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カテゴリ:大人の女性旅
カチャカチャと言う金属が重なる音と、
朝食に間違いない、私の大好きな匂いが機内に充満した頃 ようやく、ブランケットの塊のようになった彼女が もぞもぞと動き出した。 ボサボサになった頭を覗かせ、しばし天井を見上げる。 「おはよう」 少し前に起きて、同じくボーっとしていた私が声を掛ける。 「 おはようございます。。。 」 くぐもった声で返す彼女は、今まさに脳をフル稼働させて 自分の今の状況を再確認しているように見えた。 「 いい匂いしますね 」 「もうすぐ朝ご飯だから。」 「お腹、空いたな・・・ 」 すごく健全な言葉に、なんだかホッと安心する。 彼女は、 くしゃくしゃになったブランケットを丁寧に畳み始めて そのうち、パチっ!と静電気を起し、あまりの音の大きさにびっくりしてる。 クルーが、前方より、ウィンドウの日よけを空けるように乗客に促すと 前の方から徐々に真っ白く眩しい光が機内を照らし始めて 私達も目を細めながら、新しい日が始まったことを確認する。 「あと、どれくらいで着くのかな。。10時間くらいですか?」 !!そんなわけ、ない。 トータル12時間45分のフライトで今からまた10時間だなんて。 だけどこの娘はそれを知らないで乗ってきたに違いないし だんだん、相手するのが慣れてきた。 鼻でふふっと笑いながら 「そんなにかからないよ。 せいぜい3時間くらいかな」 「そんなに早く着いちゃうんだ ・・・・・ 」 「朝食とって、ほっとしたら 直ぐだよ。」 「・・・・・・・・」 そこから すっかり無口になってしまった。 きっと旅の不安がまた、襲って来たのだろう。 でも仕方ない。 これも彼女の人生経路の一部。 私がどうにかできる物でも、するものでも、ない。 彼女自身が、何か得るものがあって、ここまで来たんだろうし 彼女自身が、解いていかなければならない問題が待ち受けているだろうし。 また、彼女は今までにない、人生の楽しみも、味わう機会を得るのだろうし。 そういう、私も。 彼女と出会って、色々「彼女のこと」として考えて来た事が 自分を振り返らせ、同じように自分の事も考えていることに、 既に気がついており、 それは、とても貴重でありがたいことだった。 ほんとは、2冊の単行本と、表面的な情報を毎回ちょっと違う角度から 表現しているだけの安っぽい雑誌と、それほど魅力を感じないけれど 「一応観ておこうか」と思う 新着映画 に費やす筈だった時間が こんな風に素敵な時間に変わったことを ちょっぴり、いや、かなり嬉しく思いながら 神妙な顔つきを崩さない彼女をみてみた。 「 乗り継ぎ、手伝ってください 」 はっきりと、私にこうお願いしてきた彼女は 神妙ながらも、ちゃんとこの旅を受け入れたように見え、 私は、 「もちろん。。いいよ。 ついてってあげる」 といいながら、彼女とそのまま旅したい気分になった。 それを見透かしたかのように、彼女の口からは 「貴女と一緒に旅してみたかったです。」 と、いう言葉が出てきた。 実は、 この時、自分でも始めて分かったのだけれど 私がこの仕事をしていて、一番お客さんに言われたい言葉がこれだった。 「一緒に旅したら どんなに楽しいだろう 」 とか 「是非、一緒に行きたい」 とか これを言われると、私は、 「行こう!!!」と手放しで言いたくなるくらい うれしい。 私でいいの? 私がいいの? 私と? 私に? 私が!!!? そうなると、相手を愉しませる自信はもう100%どころか200%どころか 1000パーセントにもなる!!! その時も、そういわれて、 あー彼女と一緒に旅したいかもと 思った。 一緒に行って、 彼女の嬉しそうな、これまで誰にも見せたことないような笑顔を。。。 そして発したことないような言葉を。。。 私が、、、、、、と思ってしまった。 でも異常に責任感の強い私は、そうはいかず、 今回は見送るしかない。 あの時、彼女と一緒にスペインに行っていれば 今の私は変わっていただろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年03月16日 18時13分06秒
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