My Catharaunum

2012/04/16(月)09:22

「部落」探訪

ザセツの問屋(42)

私がこの部落探検を始めたきっかけは、2chです。 ボロボロの家が並び、亡霊のような人がうろついている、など、かなりな内容が書き込まれてあったので、本当に日本にそんなところがあるのかと思い、被差別部落とされている地区を、訪ねてみることにしました。 フィールドワークの実施日は快晴でした。雲ひとつない春の空の下、私は原付自転車で 自宅を出て、まず竹田に入りました。ここは市内でも大きな同和地区のひとつです。 たしかに、悪口掲示板にあるような、老朽化した市営住宅はありました。おまけに竹田には 計三つ、十階建ての高層市営住宅があります。ここは東高瀬川の氾濫原で低湿地だったところに人口が密集していたため、これくらいの補償予算をつけるのが妥当だったかな、という印象でした。しかし、街路はまるでヨーロッパの高級住宅地です。とくに中央緑地はロンドンのチェルシー地区の一角をさえ髣髴とさせます。一地区のためにこれだけの予算を投ずる意味があるのかと考えさせられます。 ちなみに、この一帯は、腑分けの補助か献金かで士分待遇になったある医師が住んでいたところと聞きます。緑地と、こうした地区にしかない立派な公衆浴場をあわせ、坪にして三百から四百くらいでしょうか、豪壮な屋敷があったのでしょう。竹田地区は彼が草分けと聞きます。どんな人だったのでしょうか… ここには、浴場が二つ、体育施設が3つもあります。それに、コミュニティセンタ、学習センタがありました。昔は二十四号線を隔ててひとつ隣に、母子一時保護施設があったほどです。確かに、悪口サイトで叩かれているとおり、作りすぎかと思われる部分もありました。老朽住宅もあり、目抜き通りの浴場はまるで昭和四十年代です。七十年代風の映画を撮るにはいい場所がいくつもありました。 私の偵察はさらに続きます。 この地区は松尾神社を勧請しています。一般に同和地区には白山神社が多いのですが、京都市内にはここと久世で松尾大社を勧請し、ある一地区では牛頭天王を信仰しています。神社の横では火の見櫓を再建中でした。何でも江戸時代には櫓があったとか。 偵察は西に向かって国道一号線から吉祥院地区に入ります。この地区は、すすけた住宅が多いのですが、一見すると付近の農家や準工業地と変わりません。下水処理場があるのと、民間の産業廃棄物処理業者が多いことには、目が肥えないと気づきません。ここの特徴は、地区の中心にいわゆる改良住宅がないことです。改良住宅は、どれも同じような構造の、赤いレンガのダスターシュートを配した灰色の建物です。一般の市営住宅とは明らかに違う構造で、しかも、同年代に一気に建てられたような印象を見る者には与えます。これがないと、地区外の人間には、そこに同和地区があるということすら分かりません。設備がやたらに整っているコミュニティセンタや学習センタはありますが、これも、まったく予備知識の無い者がいきなり地区内に入れば違和感を感じないかも分かりません。 そして私は久世に入りました。 かつて、フォークシンガーが広めた歌に、竹田の子守唄というのがあります。 その歌詞に、こういう文句があります。 久世の大根飯 吉祥の菜飯 そして竹田のもんば飯 中学生のころ、私はいじめにいじめられていました。死ね、往ねは日常茶飯事、顔を蹴られて血が出てそれでも登校していたのです。そういう中でこの歌を聴いた私は、「竹田にルムンバ大学を出た工作員がいる。我々はKGBに殺されてしまう」と勘違いし、それを触れ回っていっそう変わり者扱いされてしまいました。ルムンバ大学が旧ソ連の工作員養成所だったのを知っている人間は、あの吹き溜まり中学で三名しかいませんでした。のちに、モンバというのがおからの別名であることを知ったのですが、その段階で私は完全に上手く行かない生き方が定着していたのです。久世橋西詰めのすぐ横がそうした地区になっているのですが、ここはごく一部を除いて、普通の田舎の家並みと変わりません。市営住宅や体育館が立派なのは認識できますが、それ以外は完全に外部に溶け込んでいました。 結論。2chの悪口サイトは、同和地区のイメージを悪くするだけ悪くしている。 たしかに、老朽化した市営住宅が目立つ地区はあります。しかし、それ以外には目をつぶれます。むしろ我々部外者より恵まれている設備があるくらいで、悪口サイトに書き込みをしている人たちは、そういった点をやっかんでいるのではないかと思われる。 参考までに、同和地区に独特の食べ物はあるので、試食したい方はどうぞ。 1.さいぼし…馬肉のジャーキー。生姜醤油でいただく。味はくせなく淡白。 2.油粕…肥料用油粕ではない。豚の皮を油で揚げたものである。お好み焼きのトッピングにと薦められるが、つまみとしてはビールにかぎらず泡の出るものによく合う。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る