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カテゴリ:『生きること』
華やかな衣装を脱げば、その者達の姿は慎ましい。 GパンにTシャツ。どこかのバザールで買ってきたの であろう安物のバッグを肩にかけ、日付の変わった その日を帰途に着く。 先ほどまで振りまいていた、男を誘う甘い顔はど こかに消え失せ、疲れた体を引きずって、タクシー を求める。 このままでいくと、明日からはタクシーすら使え ない。雨が降っている日は、休むかバイタクでの出 勤を余儀なくされるだろう。 加えて携帯電話のプリペイドカードを買うことす ら出来ず、いよいよ孤立していく。 女は、意を決して、タクシーの運転手に行き先を SOI15と告げ、重い体に鞭を打つ決心をした。 そこはフリーで客を拾える場所。本業で食い詰め た者が、追い詰められてやってくる。もちろん、そ こを塒としている者からすれば、ヨソ者である。 その者達の縄張りを荒らすことなく、隅の方で客 に色目を流す。 結局、客を得たが、足元を見られてショートの金 で泊まり、という条件を飲まざるを得ない。 それも、見るからに脂ぎって、何度求められるか 想像もできないような男。背筋が寒くなり、無性に 田舎の空の青さを思い出した。 一晩の辛抱だと言い聞かせた女。 男は、果てては蘇り、獣のごとく女のそこを使っ て雄の欲望を撒き散らすのであった。 朝6時過ぎ、男から金を受け取るや、見向きもせ ず、その男の塒を後にする。 その女の荒れた心を、誰が癒してくれるのか。 アパートで待っているのは、働かない男。 女が帰るや、バックをひったくり、そこから一番 大きな額の紙幣を掴んで、ドアの外に消えていった。 その者は、女のケアすらしなくなった。ただ、女 に寄生する蛆虫。 怒りや悲しみなど、とっくに捨ててしまった感情。 日が西に傾くまで、そんな世界から逃げ出せる。 二度と目覚めたくない。 夕方、携帯が喧しく女を揺り起こす。 男からの無言の電話。 バイブの振動だけが物を言っているようだ。 ---時間だ。仕事に行け・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
October 19, 2006 10:34:24 AM
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