2006/05/27(土)10:40
「タニヤ。虚飾のネオン」
南国の灼熱の太陽が、その勢いをいまだ滾らせ西に沈もうとしている。
タニヤも通りを歩く人の顔ぶれが変わる時間。
長い黒髪をなびかせ出勤してくる女達。ジーンズに包まれた細くしな
やかな脚の影は、斜陽とともに、いっそう長くなる。
夜の喧騒とはうって変わって、水を打ったような静けさのタニヤ通り。
そこを歩くタイ人は人並み以上のサラリーを得ているOL達。日本食を週に
何度か食べるために昼時やってくる。
彼女達は、その地がどんな意味のある所なのかは、人から聞いて知って
いる。日本人の男が遊ぶ場所。「特有」の場所だと理解している。
陽もとっぷり暮れて、通りの端々に濃い化粧を施し、ケバイばかりの衣装
に身を包んだ女達が立つ。
今日の糧を求めて、女達の戦いが始まる。
昨日も、その前も、いや今週はずっと客が取れない。
そんな焦りを濃い化粧の奥に隠し、生活のためにわざとらしい微笑みを通
りを行く男に投げかける。
男が無視をし、通り過ぎるやその顔は能面のように変貌し、今しがた、た
たえていた微笑みは消え失せている。それどころか、「チッ」っと舌打ちし
ながら気を取り直してもう一度、偽善の顔作りを試みる。
同伴帰りの男と女が腕を組んで店に戻ってくる時間。その女は得意げな顔を
店の入り口で客引きする女に向ける。
自分の掴んでいる客を
---(さぁーどうぞ。値踏みしてごらん)
と言わんばかりの傲慢な顔。
しかしその女もまた数ヶ月前、同じような「仕打ち」を同僚のホステスから
受けていた。
今日は、華でもあすは分らない世界。
それらのシガラミの全てを吸収しながら、タニヤのネオンは今日も男と女の
舞台を照らす。
そう。。。虚飾に満ちた裏舞台。