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旧・茶々吉24時-着物と歌劇とわんにゃんと-

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2015.07.10
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カテゴリ:映画・舞台観劇
今日は大阪松竹座に、七月大歌舞伎昼の部を見に行きました。
ありがたいことにご招待券をいただいたのです。

201507101917_5520_iphone.jpg

昼の部の演目は

一.御存鈴ヶ森(ごぞんじすずがもり)
二.雷船頭(かみなりせんどう)
三.ぢいさんばあさん
全部初見で、とても興味深かったです。

まずは『御存鈴ヶ森』。
歌舞伎名台詞の一つ「お若ぇの、お待ちなせぇやし」は
この作品の台詞だったんですね。
舞台は刑場・鈴ヶ森。
故郷で殺人を犯した白井権八が逃亡途中、鈴ヶ森にさしかかると
賞金首の権八を絡め取って金を得ようと企む雲助たちに取り囲まれます。
ところが腕に覚えのある権八に、散々に切り刻まれるありさま。
十数人を斬り捨てた権八が、さぁ逃げようと思ったところに
通りかかったのが幡随院長兵衛。
「お若ぇの、お待ちなせぇやし」となるわけです。
長兵衛はお尋ね者の権八をかくまってくれるというのです。
「え?!なんで?!犯罪者を匿うの?!」と
私なんぞは理解しがたいところですが
権八はこのとき、14,15歳。
前髪立ちの少年なのです。
白塗りで、鶸色の衣装を着て、
袖口や足首には紅絹の鮮やかな色彩がチラチラ。
そんな美少年が様式美の中で繰り広げる殺生シーンは、
ユーモラスかつスプラッタ。
ブラックユーモアたっぷり。
はぁ、江戸時代の人はこういうのを見て笑っていたのか。
江戸時代のダークヒーロー、白井権八を演じるのは片岡孝太郎。
私は孝太郎は女形の方が好きだなぁ。
幡随院長兵衛は中村錦之助。
私はまだ中村信二郎さん、という印象でしたが、
立派になられましたねぇ。

演目ふたつめは『雷船頭』。
常磐津の舞踊でした。
隅田川を舞台に、粋な女船頭さんと、
空から落っこちてきた雷とのユーモラスな踊りです。
雷のメイク(目の周りを丸く白く描く)に悶絶。
「かわいい!!あのメイクやりたい!」という私。
「(鬼が着ている)あの着ぐるみが欲しい!」という友。
私たちの感想、ちょっと変だぞ。
清元に『流星』という踊りがありますが、
『流星』よりいっそうユーモラスでした。
女船頭さんは中村時蔵。
ああ、私は梅枝さん時代しか知らなくて立派な名跡をお継になったものです。
雷役は表記されていなくて、どなただったのか、
御存知のかたがおられましたら教えてください。

最後が『ぢいさんばあさん』。
以前からタイトルは知っていたけれど、
どんな話かは知りませんでした。
美濃部伊織と妻の るん(なんて可愛い名前!)は
周囲の者が羨むほどの仲むつまじさ。
おしどり夫婦と評判が高い。
男児をもうけ、ますます幸せいっぱいなところに災難が生じる。
るんの弟が短慮の末、喧嘩をし、刀傷を負ってしまうのだ。
本来なら上洛し、お勤めを果たさねばならないというのに。
義弟がお咎めを受けぬよう、
身代わりに京都へ行きお勤めを果たすと申し出た伊織。
勤務の一年間は妻にも、生まれたばかりの子供にも会えないと覚悟する。
ところが、京都で伊織は、心ならずもとんでもない事件を起こしてしまい、
遠い地に蟄居という刑を課せられる。
それから37年。
再会した伊織と るん…。

見ていて途中で「あ!」と思いました。
1996年の花組公演『花は花なり』はこれのパクリ…
あ、いや失礼、これにヒントを得たものか、と。
いやーあれは本当にひどい作品であったよ。(←私の好みでは)
見終わった後、腹が立って腹が立って、
あんなに腹が立ったのはその後の『皇帝』くらいなものでしたわ。

しかし『ぢいさんばあさん』の原作者は森鴎外。
さすがでございます。
人生の機微や、
ちょっとしたことで人生を狂わせる人間のありさま、
同時に人の心にある清らかさ美しさ、
眩しいほどに輝いている若い時代と、
ゆったりとした老後…
さまざまなことを笑いのオブラートに包みながら、
見せてくれるのでした。
私は最後、泣けて泣けて仕方がありませんでした。
タイトル『ぢいさんばあさん』を見た時には
もっとほのぼの笑える演目だと思っていたのに。
(私があんまり泣くものだから、
お隣に座っておられた見ず知らずのご婦人が
「泣けましたか」とお声をかけてくださいました。
泣きましたとも!!)
鴎外の原作も読まねば。
ぢいさんとなる美濃部伊織は片岡仁左衛門。
舞台に登場した時に、パーっと花が咲いたように見えました。
私は時々オーラが見えるのですけれど、
今日は「見える」日だったようで、
まさに後光のようなものが見えました。
すごいわ、松嶋屋!!
新婚の微笑ましい様子、ご老人なってからのとぼけた様子、
演じ分けていらっしゃいました。
特筆すべきは、転落のきっかけとなる日本刀に魅入られた様子。
あの刀にはなにか魔力があったんだろうなぁと、
納得させられました。
罪を犯したあと、正気に戻り、慟哭するさまの素晴らしさ!
るんの時蔵さん。『雷船頭』のときとは打って変わって、
しとやかな中に芯のある女性。
ああ、なんて可愛い。
若い頃を演じる二人の衣装がまた可愛らしいんです。
グレー(銀鼠色かな?)に白い水玉もようの裾引きを着た るんと
若草色の着流しの伊織。
カラーコーディネートばっちりでした。
それから二人が老けた時に登場する若いお嫁さん
きく役の中村米吉がとーってもキュート。
こんなに可愛い女形さんが居たとは!
きく が締めている帯と、白いまるぐけの帯締めは
るんが若いときに締めていたものではなかったかしら?
きくはこの家を出るときに色々なものを置いていったのか。
人生が短かった時代、60歳を過ぎて再開した伊織とるん。
二人が、残された人生を幸せに暮らしたらしいことが
心から嬉しいと思えました。
それにしても敵役の下嶋を演じた中村歌六、憎たらしかったワ!!
そう思えるということは、歌六さんお上手だったのですね。


【おまけ】
今日は初めてイヤホンガイドを借りました。

201507101917_8409_iphone.jpg

リアルタイムで解説が聞けて、隅々までわかりやすいのは良いけれど
時々「うるさーい!もう良いっちゅうねん!!」と癇癪を起こしそうに。
だって、片方の耳から入る情報に気をとられると
舞台に集中できないんですもん。
特に『雷船頭』のような舞踊だと、
歌詞が面白かったりするわけです。
それなのにイヤホンガイドの説明を聞いているうちに
常磐津の調子の良い演奏や歌が耳を素通りしてしまう…。
結局、耳からイヤホンを外して観ている時間も多かったのです。
次回からは借りないと思います。
多分。


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最終更新日  2015.07.11 09:40:55
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