テーマ:大学入試(149)
カテゴリ:入試問題検討
2007年度東工大前期の数学の問題を考察してみます。
ことしの東工大の問題は例年と比べるとやや取り組み易い問題だったように感じます。 試行錯誤をいろいろとしてみないと解けないというタイプの問題はなく、どの問題もラクではありませんが、ていねいに見てゆけば最終解答にたどり着けそうです。 第1問の整数の問題は、'91年前期[1]と同一テーマなのですが、'91年の問題の方が遙かに迫力がありました。 '91年は、団塊ジュニアの時代で受験競争も熾烈を極めた時代、東大、東工大、京大が毎年、うなりをあげるような難問を出題していた頃です。 3の5乗を3の3乗で割るとどうなるか、ということを調べれば、問題の仕組みはすぐに分かります。場合分けも単純で、第1問としては、適切な出題だと思います。 (2)が問題文を読むだけでは戸惑うかも知れませんが、(1)がついているので、落とすわけにはいかないだろうと思います。 第2問は、数学IIの微積と極限を組み合わせた問題で、それなりの計算をさせながら、b/aの極限がうまい数になるように仕組まれていて、出題者のセンスを感じさせてくれます。 類題をいろいろと作れるので、今後、予備校の模試や地方国公立の入試問題で、この問題の変形パターンが流行するだろうと思います。 やることは、2直線のなす角が指定されたときに正接の加法定理を使う技巧と、定積分の公式の利用だけなので、入試会場では、第1問と同様に正解しておきたい問題です。 第3問は、答はすぐに分かりますが、論証が大変な問題で、ことしの4題の中では、最難関の問題だったと思います。 恐らく、採点も大変で、100人単位の教授が、3日3晩不眠不休で採点しなければならなかっただろうと想像します。 それだけ、日本の科学技術を背負って立つ技術者を育てるために、受験生の探求心を試そうという意欲的な出題と言うことができます。 答案を書くポイントは、論証の抜けがないように注意する、ということです。 東工大の前期の数学は、充分に時間が与えられているので、焦ることなく、丁寧に場合分けを考えていくことが大切です。 大学入試問題サイトに示した解答は、入試会場向けに最も素朴な方針で考えたものですが、「大学への数学」4月号や、旺文社の「全国大学入試問題正解・数学」には、より優れた考え方が紹介されているので、参考にしてください。 第4問は、計算が面倒な上に、解答が汚い形になりますが、東工大の計算問題ではこの問題よりも遙かに面倒なものも出題されたことがあります。 この程度で投げ出すようでは、一流の研究者・技術者になることはできません。 最後の部分が、やや出っ張った感じなのですが、これを気軽に抜かして考えてはいけません。 東工大では、はさみうちの原理を使う極限の問題が頻出なので、はさみうちを使って、きちんとした答案を書くようにしてください。 ことしの東工大数学は、第1問で勢いをつけて、第2問のきれいな答を見て加速し、第3問で、ちょっと考え込み、一応のところまで攻めておいて、第4問で計算ミス・勘違い・早とちりに注意する、という、起承転結型の戦略で臨めばよい、という感じでしょうか。 CFV21大学入試問題サイトへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.08.04 12:28:00
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