような気がするのですが・・・）　このサウンドに負けないようにするには、歌手も大変、つくづく、そう思いました。　歌手は揃っていたと思います。ジークフリート役のベン・ヘップナーも悪くなかったですし、ブリュンヒルデ役のダライマンは、声の豊かさ、表現力では圧倒、ただドイツ語が聞き取れないのが難点でした。　一番よかったのはハーゲン役のキリル・ペトレンコ。発声もきりりと明確でドイツ語も明瞭、美声だし、スタイリッシュですが凄みがある。理想的な悪役です。　また、ヴァルトラウテをベテランのアンネ・ゾフィー・フォン・オッターが歌いましたが、たしかにうまかった。まあ、ワーグナーの声、という感じは受けなかったのですが・・・。　シュテファン・ブラウンシュヴァイクの演出は、春の「ジークフリート」よりはずいぶん変化があったように思います。（「ジークフリート」はほとんどコンサート形式のような感じ）。大きな階段が、ドラマを支えていました。　それにしても、やはり長い。この場面は必要？と思う場面がいくつかありました。もちろん、ワーグナーを理解していれば当たり前、だと思う場面なのでしょう。　ワグネリアンヘの道はまだまだ遠いようです。

  July 12, 2009

• エクスのエレカジ～「天国と地獄」

  　大学の最終授業が終わるや否や（そして何本かの原稿を大急ぎで片付けるやいなや）、また、日本を飛び出してしまいました。　ゆきさきは南仏。音楽ファンの間で話題の、エクサンプロヴァンスの音楽祭です（といっても、ツアーに同行しての「お仕事」なのですが）。　パリ経由でマルセイユの空港へ。到着したのは夜の8時を回っていましたが、それでも明るいのはさすがヨーロッパです。空が高い！のは乾燥しているせいでしょうか。　それでも、ホテルに落ち着いた頃には、さすがに夜が始まっていました。　日中は暑い南仏ですが、朝は実にさわやか。プールサイドが望める朝食レストランでは、なんと知人の某テレビ局もと重役ご夫妻にばったり。大のオペラファンであるお2人は、毎夏のように音楽祭めぐりをしておいでです。ご主人はいわゆるえらい方なのに、ちっとも偉ぶらないすばらしいお人柄のもちぬしでもあります。　それ以外にも、ロビーでは、某女流評論家と日本人女性グループを見かけるなど、やっぱりオペラファンはエクスの魅力を知っているのだなあ、と、いきなり痛感した初日でした。　軽く市内観光をこなし、強い日差しをさけて午睡をとった後は、夜１０時からのオペラに臨みます。　エクスはもともと保養地で、保養客を目当てに、大司教館の中庭という屋外の会場でフェスティバルをはじめたので、開演が遅いのです。　昼間はプールサイドでごろごろし、夜はオペラに興じて朝はゆっくり寝坊をする。これが正当な？バカンススタイルなのでしょう。　こんなこところで観光なんかしているのは、日本人くらいかもしれません。　ここの会場は、屋外といっても何となくしゃれています。座席は木製で（何となくプラスチックだったように思い込んでいたのですが、思い違いでした）、わりとゆったりし、しかも客席の床はしっかりと階段になっているので、舞台がよく見えます。　昼間は暑いといっても夜はかなり冷えるので、休憩時間あたりになるとロビーに無料の貸し出し毛布が出てくるのも、エクスならではのサービス？です。　旅の初めの演目は、オッフェンバックの「天国と地獄」。　フランスものなのに、これまでなぜかフランスで観る機会に恵まれませんでした（たんに、フランスに来ることが少ないからかも）。　いやはや、しかし、この手のオペラでせりふが分からない、というのはつらいものです。だってお客が笑い転げているのに、こっちはボーｾﾞﾝとしているだけなんだもの。半分以上がお芝居、ですね。　　演出（Yves Beaunese）は現代風。女流カメラマン（ジャーナリスト？）になった「世論」（Marie Gautrot）、エプロンをかけたユリディース（Pauline Courtin）はなかなかおしゃれ。天国での宴会は、大テーブルを囲んでのパーティでした。　　コケットリーだったユリディースが、最後に誰からも見捨てられてしまう、という結末もなかなか面白かったです。　　歌唱的にはあまり印象に残ったひとはいなかったのですが、代役で出てきたジュピター役のバリトン、Vincent Deliau はなかなかの歌唱力でした。　指揮はアラン・アルティノーグル、オーケストラはカメラータ・ザルツブルク。　一方、会場ではツアーメンバーから、「ここのお客はおしゃれ」という声が。　これまでここには2回来ていますが、「カジュアルだなあ」という印象はあったものの、こちらが鈍いせいで、「おしゃれ」だというところにまで目がいきませんでした。　けれど言われて見回してみると、なるほどカジュアルではありますが（ネクタイなどほとんど見かけない）、みんな思い思い、個性的。同じような格好をしているひとはほとんどいません。　これが、フランス人が「おしゃれ」といわれる理由かもしれませんね。　　　これがたとえば、先月行っていたドイツのライプツィヒのゲヴァントハウスあたりだと、男性はスーツにネクタイ、女性はシルクのブラウスだったりしますが、そのブラウスもカットが似たりよったりで、ああ、「C & A」（ドイツの代表的なデパート）あたりで買ったのでは、などと想像してしまいます。　日本なら、いかにも地元の洋品店か、デパートの特売で買いました、という感じでしょうか。失礼ながら、田舎なんですね。　　そんなこんなの「発見」をするうちに、空には星がいちめんにまたたいていることに気づく、エクスの夜でありました。

  July 11, 2009

• やっぱり！パリの空港

  　充実の旅を終え、さて、帰国です。　以前にも書いた通り、ツアーに先立ってひとりでハレのヘンデルフェスティバルに行ったので、飛行機は単独。　時間の関係で、パリ経由のエールフランス機でした。　うーん、パリか。　エアフラと決まったとき、ちょっぴり悪い予感が。　パリのドゴール空港といえば、昨年の10月のイタリア旅行で、セキュリティで足止めを食って飛行機に乗りそびれた悪夢のあった空港なのでした。　今回は、乗り継ぎ時間が十二分ににあるので、その心配はまずなかったのですが、問題は「タックスフリー」。　ライプツィヒでアウトレット気分で買い物をしたおかげで、免税してもらえる品物ができていました。日本円にしたら数万円の買い物ではあるのですが。　免税手続きは、ＥＵを最終的に出る国でやる、ということになっています。つまり、今回はパリ。うーむ。　手続きはすんなり行って、何十ユーロか払い戻してもらったのですが、問題はその後に起きました。　入国審査の列に並ぼうとしたら、「その荷物はだめ。機内持ち込みは1個だけ」と、黒人の係員にストップをかけられたのです。　免税の品物は、手続きの時に見せることになっており、ふつう手続きはチェックイン後なので、スーツケースにいれずに手荷物にするのが一般的です。　免税の品物、と何度説明しても、「それは関係ない、ここでは手荷物はひとつ」とらちがあきません。　そういえば昨秋も、航空会社の係員は、乗り遅れた私たちに、「それはセキュリティの責任、うちは関係ない」と突っぱねていました。　フランス式官僚主義。。。なのでしょうか。　見かねて他の係員がやってき、ようやく解放されました。　やっぱり、パリの空港です。

  June 24, 2009

• ほとんどアウトレット

  　「バッハへの旅」も無事に終わり、お客さまを送り出してほっと一息。　友人に会いがてら、計画中の本の取材をしたり、街を楽しもうと、一晩だけ延泊することにしました。　ところで、ヨーロッパに来る楽しみのひとつは、お買い物。　といっても、ブランドものではありません。ごく日常的な衣類、そして靴です。　サイズ的に、こちらのほうが体にあう（肩幅や袖の長さなど）ものが多いという理由です。　何より助かるのは、靴のサイズ。恥ずかしながら２５センチもある大足で、日本ではほんとに限られてしまいます。　とくに困るのが、サイズが大きいと安い靴がないことで、２９００円とか３９００円とかいう靴は、指をくわえて見ているだけ。　加えて、外反母趾もあるため、大きい上に楽、という条件がかさなり、安くてしゃれて楽で使える靴を日本で買うのは、至難の技なのです。　けれど、ああ、ライプツィヒにくれば、私のサイズ、「４０」は、スタンダードのどまんなか。しかもドイツはコンフォートシューズの本場ですから、ちょっとしゃれていて楽な靴、なんてかんたんに見つかります。天国。　というわけで、旅の最後の日、ライプツィヒは音楽の町ならぬ、私的アウトレットと化すのでした。

  June 23, 2009

• 「調律したて」のオルガンの音

  　昨日に続いて、今日は、ハレの町へ、オルガンを聴きに出かけました。　午前中は、バッハが暮らしていたケーテンを観光、午後にハレに移動して、ヘンデル博物館と教会でのオルガン鑑賞、というオプショナルツアーです。　ハレでのオルガンは、先週、ピノックの「テオドーラ」を聴いた市場教会のオルガン。　ここには有名なオルガンが２つあり、ひとつはヘンデルがレッスンを受けた１７世紀の小さなオルガン（ライヒェル作）、もうひとつは、完成（１７１６年）の折にバッハが演奏に来た大オルガン（クンツィウス作）。　大オルガンのほうは、その後いろいろ手が入り、現在の形になったのは１９８４年。プロスペクトは１７１６年のままだそうですが、中身はかなり変わっており、シンセサイザー（！）も組み入れられていると聴きました。　弾き手は、この教会のカントールであるピロー氏。彼は、フランス出身で、北ドイツのリューベック（バッハも関係のある町）でも仕事をしていたそうです。　いつもここに来ると、大オルガンもさることながら、小オルガン（通称「ヘンデル・オルガン」）の響きのピュアなことに心を奪われてしまうのですが、今日はまた飛び切り音色がクリア。　その理由は、「２０年ぶりにちゃんと調律をしたばかりだから」（ピロー氏）。　オルガンは、完成したときに調律して、その後は大がかりな調律はなかなか難しい、という話を聞きます。だから徹底的な調律は、２０年とか、そういうタームになってしまうのでしょう。　このオルガンは、「中全音律」で調律されているそうで、そのため音程によって響きにばらつきがあるのですが、調律したせいで、設計上とりわけ美しく響くようになっているだろう音程がきれいに響いているのだろうな、という実感がありました。　「バッハへの旅」で聴けるオルガンのなかで、響きのピュアさという点では、この「ヘンデル・オルガン」がぴか一かもしれません。　一方、大オルガンでの聴きものは、レーガーの作品でした。　会堂を満たす轟音に、オルガニストがこういう作品を弾きたくなるのもわかるなあ、と、思わずうなずいてしまったのでした。

  June 20, 2009

• アルテンブルクのお姫さまと、トローストのオルガン

  　「バッハへの旅」、今日は、アルテンブルクという町に、オルガンを聴きにやってきました。　バッハも弾きに来たいう、トロースト作の大オルガンで有名な町です。　オルガンのある場所は、町のシンボルともいえるお城の城内教会。　ここのオルガンは、「バッハの弾いたオルガン」数あるなかでも、最大、最美といってもいいのではないでしょうか。　祭壇のように（そして祭壇より）立派で、プロスペクト（外箱）も美しく、そして音が柔らかい。　製作者のトローストは、ここの宮廷の「宮廷オルガン製作者」だったひとですが、（トロースト一族はオルガン製作者の一族でした）、トローストの楽器の響きは、バッハも気にいっていたと伝えられています。　弾いてくれたのは、ここの専属オルガニストのフェリックス・フリードリヒ氏。　ＣＤも何枚も出しており、このあたりではかなり知られたオルガン奏者です。　自身の編曲も交え、壮大でありながらも優しいオルガンの響きを堪能させてくれました。　ところで、このお城はかなり広く、オルガン演奏の前後には、いつも城内を案内してもらうのですが、その際のガイドさんの自慢が「アレクサンドラ姫」。　１９世紀に、ここの領主の娘だったひとで、ロシア皇帝にお嫁入りしたお姫さまだそう。　このお姫さまの話になると、どのガイドさんも熱が入るのですが、通訳するこちらはかなりしんどい。　だって、この手の話って、系図がぞろぞろ出てきて、それもみんな似たような名前なので、きいているうちにこんがらがってきてしまうのです。　それでも、「おらが町のお姫さま」の自慢話、省略するわけにもいかないようで・・・　それにしても、ヨーロッパ人って、ほんとにこの手の（王侯貴族の）話が好きなんですよねえ。

  June 19, 2009

• 忘れ物リスト

  　以前も書きましたが、「忘れ物女王」かも、とひそかに自負？しています。　もちろん、好きでこうなってるわけじゃないんですが（苦笑）。　ふだんもよくいろいろ忘れるのですが、旅に出ても同じこと。　ひどいときは、泊まった宿ごとに何か残してくるありさまです。　自分の足跡？まさか。　今回の旅、今日、最終目的地、ライプツィヒに入りましたが、ここまでで泊まったホテルは4箇所、そして忘れ物もばっちり４つ・・・　携帯用の目覚まし時計、気休めのサプリメント（セサミン）、ヘアバンド、そして（どうでもいいものではありますが）本1冊。いやはや。　まあそれでも、今回は痛手？が少ないほうで。　ひどいときは、アクセサリーケース、ランジェリーケースなんてのもありました。前者は地団太を踏み（もちろん、旅行ですから安物しかもってきていないのではありますが）、後者はすぐさま困った。　とくに後者の場合、ホテルの部屋とすぐに思い出して連絡をとってもらったものの、きれいさっぱりなくなっていて、それは困りました。毎日いるものですからねえ。　ついでに、出かける前に忘れるものも何かしらあって。　今回は、これこそこの旅にぴったり、と思っていたスーツとセーターを、ばっちり忘れてきてしまいました。　6月にしては寒い気候も手伝って、毎日？地団太を踏んでいます・・・　次に生まれ変わったときは、もう少し脳のしくみ？の違う人間に生まれたいものです・・・？

  June 18, 2009

• ノイマン氏の「アルヒーフ」

  　「バッハへの旅」を続けていると、時々、バッハの「堂守」みたいなひとに出会います。　毎回お世話になる、ノイマンさんもそのひとり。　バッハがマリア・バルバラと結婚した、ドルンハイムの聖バルトロメオ教会で、信徒代表をつとめている人物です。　「バッハへの旅」には欠かせない訪問地なので、毎年行くのですが、そのたびにノイマン氏が出てきて「解説」してくれます。　昨日、そのバルトロメオ教会ヘ行ったのですが、またまたバッハの結婚式を「実況中継」してくれました。　バッハが当時住んでいたミュールハウゼンから、どうやってここまで来たかとか、その前後のパーティはどこでやったとか、バッハとバルバラはここに膝をついた、とか・・・　じつは、いつも、通訳をしていて半信半疑にもなっていたのです。　だって、アルンシュタットを出た結婚の行列が、手をつないで、「楽しい歌」を歌いながらやってきた、なんて、バッハ本にはおよそ書いていないのですから・・・　ノイマン氏にきいてみました。　「その結婚式の情報は、どこで仕入れたんですか？」　「村の古文書館（アルヒーフ）だよ。そこには、一般のひとは入れない。村長と僕しか入れないんだ」　バッハ学者はきていないんでしょうか？まさか。「歩くバッハ事典」みたいなひとが何人もいる世界なのに。　一度、確かめてみたいものですが・・・。

  June 16, 2009

• 「残るものには、お金をかけない」

  　「バッハへの旅」も、日本出発から数えて3日目。　今日は、バッハが最初に本格的な就職（教会オルガニスト）をしたアルンシュタットの町で、近年、バッハ当時のままに復元された「バッハ・オルガン」を聴きました。　ヴェンダー作のオルガンのシャープな音色は、かまぼこ型をした質素な会堂を、いっぱいに満たします。　オルガンというのは、（教会堂も同じですが）、時代の趣味に応じてどんどん作りかえられてしまうので、どうしても作られた当時の形から変わっていってしまい、「バッハ」の遺産を、と気づいた時には、また元の形に戻す作業を行わなければならないのですね。　ちなみにここのバッハ・オルガンには１３００本のパイプがあり、４００本がオリジナルのままだということでした。　ところで、「バッハへの旅」には、時々リピーターの方が見えることがあります。　だいたい同じコースではあるのですが、もう一度歩いてみたいとか、前とは内容が多少違うから、などの理由です。　今回も、リピーターの方がお2人いらっしゃいましたが、おひとりは前行かなかったところがあるので、そこへいってみたいという理由、もうおひとりは、ドレスデンが前来たころより急速に変わっており、とくに聖母教会が再建されたのをみてみたい、という理由でした。　このうち、ドレスデンを目的に参加された方は、何年か前に連れ合いの方をなくされたというご事情もあり、　「後に残るものには、お金をかけなくなりました」　とおっしゃっておいででした。　なんとなく、分かるような気がします。　後に残るものがやたら？あっても、残された側は結構たいへんかもしれませんから・・・　

  June 15, 2009

• 北京経由？

  　また、旅に出ました。　毎年恒例の、『バッハへの旅」です。　今年、ヨーロッパは3度目ですが、ツアーのお仕事は初めて。　（とはいっても、例によって旅先ではブログをさぼり、帰ってから書いているわけですが・・・）　例のインフル騒ぎで、キャンセルになるツアーも続出、心配しましたが、幸いなことに数名のキャンセルが出ただけですみました。　ツアーは13日からなのですが、私はその前に、バッハツアーの目的地であるライプツィヒ近郊のハレで、ヘンデルフェスティバルを聴こうと、ちょっと早く出かけました。　時間の関係で、ツアーで使うオーストリア航空ではなく、エールフランスで出発。これだと、夜の便があり、夜の時間を移動に使えるのです。　それにしても、インフル騒ぎで旅をキャンセルするなんて、日本だけのようです。　旅行社のひとが言うには、　「他の国ではこんなことでキャンセルするひとなんていないから、現地の手配先に理解してもらえない」　そうで、　「こんなことが続くと、日本は相手にされなくなる」　と嘆いていました。　キャンセルというのは多大な損失ですから、そんなことをする日本は、マーケットとして重視しなくなる、というのです。　それより、中国などを向いたほうが、商売ができる、ということになるという。　「今に飛行機の直行便も減らされて、ヨーロッパに行くのに、北京経由なんてことになるかもしれません」　真顔で、そう言っていました。　たしかに、経由したパリの空港でも、到着したライプツィヒの空港でも、マスクなど見かけませんでした。　「北京経由」、当分先であって欲しいものです。

  June 11, 2009

• ボージョレーのぶどうの芽

  　旅も、最終目的地のリヨン。　今夜はいよいよ、最大の楽しみのひとつである大野和士さんの「ルル」の初日ですが、昼間、近郊のボージョレーを訪れました。　「ヌーヴォー」で有名な、あのボージョレーです。　日本に「ボージョレー・ヌーヴォー」を輸出し、有名にしたのは、ここにあるジョルジュ・デュブッフ社。　花柄のラベルを、ごらんになった方も多いでしょう。　今日はそのデュブッフ社を訪問。ゆくゆく、リヨン・オペラを組み込んだツアーも考えているのですが、そのときのエクスカーションにならないかなあ、と思っての訪問です。　リヨンからタクシーを飛ばしておよそ４０分。小さな遊園地のような外観の博物館を備えたデュブッフ社は、オフシーズンのせいでしょうか、訪れるひともまばらでした。　案内に出てきてくれたのは、日本への輸出を担当しているというベルナール氏。　小さめのカイゼルひげがおしゃれな、老紳士です。　日本をはじめ世界中を飛び回っている彼は、英語はもちろんドイツ語も、イタリア語もぺらぺら。こちらはどれも「ペ」という情けない状態なので、ごたまぜの言葉で話します。　ちなみに、創設者のデユブッフ氏はまだ健在で、今でも１日に４～４，５時間のテイスティングをするそうです。すごい！　ベルナール氏の車で、デュブッフ社のぶどう畑を回りました。　いくつもの村ごとにぶどうが微妙に違うそうで、ラベルには、村の名前が印刷されています。　ぶどうの５０％は、「ガメイ」という種類だそう。残りの２５％は「ボージョレー・ヴィラージュ」。あとの２５％はそのほか。　どの畑も、まだまだ静か。小さな木の先に、ちょん、と芽が出たばかり、という状態です。　この畑が、９月の収穫の時期になると、出稼ぎの人たちでびっしり埋まるそう。　「ポーランドから、２，３０００人も労働者が来て、日給６０ユーロで働いていく」　見渡す限りのどかな丘陵地帯が続き、典型的なフランスの田舎、という風情からは、ちょっと想像ができません。　やはり活気のある秋に来てみたいものだと、かわいらしいレストランでグラスを傾けながら、思ったことでした。　写真は、デュブッフ社の売店に飾られていたワインのボトル。みなラベルがちがって、壮観です。

  April 20, 2009

• リヨンの菜の花

  　一人旅、二日目。　偶然「ウィーン・マラソン」にでくわしたウィーンを発ち、最終目的地のリヨンにやってきました。　これまでもでしたが、ここも暖かい！　空港から町に向かう途中、菜の花畑が満開でした。　いつもなら、５月の初めくらいが最盛期なのですが・・・

  April 19, 2009

• アニフで思う、カラヤンという存在

  　「カラヤン」への旅、ザルツブルク編。　昨日、今日と、写真撮影もかね、カラヤンが暮らした「アニフ」というところへ行きました。　町の郊外にある、富裕層が集うといわれている美しい村です。　アニフも初めてでしたが、アルプスの山に囲まれ、緑したたる草原に抱かれた、本当に夢のなかのように美しい村でした。　カラヤンの家もそのまま残り、お墓もこの村の教会にあります。　カトリックなので、土葬。こんもり土のもりあがったお墓の前には、イースターフェスティバル関係者からのお花が供えてありました。　フェスティバルが始まる前は、この時期は観光的にオフシーズンだったそうですから、カラヤンさまさま、というところですね。　　さて、ちょっとこのあたりの田舎家の風情を漂わせたカラヤンの家は、頂上に十字架をいくつもいただくために「聖なる山」と呼ばれている、標高１９００メートルあまりのアルプスの山、「ウンタースベルク」を仰ぐ、絶好の場所にあります。　住所はもちろん「カラヤン通り」。　その家を眺めながら、思わずうなってしまいました。　「聖なる山」を見上げる富裕層の村に家を建てる、そんな成功のしかたをした音楽家は、やっぱりカラヤンしかいないのだろうな、と。　カラヤンが、録音技術を味方につけて世界を制覇（？）したことは、よく知られています。　もうひとつ、旅の前にカラヤン本を読んで知ったのですが、彼はウィーン国立歌劇場の監督時代に、飛行機が一般化したことで、スカラ座のイタリア人歌手を連れてきて、イタリア・オペラを歌わせたそうです。　これは、当時、イタリア・オペラでも専属歌手を使っていたウィーンにとって、すごく画期的なことだったよう。　私は、カラヤンの音楽ではイタリア・オペラが（作品にもよりますが。「蝶々夫人」はこの作品のベスト盤と思っています。「ドン・カルロ」も素晴らしい）素晴らしいと思っているのですが、彼のそんなやり方も、すごく面白い、と思いました。時代の進歩に乗って、本質的なことをやったわけですから。　このあたり、スピード化時代についていけなかったマリア・カラスより、はるかに賢いひとだったのではないかと想像します。　やはり、現地に来てみなければわからない。春の陽光がきらきらときらめく牧歌的な風景のなかで、「カラヤン」が創った神話の一端を見た気がしたのでした。　写真は、アニフから仰ぐ「ウンタースベルク」。

  April 14, 2009

• 在仏カメラマンが見た「オーラ」の話

  　昨日から始まった、ある媒体の主催による取材旅行。　テーマは「カラヤン」で、同行する某有名人に、記事＆本を書いてもらうための旅です。　最初の目的地はザルツブルク。昨日、ミュンヘンまで飛行機で飛んで、あとは陸路でザルツブルクヘやってきました。　　昨日も書いたように、ほとんどのメンバーが初対面なので、おそるおそる、こわごわ、です。　カメラマンも同行していますが、彼はフランス在住２０余年という日本人。　朝食の席で、カメラマン氏と一緒になりました。　自然体の彼と話すのは心地よく、話はいろいろ飛びましたが、面白かったのが、彼の被写体になったひとたちの「オーラ」の話。　フランスに暮らしているわけですから、フランスの女優さんの写真を撮ったこともあるらしいのですが、フランスの女優さんは、どちらかというと「ふだんはまったくのおばさん、でも撮影となると瞬間的にすごいオーラを出す」のだそう。　「カトリーヌ・ドヌーブなんかも、別にふつうのおばさんですよ」　と言う話には、驚きでした。まさに女優魂のかたまり、という印象があったので。　そのカメラマン氏いわく、音楽家も、外国人のほうが自然体なのでは、と。　なるほどそれは、思い当たる気がします。　少なくともヨーロッパ人のアーティストの大半は、舞台を降りればごく気さく。町ですれちがって声をかけても、ごく自然に応じてくれます。　その点、日本人アーティストのほうが、肩に力が入っているかもしれません。少なくとも、ちょっと前の世代までは、　「私は特別なことをしている」オーラが出ているケースが、まま見られました。 　「ヨーロッパの人のほうが、本当に好きで音楽をやっている、感じがありますよね」　言いえて妙。結局、そういうものが先に立っていれば、肩肘張る必要もないのかもしれません。　今夜は、イースターフェスティバルで、サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルの「ジークフリート」です。睡魔が怖い・・・

  April 13, 2009

• 旅はいつから始まる？

  　今日からまた、旅です。　今回は、ツアーでもなくまったくのフリーでもなく、ある有名人を立ててのある媒体の取材旅行に同行するという、まったく初めての体験。　有名人が超多忙なひとなので、事前の打ち合わせもほとんどなし、担当者に会っただけで、同行者のほとんどと、空港で初めて顔合わせをすることになっています。　それやこれやで、ちょっぴり不安もあるのですが、せっかく行くならと、取材終了後にひとりで数日、居残ることにしました。　場所は、取材の最終目的地のウィーンと、フランスのリヨン。　リヨンといえば、オペラファンは思い当たるのでは。そう、あの大野和士さんが首席指揮者をつとめている劇場のある町です。旅の最後に、そこで、大野さん指揮する「ルル」のプレミエを観ることにしました。　　　さて、旅行前、まとめて仕事を片付けているときの一番の楽しみ。　それは、ホテルの予約です。　ホテルは私にとって、旅の大きな楽しみ。ネットの時代になって、予算の範囲で居心地のいいホテルを探すことが、仕事の合間に可能になりました。　ちなみに、私がいつも使うサイトは、booking.comというサイト。行き先と日程を入力すると、空いているホテルの一覧が写真入りで出てきます。　仕事に疲れると、ここにトリップする。するともう、気分は半分、旅なのです。いい気分転換になることは、いうまもありません。 写真は、今回の旅でウィーンで1泊した「レーミッシャー・カイザー」。プチホテルですが、町の真ん中で便利でした。

  April 12, 2009

• 「悲しきアンコール・ワット」

  　旅も今日で終わり。ヨーロッパばかりの私にとっては、短く近い旅でした。　（時差がほとんどない～2時間～のがこんなに楽とは、とも痛感しました。）　今日は遺跡めぐりはなしで、近くにある、インドシナ半島最大の淡水湖、トンレサップ湖へ。　「水上生活」を見学に行く、という触れ込みです。　シェムリアップを出た車は、かなりな悪路を走ります。がたぼこ道の両側には、蓮畑が広がるところもあり、濃いピンク色の蓮がびっしりと咲く光景にも出会えました。　　トンレサップ湖は、乾季と雨季で大きさが3倍に変わってしまうそうで、雨季のときにはびわ湖の13倍あるという大湖。アンコール遺跡のレリーフにもよく登場し、クメール王朝時代も、人々にとって重要な湖だったことがよく分かります。　今でも周辺の住民は、漁業をなりわいにしているひとが多いそう。　途中もそうでしたが、湖周辺の光景も、貧しさを感じさせるものでした。　掘っ立て小屋のような住まい、車を降りるとよってくる押し売りの子供たち。　竹や椰子の葉で編んだ小屋に住みながら、携帯電話は持っている、という状況を、矛盾しているように感じるのは私だけでしょうか。　　トンレサップ湖の水は、泥水と形容したい薄茶色。船は湖につながる川から出発し、湖に出ると「水上生活者」の村へ向かいます。　水の広がりは、文字通り大海のよう。　「水上生活者の村」は、かなり広い範囲で広がっていました。　言葉通り、水上に簡単な家を建てて、漁業などで生活しているということで、合計3万人！ばかりも暮らしているそうです。　ガイドさんの話によると、ヴェトナム人の住んでいるところと、カンボジア人の住んでいるところは別だそうで、ヴェトナム人区域には、クリスチャンが多いので教会があり（もちろん水上）、カンボジア人区域には、仏教のお寺が建っています。　隣国のヴェトナムから、なぜこんなところに流れ込むのかとガイド氏に尋ねてみたら、「貧しくて仕事のないヴェトナム人が来る」ということでした。　なかなかに、複雑な事情があるようです。　それにしても、こんな風に、普通に生活している区域にのこのこ観光にやってきて、いいのでしょうか。　彼らにメリットはあるのかなあ。　やはり船を利用したみやげ物屋（これはもちろんメリットですがに立ち寄り（船の水槽には名産のなまず！やわに！がひしめいていました）、帰路につきました。　最後に街中の市場に立ち寄りましたが、魚や貝、野菜を売っているのは面白かったですが、どうも清潔感という点で、行きなれているヨーロッパの市場とは違う目で見てしまいます。　車に乗っている私たちの目の前で、警官が、ヘルメットをかぶらないでバイクに乗っていた若者を尋問？していました。　「あれは、ワイロをとっています」　ガイド氏が、たどたどしい日本語で説明します。　「給料が安いから、違反をしているのをつかまえて、罰金をとっても、チケットをきらないでおいて、罰金を全部ふところに入れてしまう」　　と、言うのです。　ガイド氏によると、先生や警官など、カンボジアの公務員の給料は、２５－３０ドルくらい、とても暮らせないそう。だから副業に精を出す。　「小学校に行くのが義務になったのは、２００５年からですが、学校の先生も給料が安いから毎日来ません。週の半分はアルバイトしています」　　先ほど、悪路を走っていた時にも、ガイド氏は言いました。　「これが、カンボジアの道です。　カンボジアでは、上のひとたちもワイロをとっているから、援助がきてもそこだけで分けてしまって、道まで来ません。　貧しいひとたちのところにまで、来ません」　そこが、ＯＤＡとやらの、いちばん難しいところなのでしょう。　国連の寄付なども、人件費やらなにやらで、途中でかなり減ってしまうときいています。　（私が寄付というともっぱら「ペシャワール会（アフガンで活動している中村医師の会）」なのは、そのあたりの透明性がとても高く、寄付金のほとんどが現地に届くことがはっきりしているからです）　　けれど、ワイロが必要な体質？は、昔もあったようです。　以前このブログでご紹介した、フランスの探検家でアンコールの再発見者、アンリ・ムオは、１９世紀の半ば、　「この国の現状は悲しむべきもので、その将来は嵐を含んでいる」　「・・・（租税の高いことなどをあげて）あらゆる強奪、涜職がこの国の高官によって行われている。王族および王自身までが率先してその範を垂れているのが現状である」（大岩誠訳）と記しています。　ついでに、アンナン人（ヴェトナム人）「水上生活者」がいたことも、工業らしい工業のないことも、今と同じなようでした。　　そして、戦闘が絶えないことも・・・　ヴェトナム戦争に巻き込まれ、その後長い内戦が続き・・・という絶え間のない戦火は、現代史だけの話ではありません。この国は何世紀にもわたって、シャム（タイ）やヴェトナムと戦闘を続けてきたのです。　　もっとも、少なくとも私の知る限り、２０世紀の戦争においては、大国の影がたえずつきまとっているのですが・・・　中国、米国、ヴェトナム・・・ポル・ポトの背後にいたのも、中国でした。彼の「革命」は、文革の凝縮でもあったようですから。　日本は幸運だった、とつくづく思ってしまいました。　ヴェトナムでは、日本をはじめ先進国の工場（ハノイの郊外で、キヤノンの大きな工場を見ました）が進出したりして活気がありますが、治安の回復が遅れ、しかもまだ不安材料を抱えるカンボジアには、なかなか本格的に産業が進出してこないようです。　観光といってもアンコールだけですし、ムオ同様、前途多難、な気分に何度も襲われました。　　お金を使うときも、複雑な気持ちになってしまいます。　たとえば、遺跡で象に乗ると、１５ドル取られます。けれどガイドの日当は（ガイド氏の言葉によれば）5ドルだそう（これは後で知ったことですが）。　そのような値段の矛盾を知ってしまうと、何がまともで何がまともでないか、わからなくなってしまうのです。　象に３０分乗って15ドルだからと言って、ガイド氏に毎日同額のチップを出すわけにはいかない、そう思うと落ち着かない気分なのです。 昨日の朝見た、アンコール・ワットの朝日は素晴らしかったですが、残された文明の素晴らしさに心を打たれる分、現状の矛盾に満ちた貧しさが身にしみました。　アンコール遺跡の盗掘の現状をルポルタージュした、写真家の三留理男氏の著作のタイトル「悲しきアンコール・ワット」（光文社新書）が、心に浮かんだことでした。　下の写真は、水上生活者の家。

  April 1, 2009

• シェムリアップの「山本学校」

  　遺跡探訪2日目。今日も、昨日と同じガイドさんがつき、午前と午後に分けて５つほど遺跡を回りました。　午前中は、「東洋のモナリザ」と呼ばれる女神像で名高い、「バンテアイ・スレイ」というかわいらしいお寺と、巨樹「スポアン」に押しつぶされている光景で有名な「タ・プローム」。午後は「プレ・ループ」、「東メボン」、「プリア・カーン」の3箇所です。　「バンテアイ・スレイ」は、１０世紀、クメール王朝の比較的初期のころの寺院で、「東洋のモナリザ」は、アンドレ・マルローが盗掘を試みたことでも有名です。　そのいきさつは、マルローの小説「王道」に書かれています。　この小説にもチャレンジしたのですが、肌にあわなくてやめてしまいました。彼のようなタイプの西洋知識人の問題意識が、私の頭では理解できなかったようです。　「モナリザ」はたしかに可愛らしく、赤い砂岩に彫られたこともあって女性的に感じられました。　「タ・プローム」や「プリア・カーン」では、石が転がる間を縫って歩きながら、遺跡というより廃墟、の感を濃くしてしまいました。　それでも、女神さまの微笑には、相変わらずひきつけられて、足を止めていたのですが。　ガイドさんは「アンコール・ワット」はカンボジアの誇り、と何度も繰り返していましたが、それはそうだろうな、と思います。　カンボジアの現状がまだまだ悲惨なだけに、この素晴らしい建造物を作った過去を誇りにすることで、保っている部分は大きいのではないでしょうか。　観光の合間にきいたガイドさんの身の上話に、ああまだまだたいへんな国、という思いにとらわれてしまいました。　カンボジアは、人口の８０パーセントが農業に従事している農業国、という触れこみになっています（ただし外務省のＨＰで見た情報では、ちゃんとした統計はないそうです）。　ガイドさんの出身も、典型的な田舎の農村。村には１０戸ほどしか家がなく、いわゆる「職業」を持っているのは、彼だけだそうです。　村ではほとんど自給自足で、何か買うときはお米と交換することが多い、らしい。　「とにかく仕事がない」と言っていました。　問題は、住民のほとんどが読み書きができないこと。小学校が義務教育となったのは、たった4年前の２００５年だそう。さすがに読み書きができなければ、仕事をすることは難しいだろうなあ、と思ってしまいます。　ガイド氏は、その生活から抜け出すために、僧籍に入ります。仏門に入れば、ただで勉強ができる。勉強したいと思ったら、お坊さんになるしかないのだ、ということでした。　13年間僧侶をつとめますが、ある時思い立って還俗し、警官になります。しかし給料が安いのでそれも2年でやめ（月に２５－３０ドルくらいらしい）、シェムリアップの「山本学校」で、日本語を1年間みっちり学びました。　「山本学校」では、無料で日本語が学べたということでした。　遺跡の修復を含め、カンボジアを支援している日本人やＮＧＯは多いようですが、「山本学校」もそのひとつなのでしょうか。　ここに学んだおかげで、ガイドとして働くことができている、だから日本人、「山本学校」には、とても感謝している、ということでした。　ただ、ガイドの給料は日払いで、生活は楽ではないようでした。　どうもカンボジアでは、「仕事」らしい仕事があまりないよです。産業がない、働くところがない。　シェムリアップでガイドができるのは、この国ではかなりいい方なのかもしれません。　　彼からきいた故郷の村のはなしは、映画化されて話題になった、梁石日のベストセラー「闇の子供たち」を思い出させました。　貧しい山村で起きる、幼児の人身売買（バンコクに連れてこられて幼児性愛者の犠牲になる）話ですが、そんな環境なら、なるほどそんなことがあっても不思議はないかもしれない、という気がしたのです。　遺跡も含め、ほんのわずかながら、見聞きすると、この国の現状は「たいへんだなあ」と思わないではいられません。　遺跡の荒れ方もそうですし、シェムリアップの街も、立派なものも含めてホテルが建ち並んではいますが、全体としては荒れている、という印象です。　道路の舗装も一部で、あちこちから砂埃があがっていますし、道端はごみだらけ、ちょっとぶらぶら歩こう、という気分にはあまりなれません。　同じ観光地でも、ハロン湾のほうがずっと整っていましたし、ハノイも汚かったですが、活力は感じました。（まあ町としては、規模、役割（ハノイは首都、シェムリアップは観光拠点）ともに違うので、比較するのは適切ではありませんが）。　経済問題のせいで、観光客が減っている弊害も、多少はあるようです。　　タイとの国境付近では、２００８年に世界遺産に指定された遺跡「プリア・ヴィヘア」をめぐって武力衝突も起きています。　内戦が終結したのはいちおう１０年ほど前のはずなのですが、傷跡はまだ深いようです。　とくにポル・ポト時代には、知識層も根こそぎやられてしまって、復興のための人材が払底してしまいました。　遺跡の修復も、外国人主導なのは、そんな事情もあるようです。　戦争は、すべてを停滞させてしまうのだ、と、改めて感じたことでした。　写真は、巨木に押しつぶされそうな遺跡、「タ・プローム」。

  March 31, 2009

• 女神さまの舞

  　昨夜、ハノイから、アンコール遺跡の拠点の町、シェムリアップへ移動。　今日からいよいよアンコールめぐりです。　　昨夜、飛行機をおりると、ねっとりした南国の大気につつまれました。　熱帯の花の匂いを閉じこめた夜気に、南へ来た、と実感。ハノイよりかなり「南方」を感じます。　今日から遺跡を案内してくれるのは、日本語を話す現地のガイドさん。男性ですが、年齢は２０代にも３０代にも見えます。一般にヴェトナム、カンボジアのひとは、若く見えるような気が。（個人的には、岩井志麻子女史の気持ちはよく分かりません。。。。。）　　午前中はアンコール・トム、午後はアンコール・ワットと、アンコール遺跡の二大ハイライトをめぐりました。覚悟していたとはいえ、昼近くにはかなり暑くなり、顎を出していましたが、昼食後はホテルで休憩時間を取ってくれたので、かなり楽に回ることができました。　ガイドさんの話しによれば、東京23区くらいの面積に、７００！箇所の遺跡が残っているそう。9世紀から14世紀にかけ、この地方を支配していたクメール王国の名残です。すごいものを造ったものだと、改めて思います。　「アンコール・トム」は、１２世紀末、王国の最盛期に、国王ジャヤヴァルマン7世によって建てられた都。巨大な観世音菩薩の顔が彫られた塔がならぶ、仏教の「バイヨン」寺院で有名です。　ちなみに、残っている遺跡はみな寺院のたぐいで、王宮など住居の部分は木で建てられたために、残っていないとききました。　観音の顔の塔も、回廊に彫られたさまざまなレリーフ~戦争や日々の暮らしがおもな題材～も迫力でしたが、回廊部分の屋根はほとんどなく、遺跡というよりやや「廃墟」に近い印象。　アンコールの都は、１５世紀、シャムの侵攻のために放棄されてしまい、その後は遷都もあったものの、密林のなかにほぼ放置され、　仏教寺院として、周辺の人たちが訪れる程度だったといいます。　熱帯の密林は植物の繁殖が激しく、なかでも「スポアン」という巨樹は、蛇のように寺院にまきついて、石材の隙間に入り込んでしまうので、荒廃が早く進んだようでした。　午後訪れたアンコール・ワット（１２世紀初め）は、遺跡群のなかではだんとつに保存状態がいいようで、回廊の屋根も保たれているし（修復されているのでしょうが）、周囲もきれいに整備されていて、聖地見学、の気分に浸ることができました。　パイナップル型の塔が５つ並んだ姿を遠望したり、　あるいは寺院手前の聖池から、池に影を落とす塔影を眺めていると、本当に見飽きません。　レリーフは神話が多く（ここはヒンズー教の寺院兼墳墓として建てられたそう）、アンコール・トムの肉厚のそれに比べて肉薄で、リズミカルな感じがしました。　　ふたつの遺跡とも、レリーフは精緻でありながら生き生きとし、躍動感にあふれ、クメール芸術のレベルの高さを感じます。　さりげなく触れた柱などにも、細かい浮き彫りが一面にされていて、感服してしまいました。　もうひとつ面白かったのは、ヒンズー教と仏教が混在していることで、仏教のお寺といってもヒンズー教の神さまが彫られていたり。　考えてみれば、ヒンズー教出自の仏教の仏さまも多く（阿修羅、毘沙門天・・・）、ヒンズー教からみたら、仏教はヒンズー教の後継の一派、くらいの感覚かもしれません。ちょうど、ユダヤ教とキリスト教の関係のように・・・　一方で、宗教戦争があった時代もあり、その頃に、仏像が削り取られてしまったケースもあるそうで、首のない仏像、回りのレリーフだけあって中身のない仏像跡、も散見されました。　そのなかには、いわゆる「盗掘」もかなりあるようですが・・・（仏像の首だけ盗み出すケースも多いよう。こっそり仏さまの首を切り落としている光景なんて、想像するだにげんなりです・・・）　　なかでも印象的だったのは、あちこちに彫られた「女神さま」（デヴァターと呼ばれる）の像。　柱のかげ、壁ぎわ、あるいは壁一面、ありとあらゆるところで女神さまがほほえんでいるのでした。　ひとつひとつ表情が違うので、いくつ見ても飽きません。　また、一列にならんで手足を一斉に動かしている「アプサラ」という女神像もあり、こちらはまさに踊っているところの描写だそうです。　リズミカルな動きが波のように連なる光景は、まさに圧巻でした。　アンコール遺跡を「再発見」したヨーロッパ人たちが、その美術に圧倒され、宗教的にはまったく無縁なこともあって、この遺跡を美術品としてだけ見つづけた、その理由も、このレベルの高さを見れば分かるような気がしたのでした。　写真は、女神さまではありませんが、「アンコール・トム」内のバイヨン寺院。これは三島の「らい王のテラス」の主人公、ジャヤバルマン7世が、建築に執念を燃やしたことになっている寺院です。

  March 30, 2009

• ハノイ散歩

  　旅もあっという間に3日目。今日の午後にはハノイから、アンコール遺跡の基地、カンボジアのシェムリアップへ移動です。　午前中はフリータイムで、旅行社には「市内観光」のオプショナルツアーを勧められたのですが、８時半に出発してホーチミン廟を観る気にもなれず、2時間ばかりタクシーをチャーターして、自分たちの見たいところを回ることにしました。連れ合いと2人で観光に参加するより、安上がりでしたし。　　観光の中心は、宗派の異なる３つの建物。仏教のお寺、儒教の孔子廟、カトリックの大教会、です。　　話にはきいていましたが、ハノイの街中はバイクの洪水。一昔前、よくテレビでみた北京の自転車のようです。理由はかんたんで、ふつうのひとはなかなか車には手が出ないからバイクで間に合わせる、ということ。　してみると、北京の自転車はバイクの前段階だったのでしょうか。　最初に訪れたのは、古い仏教寺院だという一柱寺。寺院というより小さなお堂で、池のなかに突っ立った階段の上にちんまりとあります。線香の香りのたちこめる堂内には、金色の仏様がありました。ヴェトナムは仏教が8割とか。（いちおう）共産主義でも、宗教は規制していないようです。　このお寺は、ホルマリン漬けのホーチミンの遺体がまつられているというホーチミン廟、彼の住まい、博物館など、ホーチミン関連の建物の連なる一角にありましたが、憂鬱な灰色をした四角四面の「廟」など、いかにも退屈な共産主義的建造物で、人間的なハノイの街からは浮き上がった光景を呈していました。「廟」をぐるりと囲む大行列に、お仕着せの観光をパスして正解、の気分。　建築として面白かったのは、次に訪れた孔子廟（文廟）。孔子さまを祀った廟ですが、同時にヴェトナム最古の大学（11世紀）があったところだそうで、広い敷地に、お寺を思わせる建物が並んでいました。　１５世紀から行われた、科挙（ヴェトナムは長い間、中国の一部だったよう）試験の合格者名を刻んだ石碑なども興味深く、「学問」の聖地であることを実感できました。　最後に見た大教会は、ヴェトナムに１割いるというカトリックの教会。宗主国のフランスがカトリックだったせいで、キリスト教といえばカトリックなようです。　日曜日だったこともあり、ちょうど礼拝が行われていましたが、神父さまの言葉はフランス語でした。　そのほか、ホーチミン廟の近くには、クリーム色に塗られた宮殿のように立派なオペラハウスもありましたが、あまりオペラはやっていないような様子。 そんなこんなで、色んな要素がちょっとずつ残っている町、という印象のハノイ。　社会主義の国の首都とはいえ、これまで体験した東欧の国（共産主義時代）に比べると風通しがいいような気がするのは、「ドイモイ」政策によって経済が開放されているせいもあるのでしょうが、その前から、締め付けがきびしくなかったのではないか、と思われました。　　短い観光の終わりには、タクシーのドライバーさんと一緒に、路上でお茶。　こちらのひとは、お風呂の椅子をさらに小さくしたようなプラスチックの椅子を歩道に出し、そこに腰かけてお茶を飲んだりしているのですが、ドライバーさんが招んでくれて、お茶の接待にあずかることができました。　ちんまりとした椅子からの、低い目線で眺めた街は、また違った味わいがあり、風景の色がちょっぴり変わって見えたのでした。　写真は、孔子廟の門です。

  March 29, 2009

• ハロン湾、自然の造形美

  　昨夜遅く、ヴェトナムの首都、ハノイに到着。　空気は湿っぽくて、アジア、を感じますが、気候は予想していたより過ごしやすく、楽です。やはり北なので、わりと温暖なのでしょうか。　　昨日は市内のホテルに一泊し、今日は一日がかりで、世界遺産に指定されている「ハロン湾」へ出かけました。　「海の桂林」と呼ばれる、景観美を誇る湾です。ヴェトナムでおそらく一番人気のある観光地、なのではないでしょうか。　問題は距離で、ハノイから１７０キロ。高速道路のない箇所もあり、片道およそ3時間半。湾のクルーズは3時間くらいですから、観光の倍以上の時間を、車のなかでゆられながら過ごすことになりました。　青々とした水田をはじめ、ヴェトナムの田舎の風景が見られたのは、それなりに面白かったですけれど。　　ハロン湾の船着場は、観光客でいっぱいでした。どれもこれも似たような観光船がぎっしり停泊しており、ガイドさんを見失わないようにしないと、迷ってしまいそうです。　それでも、漕ぎ出してしまうと、あたりは広々。薄緑がかった水の色、次々と現れる奇岩と、景観を満喫できました。　途中で水上マーケットのようなところに寄り、海のなかの生簀で飼っているさまざまな魚介類を見せてもらうこともできました。　初めてまじまじと見たのが、カブトガニ。　日本では高級魚の「クエ」も、わんさと泳いでいました。　ちなみに、ここの魚介類は売り物で、買うと船のなかで調理してくれるそう。カブトガニに挑戦してもよかったのですが、それまでに海鮮料理のランチでかなりお腹がいっぱいになっていたので、断念。　ランチはまずまずでしたが、ガイドさんのすすめたヴェトナムワインはいただけませんでした。海水の味がした、のは思い込みでしょうか？？？　夜は、ヴェトナム名物の「水上人形劇場」を観るオプションナルツアーへ。市内のレストランで夕食を取ったのち（映画「愛人」に出てきたような、植民地時代を思わせる雰囲気のお店）、中心部にある小さな劇場で観劇。舞台はその名の通り水が張られた池のようなもので、民族音楽の伴奏にのって、竜やら天女やら蛇やらをかたどった人形たちが、水上で踊ります。人形を操るのは、池の後ろのカーテンの陰に隠れた人形使い。終演後に姿を見せましたが、人形と同じように、水につかって操るのでした。　連れ合いは、音楽が「日本の民族音楽に似ている」と感心しきり。私はといえば、蛇も竜も水の生き物、この国と「水」とのつながりの深さに、思いが行っていたのでした。

  March 28, 2009

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  クラシックホテルの愉しみ～久しぶりの奈良ホテル

  　旅フリークであることは自他ともに認めるところと思いますが、オペラ&音楽目的のヨーロッパばかりでなく、国内の旅も好きです。　学生時代は、よく奈良へ行っていました。古いもの、歴史のあるものが好きで、仏像やお寺を観にいっていたのです。　京都より奈良のほうが好きだったのは、京都はどちらかというと仏像より「庭」がメイン。奈良は建築や仏像がメインだったからだと思います。　町が小さくて歩きやすく、人ごみが少ないのも魅力でした。　けれどある時ふと、「当分いいや」という気分になりました。　「こういうところは、それなりの年齢になり、のんびりしたくなったら来ればいい」と思ったのです。　そして、ふっつり行かなくなりました。　それから大分時間がたち、「それなりの年齢」にはまだまだ間があると思っているのですが、ふと思いついて、奈良を再訪することにしました。　例のびわ湖のオペラ講座の帰りを利用しての、1泊だけの旅です。　　目的ははっきりしており、室生寺金堂の仏像が、2月中は至近で見られると、ある雑誌に出ていたからです。　大和平野から東へ向かう山中にある室生寺は、大好きなお寺のひとつ。とくに金堂にある十一面観音は、入江泰吉さんの写真で出会って憧れ、ずい分通いました。　生身の女性のような匂やかなお顔、流れるような裳裾、なんとも人間的な仏さまでした。　その仏さまを間近で見られるというので、飛んでいったのです。　宿を取ったのは、奈良ホテル。　ここも、はるか昔に泊まったきりでした。　いわゆるクラシックホテルですが、ここの素晴らしさはロケーションです。　庭先は奈良公園につながり、公園までもが庭のよう。視線をちょっと上にあげれば、若草山のなだらかな稜線。　館内の窓からも、コーヒーラウンジからも、眺めが楽しめる立地なのです。　　１００年を数える建築も、もちろん見もの。　とくにきれいだな、と思ったのは、梁や柱に使われた杉でした。　割れ目も傷もなく、しっかりした建築なのだろうと想像させます。耐震偽装問題など起こる昨今とは、時代が違ったのでしょう。　　朝食は、名物の茶粥。ほうじ茶で炊かれているのですが、今回気づいたのは、とても温まる食べ物だ、ということでした。　奈良は寒い土地なので、昔のひとの知恵なのでしょうね。　こういうホテルでは、時間がゆっくり流れます。何もしないで、コーヒーラウンジからぼんやり、庭と、その先に広がる奈良の風景を眺めているだけで、来たかいがあった、と思えたのでした。　旧館のバスルームの狭さだけは、何とかしていただきたいものですが・・・ 　上の写真は、室生寺の金堂。このなかが、仏さまの世界です。十一面観音をはじめ、釈迦如来（以上2点は国宝）、今にも動き始めそうに活動的な小さめの十二神将など。浄土のよう？　 下の写真は、庭から見た奈良ホテルの建物の一部。古都にふさわしい佇まいです。

  February 16, 2009

• 旅のドレスコード

  　今日は帰国後初のオペラ、新国立劇場の「蝶々夫人」に行きました。　栗山民也氏のプロダクションの、たしか3度目の再演です。　日米「異文化の衝突」を前面に押し出した舞台ですが、そう嫌いではありません。　カルロ・モンタナーロの、めりはりをつけつつ歌心のある、つまりとても分かりやすい指揮、蝶々さんを歌ったアルメニア人ソプラノ、ババジャニアンの豊かな声とたしかな技術、そして表情たっぷりでありつつ過剰にならない演技力など、まずまずの水準の舞台だったと思います。　とくにモンタナーロは、このオペラが好きなのだな、と思わせられる没入ぶりを感じさせてくれました。　　さて、帰国して思ったのは、日本（東京）では、オペラへ行くドレスコードが発達？しづらい環境にある、ということでした。　旅先では、劇場に近い宿を取ることもあり、そして何よりそれが最大の目当てで旅をしていることもあり、出かける前にホテルで着替えて、そのまま劇場に直行することができます。　それに引き換え日本にいると、劇場に直行するなどまれなこと。たいがいはその前に仕事やら打ち合わせやらであちこちに立ち寄り、荷物をかつぎながら行くことになります。当然、できるおしゃれなど限られてしまうわけです。　また、家路の遠さ煩わしさは、多くの方が実感しているところでしょう。満員電車に長時間ゆられれば余韻など醒めてしまいますし、またその状況下で、きれいなドレスを着る気にもなれません。たかだが３０分やそこらで帰宅できるヨーロッパ人とは、条件が違いすぎるのですね。　劇場から徒歩数分。それがいかに極楽であったか、古ぼけたワンピースを引っ張り出しながら思ったのでした。 

  January 21, 2009

• 旅の宿

  　何度旅をしても、宿は本当に難しいものです。また泊りたい、という宿にめぐり合えることは、めったにありません。たとえば昨年、自腹で泊ったホテルのなかで、次もここに泊りたいと思ったのは、エクサンプロヴァンスの「セザンヌ」くらいでしょうか。 もちろん予算にもよりますが、高いお金を出したからといって、必ず満足できるとは限らないのも微妙なところ。コンサートやオペラと同じですね。 それはそれとして、単独でオペラ、コンサートを目的に旅をする場合、まず優先するのは立地です。なるべく会場に近いところ、できれば会場から数百メートル、徒歩5分くらいまでの範囲で探します。何より、夜道を歩いて帰るのは嫌だからです。逆に、1キロ近く離れたところしか見つからなかったら、タクシーで帰ることを前提に、距離をこだわらずに探します。 今回はいずれも、劇場に近いところが取れました。ミラノはスカラ座から３００メートルくらい、徒歩４，５分のところにあるプライベートルーム？のような宿。いつも使う宿泊予約サイトで探したのですが、近いのに加え、写真で見る限り部屋も清潔そうで、そこそこ広さもありそうだったのでした。「２部屋」しかない、というのがちょっと気になりましたが、ネットも使えそうだし朝食も別料金だけれどできるというし、まあ上等なペンションみたいなものかなあ、と勝手に想像していたのです。　ちょっと外れました。　 2部屋しかない、のはそのとおりなのですが、ペンションというより貸し部屋。困るのは、フ ロントというものがないのです。もちろん到着したときは、持ち主？が一通りのことを案内してくれ、何かあったときの連絡先も教えてはくれたのですが。それでも、フロント＝人気がないのは、何となく落ち着かないものです。ネットもつながらず、朝食もなし。やっぱり、２度目はなさそうなのでした。 チューリッヒでは、オペラハウスのすぐ裏の小さな宿。初めてだと思い込んでいたのですが、入り口にたどりついて「泊まったことがある」と気づきました。フロントのお姉さんにも、「来たことあるわね」といわれる始末。本人が忘れているのだから、話になりません。ここは部屋自体はまずまずで、バスタブはなくシャワーしかついていないのですが、スイスらしく機能的で、備品もそこそこ揃っていました。ただ、やっぱりネットはつながらない。いまどき、ちょっと気の利いたホテルなら、swisscomのような無線LANサービスと契約しているのですが。 どちらのホテルも、日本円にして１万円台後半。東京のビジネスホテルのほうが、よほど安い（コストパフォーマンスがいい）、と思います。東京が世界で一番ホテル代が高いといわれた時代なんて、はるか昔になってしまいました。 コストパフォーマンスと居心地のいいホテル探し、どうやら終わりはなさそうです。 写真は、チューリヒのホテルの近く、つまりオペラハウスの近くで見かけたベンチ。ワーグナーやヴェルディが描いてあり、さすがチューリヒ、と思わされたしゃれたベンチでした。  

  January 19, 2009

• 魅惑のバス～初海外の最大の目的

  　今日（14日）から、今年初めての海外へ出ます。　目的は、スカラ座とチューリッヒ歌劇場。　ぎりぎりになって、行くことに決めたのですが、幸いチケット、飛行機ともに取れました。5泊7日、私としては短い、強行軍です。（まだ大学が残っているので・・・）　また、厳寒、というのも気になるのですが。ふだんは買わないホカロンを買い込みました。　スカラ座の目的は、もちろん「ドン・カルロ」。シーズンの開幕の演目で、今年の９月の来日公演に持ってくる予定のプロダクションです。　まあ、旅の第一の目玉は、やはりこれでしょうか。行かなきゃなあ、と思っていました。　けれど、それだけではお金と時間をかけてまで、とは思わなかったのですが、チューリッヒの演目をみて、目がくらみました。　まず、バルトリの出るヘンデル「セメレ」。昨秋、日本で聞き逃したバルトリ、しかも、恥ずかしながら彼女をオペラ全曲で聴いたことはなかったのです。　　指揮はウィリアム・クリスティ。これもとても魅力的で。再演ではあるももの、観たい、と思いました。　けれど最大の理由は、大好きなバス、ロベルト・スカンディウッツィの出る「シモン・ボツカネグラ」です（新制作）。　ノーブルでありながら暖かみのある声を持った、北イタリア出身のスカンディウッツィは、この「シモン」のフィエスコ役で認められ、世界的な名声を築きました。　日本では、若いころ、たしかサントリーのホールオペラか何かでこの役を歌いました（ブルゾンと共演）。その後、新国の「ドン・カルロ」でフィリッポ2世を歌ったときは、まったく、しびれました（２０００年のプロダクション。最近のプロダクションではありません）。バスの究極でもあるこの役では、フルラネットと並んで最高峰ではないでしょうか。　けれど、「シモン」のフィエスコも本当に最高です。私は彼のフィエスコを追っかけて、アムスやパルマに行ったことがありますが、がっかりしたことがありません。いつも、まいってしまいます。　どうも、テノールより、バスやバリトンの方が好みなのですね。まあ、ヴェルディが好きだと必然的にそうなる面もあるのですが・・・ドラマティックでしかも格調高いバスやバリトンくらい、好きな声はありません。　ちなみに「シモン」のタイトルロールは、レオ・ヌッチ。これまた魅力的、なのです。　　というわけで、観る予定にしている３つのうち、おそらく一番地味なプロダクションが、一番楽しみなのでした。　スカンディウッツィの公式サイトはこちら。ユーチューブでビデオが観られるページもあります。残念ながらフィエスコのビデオはないですが、ドミンゴ、ヴォイトと共演した「エルナーニ」三重唱（メトのガラコンサート）なんていうのも楽しめます。http://www.robertoscandiuzzi.com/  

  January 14, 2009

• 猛省

  　１年の疲れを取りに？西伊豆の温泉にやってきました。　お天気は最高、でも海は大荒れ。　沼津からの船は出ず、代替のタクシーで陸路で到着。　強風で、露天風呂に入るのも大変でしたが、その代わり空気の澄んでいることは最高！　朝、「お風呂やの壁絵のモデルになった」港と富士山が、それはそれはきれいでした。　　ところで、今回の旅で夢見ていたのは、お風呂のあとのマッサージ。　念願かなって、マッサージ師さんにきてもらうことができましたが、あまりの凝り方に呆れられ、　「疲れると腰が張るんです」と言ったら、　「腰に筋肉がないからですよ」　と一蹴されました。　「運動してください、運動」　猛省。

  December 26, 2008

• ツアーの「たからもの」

  　先週末、いつもツアーでお世話になっている、添乗員さんの結婚披露パーティに招かれた。　とても優秀で、しかもいつも笑顔を絶やさず、また音楽も大好きという、理想的な添乗員さん。　以前から「結婚したい」と言っていたので、素敵なご主人と出会えて、本当に幸せそうだった。　　ところで、終わりの本人の挨拶で、出席者が涙を誘われたのが、彼女が「たからもの」の箱の中に入れているという、お母さまのお手紙の朗読。　彼女が中学校に入ったときの、お母さまからのお手紙なのだそうだが、本当に愛情のこもったもので、思わずじんとさせられた。　いいご家庭で、愛されて育ったのですね。　そういえば私は、そのような「たからもの」は集めてこなかったな（母がなくなった後で出てきた、メモ帳のようなものはとってあるが）、と思ったけれど、今日、ああこれは私の「たからもの」だなあ、という集まりがあった。　「バッハへの旅」幹事の集まりである。　バッハの暮らした街を訪ねて、現地でバッハの音楽を聴く「バッハへの旅」は、私の音楽の旅第一号で、おかげさまでいまだに続いている。　回数も、１５回を越えた。　そのまま解散ではもったいないので、各回ごとに「幹事」（連絡役）の方をお願いして、１年か２年に一度、同窓会をやっているのである。　　「同窓会」を始めたきっかけは、ご参加者のバッハへの思いいれを知ったこと。　とくに２００年３月の第１回は、４１人という人数が集まり、戦前生まれのピアノの先生の、「「平均律」の楽譜を抱えて防空壕に入った」という話など、熱いお話をたくさんうかがった。　このままではもったいないと、メンバーのご協力を仰いで「文集」を作り、それを渡すのをかねて「同窓会」を開き、とやっていうちに、ツアー全体の同窓会へと発展したのだ。　「文集」のほうは、今では毎回作ることはないが、「同窓会通信」という新聞様のものを発行している。（これもボランティアでやってくださる方があり、頭が下がるばかり。）　今回は、来年の「同窓会」の相談をかね、幹事さん全員と、旅行会社の担当者が出席した。　あちこちのコンサートやらで顔をあわせることもあり、みなさんすっかり顔なじみで、話が弾む。　重い話は一切なし、おいしいお酒と楽しい会話で、あっという間に真夜中近くなったのでした。　これが、私の「たからもの」です。　みなさんのご協力で続けていられることに、心より感謝。　 

  December 19, 2008

• 航空会社がおかしい！

  　ヴェルディツアーも今日で終わり。ヴェネツィアを早朝に出て、船でヴェネツィアの空港へ。今回はエールフランスなので、パリで乗り継ぎである。　これまでなら、パルマやヴェネツィアへ行くなら、アリタリアでミラノへ飛んでいたのだが、なんとアリタリアは経営破綻で、ミラノ直行便がなくなってしまった。だから往路も、パリで乗り継いでミラノという、まあ近ごろなかったルートだったのである。　ところが、６月のツアーに続き、またしても乗り継ぎの飛行機に乗り遅れてしまった。　前回は天候不順で、最初の飛行機が遅れたせいなのだけれど、今回は最初の飛行機も順調、乗り換え時間もちゃんとあり、普通なら絶対に乗り遅れることはない状況だったのである。　問題は、パリの空港で起こった。パスポートチェックを済ませ、セキュリティ検査へ。ところがこれがすごく込んでいる。列が少ないうえに、全然動かないのだ。　最初は大丈夫だろうとたかをくくっていた。だが時間が過ぎるばかりなので、添乗員さんが何度か、セキュリティの係員のところへ交渉に行った。けれど「まだ大丈夫」といって、がんとして受け付けない。　最後は、ビジネスクラスのお客様だけ、速いレーンに入れてもらったのだが・・・ ようやく検査が終わったのが、定刻の５分過ぎくらい。ビジネスクラスのお客様は、１０分くらい早く終わったようだったので、同じグループの私たちも待っていてくれるだろうと踏んでいた。だってセキュリティも「大丈夫」だと言っていたのだし・・・。第一、１０分や１５分なら待つのが普通なのだから・・・　ところが、ゲートについたら、閉まっているではないか！　係員に尋ねたら、「時間だから出た」と冷たい返事。　次の便は（ほかにもあるのだが、私たちが乗れるのは）１０時間後！だという。　あまりのことに唖然、茫然。添乗員さんがエールフランスのカウンターで交渉したが、「セキュリティが悪い、自分たちには責任がない」という（フランス的官僚主義！）「それより早く手続きしないと、１０時間後の便にも乗れない」と言い出す始末。　どこか、なんか、おかしいじゃない？　結局、次の便はとれたものの、高齢者の多いお客様を長時間待たせるわけにもいかず、旅行社の負担で、数時間、空港近辺のホテルを取った。　日本についたのは、予定よりおよそ１１時間後だった・・・　あとできいた話だが、当初の飛行機は、乗り遅れた私たちの荷物をまた取り出すために、なんと１時間以上よけいに止まっていたそうだ。　なら、乗せてくれたほうが、よほどロスがないと思うのだが・・・　添乗員さんの話によれば、定刻に出発する傾向が強くなっているのは、空港に止まっているとそれだけ料金を取られるからだという。けれど、上のようなことをしていれば、乗り遅れたお客を拾ったって料金は変わらない。　６月のトラブルの時はルフトハンザだったが、その時も感じたが、航空会社に余裕がなくなっている感じがする。お客のためなんて、考えていないような・・・　ビジネスクラスのお客様が事態に気づいたのは、成田に着いてから、だったようです。

  October 21, 2008

• バッハツアーの夢ホテル

  　ツアーで使うホテルは、かなり限られるのが常だ。　グレード（最低でも５つ星に分けられた中の４つ星）や立地（町の中心に歩いていける至便さ）はもちろんだが、ツアーメンバーすべてに、広さや設備が平等に揃うホテルということで考えると、高層ビル仕様のモダンなホテルが無難、という結論になってしまう。　　そんなわけで、ツアーで使うホテルは、個人旅行で自腹を払って泊りたい、というようなホテルにはあまりならないのだが、バッハツアーで唯一、自腹で泊りたい気分になるホテルが、北ドイツのリューネブルクにある。　　運河のほとりに建つ、「ベルクシュトレーム」というホテルだ。　リューネブルクは、バッハが１０代の後半に、いわば留学生活を送った町。塩分の濃い地下水から取れる塩の産地として栄え、ルネッサンス様式のファサードを持つ立派な市庁舎や、商人たちの建てた木組みの家々がつらなる、美しい町だ。　北ドイツならではのレンガの教会も多く、ぶらぶら歩きにはもってこいの町である。　以前は、北ドイツを回るバッハツアーでは、後半のライプツィヒ行きの電車に乗るため、ハノーバーに泊っていた。けれどハノーバーは味もそっけもない町で、観光もしない。なんだかつまらないな、と思っていたら、下見にふらふら来たリューネブルクの町で、「ベルクシュトレーム」を見つけた。　「あそこに泊りたい！」と旅行社にお願いして、無事？ツアーに組み込んでもらうことができたのだった。　このホテルの魅力は、まずロケーション。運河のほとりにあって周囲の雰囲気がいい上に、町の中心へも５－１０分で出られる便利な場所でもある。　外観も、この町らしい、レンガの壁に木組みを渡した建物で、周りの風景にとけこんでいる。　リューネブルクに泊っているんだ、という気分に、たっぷり浸れるのである。　　部屋は、棟がいくつも分かれているため、多少大きさや眺望にばらつきがあるのが難点だが、清潔で、居心地がいい。　　今回私は、屋根裏部屋に泊ったが、梁の突き出た天井などやや圧迫感があったものの、眺望はとてもよく、教会の高い塔が望めた。　朝は、あちこちから聞こえて来る教会の鐘の音で目がさめる。古いヨーロッパの町らしい、風情が楽しめるのである。　レストランもおいしいが、とくにワインレストランには、素晴らしいワインの品揃えがあった。　オーダーを間違えて（？）どの料理も人数分きてしまい、量の多さに往生したけれど、今が旬のきのこ、「Ｐｆｅｆｆｅｒｌｉｎｇｅ」をはじめ、素材の味を生かした料理が堪能できたのだった。　リューネブルク「ベルクシュトレーム」、お勧めです。　（写真は運河に面したホテルの一角）

  September 3, 2008

• ツェレのお城で階級社会

  　北ドイツのバッハゆかりの地をめぐり、ケーテンのバッハフェスティバルに行く今回の旅。北ドイツの小さな町めぐりも楽しいが、そのハイライトのひとつが、ツェレという町である。　ツェレは、「北ドイツの真珠」とも呼ばれる小都市で、観光スポットとしても有名。その理由は、旧市街に４５０軒からあるという、ドイツ特有の木組みの家だ。　戦災を逃れたので、もっとも古くて１６世紀から１９世紀までの木組みの家が、そのまま残っている。ドイツらしく、メンテナンスも完璧で、美しいたたずまいが満喫できる魅力的な町だ。　観光のハイライトは、町の北側に建つお城。１４世紀に建て始められ、１７世紀、バロック時代に現在の形になったという城館である。　この町は以前、数百年にわたって、ブラウンシュヴァイク＝リューネブルク公爵の宮廷があったそうで、お城も代々の公爵の居城だった。　内部は大半がバロック様式で、イタリアの建築家による彫刻のある天井など、なかなかに豪華である。　見学にあたってはガイドさんをお願いしたが、現れたガイドさんは博士号のあるインテリ女性で、ていねいにまたわかりやすい説明をしてくれた。　興味深かったのは、ヴェルサイユにならって造られたという、謁見の間。　１７世紀、太陽王ルイ１４世のヴェルサイユにあこがれた各地の領主たちは、ヴェルサイユと同じ、控えの間、謁見の間、そして寝室をかねた謁見の間、という３部屋からなる謁見の間を造らせた。　領主のような、もっとも身分の高い階級しか入れなかったという、寝室をかねた謁見の間も面白かったが、玉座のある一般的な謁見の間で興味深かったのは、展示されていた３種類の椅子である。　置かれていた椅子は、背もたれのないスツール、背もたれつきの椅子、そして背もたれと肘掛つきの椅子の３種類。　ガイドさんの話によると、謁見者の身分によって、座る椅子が決められていたのだという。　決めるのは謁見する側なのだが、時々、謁見するほうが、想像していたものと違う椅子を与えられ、ショックを受けたという記録が、のこっているそうだ。　ヨーロッパを旅していて、日本との違いをしみじみ感じるのが、この階級という存在である。　１９世紀に確立した「国」という単位より、階級による断層のほうが、はるかに大きいように感じるのだ。　結婚にしても、君主間の政略結婚のように、階級によって決まることが一般的だったわけで、国境をこえた、王家、つまり支配階級同士のつながりのほうが、いまだに強いように感じてしまう。　それはともあれ、椅子まで階級社会とは、とあきれていたら、　「日本の会社と同じですよ。役職によってデスクの椅子が変わるんだから」　ツアーご参加のお客様に言われました。なるほど・・・。 写真は、木組みの家がかわいいツェレの街並みです。

  September 2, 2008

• ５つ星ホテルで扇風機

  　イギリスから始まった旅、次の目的地はドイツである。　北ドイツのバッハゆかりの地を回り、ケーテンのバッハフェスティバルを聴く「続バッハへの旅」というツアーが、スタートしたのだ。　グラインドボーン音楽祭から一夜明け、ブライトンからロンドン経由でハンブルクへ。ここで、ツアーの一行と合流した。　宿は、アルスター湖畔の某有名ホテルである。　実はこのホテル、以前一度自腹で泊り、重厚な外観と部屋の設備との落差に、戸惑った経験がある。　コストパフォーマンスも良好とはいえず、有名なわりに？？？だったのでした。　歴史のある建物なので、ロビーなどの公共部分は調度も重厚で、高級感たっぷり。部屋もこうだといいのだけれど・・・・　部屋は悪くなかった。天井も高く、そこそこの広さがあり、中庭に面したベランダがある。　だが、しかし、ないものが多いのだ。　このクラスのホテルならまず備え付けてあるスリッパ、ボディローションなど、細かいアメニティも不足していたのだが、一番まいったのは、エアコンがないことだった。　朝夕は涼しい快適な気候とはいえ、やはり日差しの強い昼間はそれなりに暑く、ホテルの部屋などは締め切っていたのでよけい暑いのである。　冷涼な気候だといわれるドイツだが、やはりここ１０年、２０年くらいはかなり暑くなっているので、高級ホテルはたいていエアコンがつくようになっている。　　フロントに問い合わせると、「その部屋は冷房がついていない」という。　代わりに、扇風機を提供する、ときた。　とりあえずもってきてもらったのだが、これがとんだ代物で、動き出すと同時に工事中のような騒音。とてもじゃないけど、かけていられない。　ハウスキーピングにかけあって、音のしない（！）扇風機に替えてもらったのだった。　それにしても、５つ星ホテルでこんなことって・・・　不思議に思っていたら、添乗員さんいわく、「最近、５つ星をはずされてしまった」。　それで、以前は玄関に張られていた５つ星のプレートも、こっそりはずされてしまったそう。　名誉挽回に期待したいですね。

  September 1, 2008

• 北イタリア、メラーノの夢ホテル

  　ミュンヘンーインスブルックと続けてきた旅、3つ目の目的地のメラーノにやってきた。　日本ではまだまだ知られていないと思うけれど、北イタリア、アルプス地方にある、ヨーロッパ人には有名なリゾートである。　実はここは、ヨーロッパでも一番、といいたくなるくらい、お気に入りの町なのです。　　初めてこの町の存在を知ったのは、ドイツ人から。「アルプスなのに気候がマイルドで、過ごしやす」く、「ドイツ人に人気のあるリゾート」。りんごの木が植わり、すごくきれいな町、ときかされた。　果たしてその通り。ただ、ドイツ人がここを気に入っている大きな理由は、ドイツ語がよく通じることにもあるような気が・・・　なぜイタリアなのにドイツ語が通じるのか、それはここが、第一次世界大戦まで、オーストリア領だったから。それまで「チロル」の一部だったので、現在でも「南チロル」と呼ばれる。　実を言えば私が来るようになったのも、「ドイツ語が通じる」ことにもあった。　メラーノは、イタリアの州でいうと、「トレンティーノ・アルト・アデイジェ州」に属している。州都はボルツアーノ。　このあたり、本当に、通りの名前の表示など、みなドイツ語とイタリア語の併用。ドイツ語のほうが上にかかれていたりする。　この地域で、オーストリア系の家に生まれると、イタリア人なのにイタリア語ができないこともあるようで、以前イタリアにプチ語学留学をしたとき、このへんのイタリア人がイタリア語を習いに来ていたのだった。　町は、標高３２８メートル。周囲を山が取り囲んでいるが、明るくて開放的。りんごやぶどうの畑が山の斜面にあり、地元のりんごジュースやワインが楽しめる。　ここには何回か来たが、とても気に入ったので、今回はだんなを連れてきました。　ホテルは以前も泊った古城ホテル「schloss Labers」。お城といっても昔の狩の館みたいな簡素なものだけれど（一番古い部分は１１世紀！古城には違いない）、ロケーションがおてもいいのだ。山の中腹、町が見渡せるところにあり、朝昼晩の眺望がすばらしい。プールからアルプスが見えるのは、さすがチロル。　　また食事は、天気のいいときは庭のテーブルで取るのだが、ここがまたすばらしい。テラスのようになっていて、山々が一望のもと。とくに夜は、しだいに暮れていき、町に明かりがちらほらともる様子が雰囲気満点だ。　料理も薄味で、自然の材料が使われている印象。もちろん、自家ぶどう園でとれたぶどうで作ったワイン、これも自家りんご園で取れたりんごのジュースも味わえる。りんごジュースは「あく」が沈んでいていかにも自家製。見た目はよろしくないがとても甘い。　　ちょっといい部屋にはベランダがついていて、眺望を独り占めにできるのも嬉しい。　このホテルでは、本当に美しい時間が過ごせる。　たとえば、部屋のなかから窓越しに、ベランダに飛び散る白い陽の光を見ているだけで、とても幸せな気分になれるのです。

  July 24, 2008

• チロルのお城で古楽の愉しみ

  南ドイツのミュンヘンから、オーストリアのインスブルックへ。目的は「古楽音楽祭」。オペラの類は8月だが、７月には郊外のアンブラス城で、お城の広間を利用した古楽コンサートが行われるのだ。　アルプスに囲まれたインスブルックの町外れ、山の中腹に建つアンブラス城は、もともと11世紀の古城だが、１６世紀に現在の姿になった。改築のきっかけは、この地方を支配していたチロルの大公が、愛妻に捧げるためだったという。ロマンチックな？お城なのです。　とはいえ、お城といってもフランスの古城のように優雅なわけではなく、昔の「狩の館」を拡張したような感じの建物。ただこのなかに、内装が木彫の「スペイン広間」という、音響も抜群の大広間（奥行き４３メートル）があり、ここで夏のあいだ、古楽コンサートが開催されている。　開演は通常２０時だが、お城には見晴らしのいい庭園もあり、少し早く行けば散歩が楽しめる。この時期のヨーロッパは昼が長いから、7時8時でもまだまだ明るい。　今回聴いたのは、「Viva Naploi」というタイトルのコンサート。オルランド・ディ・ラッソ、アドリアン・ヴィラールトらによる初期のマドリガーレを中心に、器楽による舞曲の演奏を交えたプログラムだった。　演奏団体は、「Dolche　Memoire」というフランスの古楽団体。　いや、楽しいコンサートでした。　まずメンバーがめちゃうま。声楽は男声アルト、バス、テノール、器楽は管楽器（ツィンク、ファゴット、フルート（＝リコーダー）に、パーカッションとルネッサンス・ギター＆リュートを加えた編成なのだが、各人がソリスト並みにうまいのだ。リズム感抜群、軽快でいきいきしている。芝居っ気もたっぷりで、サービス精神旺盛なことこの上ない。　何より、初期マドリガーレの生き生きした生命力、素朴さ（とくに後期のマドリガーレは、凝ったものが多い）が体験できたのが貴重だった。また器楽舞曲の、声楽曲との同質性もじかに感じられて面白かった。　　器楽舞曲は、器楽作品のごく初期のものだし、対になって演奏される「対舞曲」は、後のバロック時代の「組曲」のさきがけでもある。そういう知識？は、ふだんは本やCDで知るのがせいぜい、実演で体験できる機会はそうない。　同じ旋律を緩ー急に書き分ける「対舞曲」の生演奏は、本当にスリリングで面白かった。　プログラムによるとこの団体は、図書館で資料を発掘し、知られざる曲の復活もたくさん行っているという。「フィリッポ・アザイオーロ」、「ジャン・ドメニコ・ダ・ノーラ」など、知らない作曲家の作品にも出会えた。　日本ではまだまだなじみのないこのような音楽だけれど、体験したらみな面白いと思うのではないだろうか。「アレグロ・ミュージック」あたりが招聘してくれればいいのに？？？　写真は、アンブラス城の外観です。

  July 22, 2008

• エクスで見つけた、お気に入りのホテル

  　何を隠そう（？）私はホテルフリークである（偉そうにスミマセン）。　旅が好きなのは、ホテルに泊る楽しみも大きい。　プライヴェートの旅では、あまり豪華ホテルには縁がないが、居心地のいいプチホテルなど見つけると、とても幸せな気分になる。　今回のエクスでは、とびきりのお気に入りを見つけることができた。　駅前にある、「セザンヌ」というホテルである。　実はこのホテルは初めてではなく、去年来たときにも泊っている。　その時とても気に入ったので、今年も取りたかったのだが、ネットで見た限りでは満室だった。　エクスはとにかくホテルが取れない、ときいていたので、とりあえず別のホテルを取ったのだが（今年の1月）、来る直前にネットを再確認したら、ほかのホテルにも空き室があった。　けっこう、そういうものなのだ。ただ、お目当ての「セザンヌ」はあいかわらず満室だったのだけれど。　結局、最初取ったホテルに泊ったのだが、これが大はずれ。　４つ星のはずなのに、建物は古びていて、部屋は狭く、メンテが悪くて室内灯は電球が切れているし、シャワーもこわれている（直しにきたが）。売りもののベランダにはパラソルがない。セーフティボックスもない。スタッフもそっけなく、「キッチンつき」が売りのはずなのに、スーパーマーケットの場所をきいてもわからないという。　ここに4泊はちょっと、と思い始め、去年泊った「セザンヌ」に飛び込んだら、空き室があったのでした。ホテルもチケットも、現地に来てみたら都合よくいく、というケースはけっこうある。　で、後半の2泊は「セザンヌ」に移った。　去年も思ったけれど、本当にいいホテル。　インテリアも、ロビーを含めて洗練されているし、部屋もとても落ち着ける。白を基調に、ベッドカバーとソファが同じ生地で統一されていたりして、おしゃれ。　おしゃれ心はあちこちにあって、洗面台の水道の蛇口もおしゃれだし、室内のスタンドやデスクランプのシェードも素敵。加えて、便利さ、使い勝手のよさという点でも一流で、広いデスクの前には、いくつものコンセント（コンセントが少ない、あるいは見つけにくいホテルは多い。というかほとんどそう）、ネットは無料のワイヤレスが使い放題、ミニバーのソフトドリンクは飲み放題。朝食時間が12時までというのも気がきいている。泊り客のニーズをよく見越したホテルではないだろうか。今まで、数え切れないくらいのホテルに泊ったけれど、これだけかゆいところに手が届いて、しかも居心地のいいホテルというのはちょっとない。　1泊１５０ユーロ（２６０００円くらい？）は安いとはいえないけれど、前のホテルは１１２ユーロだったから、３８ユーロの違いなら断然こちらを取りたくなる。　　というわけで、ネットが使い放題になったので、いきなりブログを熱心に書いているのでした。今夜は屋内の劇場で、ヘンデルの「ベルシャザール」を聴いてきます。

  July 16, 2008

• 毛布にくるまるエクスの夜

  　またまた、旅に出ている。　「来年のツアーの下見」（下見は自腹です）と称して、エクサンプロヴァンスの音楽祭にやってきたのだ。　　前回の旅から帰って2週間たらずの、あわただしい日程なのだが、音楽祭がこの時期しかやっていないので仕方がない。（ヨーロッパの音楽祭は、7月がハイライトというのも少なくない）　大学は採点の時期なのだが、締め切りぎりぎりまで延ばしてもらって、強引に出てきた。　　　出発前に会ったオペラ仲間の友人に、　「加藤さんの生活って、いったいどうなってるの」　とあきれられてしまった。　それももっともで、ツアーのほかに、下見だの取材だのと称して、通算して年間3ヶ月くらいは、海外にいる計算である。　とくにオペラのツアーの場合、常連の方も多いので、毎年違うところを開拓しなければならないのだ。　とまあ、これは言い訳？ですが・・・（笑）　　　エクサンは去年も来たが、フェスティバルの終わった時期だったので、音楽は空振り。　今回は、公演を3回鑑賞できる日程を組んできた。　チケットがなかなか入手できず、最終的にある方を通じて手配してもらった。Hさん、ありがとうございました。　町としてのエクスはさほど大きくないが、気持ちのいい町。　湧き水の多い土地ということで、町中に噴水があり、また並木が多いのもすがすがしい。　からっとした気候も快い。文字通り「雲ひとつない」青空が広がる。とりたてて観光名所もないのに、ヴァカンス客が多いのも納得、かもしれない。　　面白いのは、虫がいないこと。夜、窓をあけていても、蛾のたぐいが来ないし、水が多いのに蚊もいない。いたって快適である。　　ただ日差しは強く、日焼けがこわいところである。以前も書いたが、ヨーロッパ人はブロンズにやくことがかっこいいので、日傘をさしたり帽子をかぶったりしない。1日歩いていて、帽子をかぶったひとを数人見かけるのがせいぜい（たいていは年配のひと）、日傘は絶対にお目にかからない。日傘は「オールドファッション」だと、あるイタリア人が言っていた。 私はかろうじて帽子でガードしているが、風が強いので実際のところはあまり使い物にならないのです。　　ここのオペラは、大司教館という歴史的な建造物の、中庭が会場。　ごく最近、「プロヴァンス大劇場」という、室内の劇場もできたそうで、ここ数年のハイライトである、ラトル＆ベルリン・フィルの「リング」は、そちらでやっている。　　さて、今回、この中庭で観たのは、モーツァルトの2作。「ツァイーデ」と、「コジ・ファン・トウッテ」である。　「ツァイーデ」は未完のジングシュピール。マンハイム時代の作品とされる。生上演はめったになく、恥ずかしながらこれが初めて。ピーター・セラーズの演出による、ウィーン芸術週間のプロダクションである。　　「ツァイーデ」は、トルコのサルタンと奴隷の話なのだが、セラーズ演出は、これを現代の裁縫工場？にしており、強制的に労働に従事する工員と、工場長の関係の話にしていた。セラーズのことだから、メッセージ性があってのことだろうと思ったら、ロンドンで同じプロダクションのコンサート形式を見た方のブログによると、奴隷制度への反対というメッセージを、セラーズが開演前に長々としゃべっていたとのこと。今回はさすがにその演説はなかった。（http://dognorah.exblog.jp/4107353)　それは別にしても、プロダクションとしてこれが面白いかと言われると、ちょっと首を傾げてしまう。メッセージ性は観ればわかるし、場面転換もまったくなく、楽しませようという意図が感じられない（セラーズにしてみればあたりまえ、といいたいのだろうが）。　プログラムにセラーズのメッセージも載っていたが、何しろフランス語なのでちんぷんかんぷんなのでした。　歌手は揃っていたと思うが、男性ソリストが全部黒人系なのは、どうやらセラーズの意図のよう。イタリア・オペラにアジア系（中国、韓国）や東欧系が進出しているのと同様、フランスでは黒人系の進出めざましいのか、と思ったが、翌日の「コジ・ファン・トウッテ」ではまったくそんなことはなかったので。　うって変わって、新制作の「コジ」はとても楽しめる舞台だった。テヘラン出身のアバス・キアロスタミの演出はごくオーソドックスで、舞台の奥行きのなさを映像で補いつつ、動きも多い舞台で楽しめた。クリストフ・ルセの指揮はかなり古楽的な、ドライな音楽づくりで（オーケストラはカメラータ・ザルツブルク）、会場がデッドなこともあって、物足りない感じもあったけれど、歌手との息はあっていたように思う。　若手中心の歌手のなかでは、フィオルディリージを歌ったSofia Solovy、デスピーナを歌ったJudith van Wanroji,グリエルモを歌ったEdwin Crossley=Mercer などが印象に残った。デスピーナ役のWanrojiは、声量もあり、スーブレットという感じではないけれど、いろいろな役が歌える幅のある歌手のように思う。　ところで、この会場でちょっと参ったのは、寒さ。　何しろ開演が10時（ツァイーデ）、９時半（コジ）。終演は1時近く。なんだか、終演から逆算して開演時間を設定している気がした。　昼間も、日差しが強いとはいえさわやかだから、夜中の寒さはなかなか。　ヴェローナのようにざぶとん貸しは来ないのかな、とおもっていたら、なんと毛布が無料で貸し出されており、ベンチの上などにつんである赤い毛布を、みなてんでに借りていたのでした。　毛布にくるまり、震えながらオペラを観る、これがエクスの醍醐味？

  July 14, 2008

• 成田より遠かったロンドン

  　飛行機といえば、いまやかなり便利な乗り物だ。　たまに、ロスバケ（ロストバゲージ）にあったり、悪天候で乗れなかったりするけれど、最近の空の過密スケジュールを考えれば、トラブルの確率は相当に低い、と思う。　けれど、今回、あいました。人生最大の飛行機トラブル。それも個人旅行ならともかく、ツアーのまっ最中に・・・　１２日から始まったバッハツアーを終え、２３日には次のツアーの一行と、ドレスデンで合流した。題して「ヨーロッパ名門歌劇場めぐり」。ドレスデン、ロンドン、ブリュッセルの３つの都市で４本のオペラを観るというツアーである。　最初の目的地、ドレスデンで観劇したのは、この前のブログに書いた、フローレス出演の「リゴレット」。今回はもちろん、フローレスも本気で歌っていた。指揮のルイージもジルダのダムラウもリゴレットのルチッチも素晴らしく、レーンホフ演出の面白さも分かって、大満足の公演だった。聴衆の集中力もすばらしく、客席全体が固唾をのんで見守っているという印象。カーテンコールは聴衆総立ち、ドレスデンであんなに客席が熱狂したのを見たのは初めてだった。　幸先よし、さあ次のロンドン、コヴェントガーデンも楽しみと、「リゴレット」の翌日の午後、ロンドンへ向かったのだが・・・　　今回使ったルフトハンザでは、ドレスデンからロンドンへの直行便はない。今回はデュッセルドルフで乗り継ぎである。　ところが出発間際、雷雨で空が真っ暗に。案の定、出発が遅れた。３０分くらいだろうか。でもあまり心配はしていなかった。２０数名の団体なのだから、飛行機も待ってくれるだろうと楽観的だったのである。　　ところがデュッセルドルフに着いて、ゲートまで行ってみると、乗り継ぎ便は出てしまったというではないか。　一瞬真っ青、でもまあ、ロンドンだから便はたくさんあるだろう、と高をくくったのが間違いだった。　ロンドン行きの便は、今日はどれも満席だというのだ。　空席があっても数席なのだという。　交渉の結果、ルフトハンザが示してきた方法は、グループを２手に分け、ひとグループはプラハ！乗り継ぎでロンドンへ、もうひとグループはフランクフルトまで列車で！行き、そこからロンドン行きに乗れ、という。　またこのカウンターのおばさんの怖いのなんの。真っ赤に染めた髪の下の額にシワをよせ、私と添乗員さんが相談していると、「早く決めろ、急がないとどうなってもしらない」「だいたいあなたたちがぐずぐずしていて乗り遅れるから悪い」と言い出す。　仕方ない。覚悟を決めよう。　私はプラハ経由のグループになった。添乗員さんはフランク行きのグループについていくことになった。つまりこちらのグループでは添乗員代わりをするわけ。プラハ経由というのもあり、正直不安だった。本当にプラハで乗り継げるのかしら、だいいち皆さんかなり疲れてきているし・・・・　　不安は的中してしまった、というべきだろうか。チェックインを済ませ、指定されたチェコ航空のプラハ便の出るゲートへ向かう。　当初電光掲示板に出ていたゲートは、到着してみるとしまっていた。ゲートの変更があったという。で、またゲートを移動。　ところがここでも、搭乗時刻になってもカウンターに誰も来ない。待っている乗客にプラハ行きであることを確認したものの、離陸時間になっても動きがないのだ。　不審に思って掲示板を見にいくと、ああ、やっぱり。遅延・・・・。４５分の遅れだという。これでは、プラハでまた乗り継ぎ便に間に合わない。　ようやくカウンターに人が来た。プラハで乗り継いでロンドンへ行くのだが、乗り継ぎ便に間に合うのかときくと、「分からない」という。では乗れなかったらプラハに泊まるのかとたずねると、これも「わからない」。おまけに出発予定時刻の２１時も「たぶん・・・」。　さあ困った。これではプラハに着くのが深夜になるのは必定だ。私ひとりなら空港で夜明かししてもいいけれど、お客さまにそんなことはお願いできない。　とっさに、駐在経験の長いお客さまに相談。彼がカウンターとの応対もしてくれて、その場で航空券をキャンセルして、再びチェックインロビーに舞い戻った。　添乗員さんに電話を入れると、彼女が引き返してくれるという。　しばらくたって彼女と合流し、再びルフトハンザとの交渉が始まった。　　何時間待たされただろうか。チェコ航空のカウンターともやりとりし、ようやく翌朝の早朝、６時１０分の便で、ミュンヘン経由！でロンドンへ向かうことになった。　チェコ航空の手配で、空港と橋でつながっているホテルに入ったのが、１０時過ぎだっただろうか。　だが試練はまだ終わらなかった。列車でフランクに向かったもう一方のグループが、何と悪天候で列車が８０分遅れ、フランクからの乗り継ぎ便にまにあわなかったという。　「もう、状況が最悪で」　何度もツアーを一緒にやっている添乗員さんから、こんな言葉を何度も聞いたのは初めてだった。　結局、もうひとつのグループは、フランクフルトの空港で、深夜の１時すぎまで、翌日の便を決めるために待たされたのだという。　現地の手配会社のアシスタントがついてくれたが、仮眠のホテルに入ったのは、２時近かったらしい。　翌朝、私たちはちょっと心配だった。ミュンヘンでの乗り換え時間が、３０分しかないのである。これって、最初から無理、っていわれているのと同じじゃない？　けれど今度はさすがにルフトハンザも考えたようで、ミュンヘンで下りると、係員が待っていた。ルフトハンザのおっかない？お姉さんが、あんなに救いの神に見えたことはない。　ロンドンでは、偶然もうひとつのグループとパスポートコントロールで一緒になった。なんだかすごーく長く分かれていたような気がした。　ドレスデンからロンドンまで、およそ１８時間。成田へ行くより長ーい旅、だったのでした。　しかしあのルフトおばさんのようなタイプとわたりあわなければならないんだから、ドイツに住む日本人女性が強くなるわけですね・・・・

  June 26, 2008

• バッハグッズもグローバル化

  　バッハツアーも５日目。ライプツィヒから、バッハの生地アイゼナッハにやってきた。　ルターが新約聖書をドイツ語に翻訳したワルトブルク城が郊外にそびえる、緑の多い町である。　この町での最大の目的は、観光もだが「バッハ博物館」での貸切コンサート。　バッハの生家と信じられていた（今は違うと分かった）建物にある楽器室で、展示してある鍵盤楽器各種を使って、バッハの名曲を聴かせてくれるのである。　「バッハ博物館」には、２０００年から毎年来ているが、来るたびににぎやかになっている。新館ができたり、ショップやカフェがオープンしたり・・・・いまやアイゼナッハの最大の観光名所、稼ぎ頭というところだろうか。　ゼクト（スパークリングワイン）のウェルカムドリンクに始まり、目の前で演奏されるクラヴィコードやスピネットでバッハの名曲を味わうまでのコースは、とてもアットホーム。演奏家も地元の人間で、決して名手ではないけれど、心のこもっている感じが心地いい。　ところで今回、この「バッハ博物館」で買おうと、意気込んでいたものがあった。　何年か前にここで買った、イヤリングとペンダントのセットの、ペンダントのほうがこわれてしまったので、買いなおそうともくろんでいたのだ。　けれど新館にできた大きくてきれいなショップに、お目当てのペンダントはなかった。　あるのは「vienna world」と商標のついた、たぶん世界中で売っているだろう、音符の形のペンダント。　片割れのイヤリングを見せ、　「これとおそろいのペンダントは？」　博物館のひとにきいてみた。　「それは、もう売ってないんですよ」　きけば、そのペンダントの制作者が、倒産してしまったそう。　「ひとつひとつ手作りなので、これだけでは食べられなくて、他のこともしていたけれど、それも立ち行かなくなって」　ということだった。　　「ここで売っているのって、ウィーンの商標のものばかりですね」　くやしまぎれに？そう言ったら、　「今は、小さなところはつぶれてしまう時代だから」　と返事が返ってきた。　旧東独でも、いやむしろそれだからか、グローバル化に飲み込まれてしまうのだなあと、感じてしまったできごとだった。　アイゼナッハくんだりまで来て、ウィーン製のバッハグッズが欲しいひとはいないと思うのだけれど・・・　数週間前、サントリーが、モーツァルトリキュールの会社を買収したという記事を新聞で見たが、モーツァルトリキュールも、そのうちアジアの町で買えるようになるのでしょうね。

  June 16, 2008

• ロスバケもなく・・・

  　長旅を終え、今日から大学。これが始まるから、帰ってきたようなもの？（別の予定もあるのだが）まだまだぼんやり状態である。　それにしても、今回は旅の途中で飛行機に乗ることが多かった。　ミラノを拠点に、ソフィア往復、ウィーン往復。出かける前は憂鬱だったのだが、まあやってみればそう疲れなかったかな。　心配していたのは、「ロスバケ（＝ロストバゲージ）」である。　旅の多いひとなら、一度や二度は遭遇していると思うし、たいてい後の便で来るのだが、やはりやっかいなもの。　ロスバケを警戒して、機内持ち込みの手荷物に、「1泊分の荷物を詰めろ」とベテラン添乗員は言ったりするのだが、パソコン必携の手荷物に1泊分の着替えなども入れるのは、なかなか厳しい。　今回は幸い、ロスバケはなかったが、ミラノで会ったある音楽事務所のひとが、パリから飛んできて「ロスバケ」に遭遇し、「オペラどころの格好じゃないんですけど」とこぼしながら、スカラ座に来ていた。　ちなみに飛行機は、この方面ではちょっと有名な？フランスの航空会社。　昨今はラフなスカラ座、そうは目立たなかったですよ、Ａさん。　それにしても、今回お話をきいた大野さんにしろ、先月お話をきいた佐渡さんにしろ、1年に数え切れないくらい飛行機に乗るわけで。　「ロスバケ」なんぞ、何度となく遭遇しているのだろうな、と勝手に想像してしまった。　そんなことに脅えていては？演奏家なんてやっていられない、かも？ 写真はこの旅唯一の2ショット、ソフィアで「トゥーランドット」を指揮したエミール・タバコフさんとの２ショットです。トルコのアンカラ交響楽団の指揮者を務めるタバコフさんも超多忙、どちらかというと職人肌の指揮者でした。　せっかくインタビューしたのに、ばたばたしていて大野さんとも下野さんとも2ショットを撮らなかったのが無念（涙）。

  April 9, 2008

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