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カテゴリ:「お勉強」のこと
「先生、〇〇大学受かりました!」と大学受験のG君から連絡をもらう。
「きゃー!!!おめでとぉー! がんばったもんね。良かった良かった! これから本命校が始まるけど、気を抜かないよう引き続きがんばってね!」 「はい、次もがんばります!!」 G君は足掛け6年、指導をしていた生徒さん。 私立校のため高校受験は無かったのだが、途中お母様が倒れそうになることがあった。 G君は素直で気持ちのやさしい子。そして物事をじっくりしっかり考えるタイプ。そのため要領が良い方とはけっして言えないのだが、自分でよく考えた上で行動するので、周りの意見に流されることはない。そして楽な方に流されることもない。「こうした方が楽じゃない、簡単でしょ。」と言っても、その行動に自分なりの納得がいかない限りテコでも動かない。 こういった「じっくり納得いくまで考える生徒さん」は、今の日本の学習カリキュラムではかなり厳しいところがある。 日本の学習カリキュラムはかなり早い(私立だったため特に)ので、要領の良い生徒さんはなんなくこなしていけるのだが、そういったタイプでない生徒さんの場合、一度「よく考えよう」という個所が出てくるとブレーキがかかる。本人は真面目に勉強するタイプのため、学校の先生にも聞きにいったりするのだが、学校の先生が説明する内容ではいまいち分からない(他の生徒さんに説明するのより噛み砕いて説明しないといけないのだが、学校の説明は他の生徒さんの説明と同じになってしまう)ので、その後また自分で「う~ん。」と考えているうちに、どんどんテストの日程が近づいてくる。 こうして、どんどん未履修部分が雪だるま式に増えてきて、テストまで学習の理解が間に合わず、テストで点が取れないことが多い。 周りからすると「勉強はしているのになんで点数が悪いのか」ということになる。 G君は、途中「なんで勉強する必要があるのか?」という考えにいきつき(どの生徒さんも一度は考えることではあるのだが)、「やっても意味なんてないんじゃないか」→「学校に行ってもしょうがないんじゃないか」→「じゃぁ、学校をやめよう」と発展していった。 高校中退したがるG君をご家族は必死にとめる。でもG君にしてみたら「学校に行く理由がない」ため、周りの説得に耳を貸さない。 私はご家族の方も含め、G君の将来について話し合いの場をもった。ご両親のご意向として、「〇△大学に行ってほしい」とか「将来はこうして欲しい」という強いご希望はないようなので(ご家庭によってはこういった事情をくんで将来に向けての今を考えないとならない)、ご両親に小さいときのG君が何に興味を持っていたかをよく思い出してもらった。 これは私の持論なのだが、小さいときに興味をもって楽しんでやっていたことは、将来の「本人の能力や個性が発揮できる仕事(オンリーワン!)」につながると思っている。なので将来の進路を決める際には必ずご両親に小さかったときのことをよく思い出してもらい、そこから適性を考えるようにしている。 向いていない仕事をやり続けることほど辛いことはない。 ご両親との話し合いの結果、どうやら「機械っぽいもの」より「食」に関することの方が向いていることがわかってきた。 早速G君に食べ物の中で何が好きかをきき、「魚類系」が好きそうというところまで行った。よし、あともう少し。 一口に「魚類」といっても幅広い。貝なのか、魚なのか、甲殻類(カニやエビ)なのか、、、一つずつ丹念に聞いていく。 長いながい話し合いのうちにG君が「全部トロのまぐろを僕は作りたいです」と言った。えっつ、全部トロ? 「だって牛は松坂牛とかあるにまぐろにはそれがないじゃないですか」うん、そう言えばそうだ。 G君の性格から私は何かをコツコツ研究する方が向いていると感じていたので、さっそくまぐろについて勉強できる大学を探した。 あちこちに電話をかけたところ唯一まぐろを研究している大学を見つけた(日本ではここだけらしい)。ちなみに調べている途中で「イカなら〇◎大学、アサリなら△△大学」となっていることも分かった。 担当している講師とその大学の過去問をチェックし、がんばれば合格圏内に入れそうな感じだった。 目的があれば後はがんばれる。その後、どんなに勉強が辛くなっても「まぐろの研究」のためG君は頑張りぬいた。 念のため、本命校以外にいわゆるすべり止めの学校もいくつか選んだのだが、「やりたいこと」がはっきりしているため、この大学のここならこういう勉強をしよう、あそこならこういう勉強をしよう、と選んでいける。 面接試験があっても偏差値ではなく目的をもって選んでいるため、他の生徒さん達とは一線を画す。合格した大学でも「目的をしっかり持っているという人は最近では珍しい」と言われたそうだ。 本命校受験はこれからだが、この合格に気をぬかずG君はがんばることだろう。 いやいやとりあえず、良かった良かった。お母様も「ホッとしました」と声が弾んでいた。 G君が大学生になったら「大学の現実」を少し感じることがあるかもしれない(でも最近大学も生き残りがかかっていて様子が変わってきているが)。でも、こちらでフォローを入れるようにするので、それも乗り切って、自分が好きな勉強や研究をやって欲しいと思う。 ホントに良かった良かった。今日はとてもいい一日だった。 |