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旧・茶々吉24時-着物と歌劇とわんにゃんと-

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2015.07.29
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カテゴリ:読書
長い間、読みたいと思っていました。
映画化された時も「三國連太郎がおじいさん役か。見たいな」と思いました。
なのに、なぜか原作も読まず、映画も見ることなく過ごすこと、なんと20年以上!
平成6年の初版から21年目の夏、
私はやっと『夏の庭 ーThe Friendsー』を手に取りました。


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厚さ1cmに満たないこの小説に、
なんとたくさんのことが詰まっていることか!
読み終わったあと、じんわりと心に湧き上がるあんなこと、こんなこと。
いいものを読んだなぁという満足感でいっぱいです。

***
これは小学6年生の少年たちの、ひと夏の物語。
太り気味の山下くんは魚屋の息子。
母と二人暮しの河辺くんは、家庭の事情を抱え、
どこか危うい部分を持っている。
そして ぼく。
3人は同じ塾に通い、同じ少年サッカーチームに所属している。
個性は違うけれど仲良しだ。

夏休み前に、山下くんが学校を休んだ。
田舎に住んでいるおばあさんが亡くなったので、
学校を休んで葬儀に出席していたのだという。
人が死ぬってどういうことなんだろうか?
河辺くんも ぼくも身近に死を見たことがない。
死んだらどうなるのだろう?

町外れの一軒家に、一人暮しのおじいさんがいる。
生気のないおじいさん。
もしかしたらもうすぐ死ぬんじゃないかと思ったぼくたちは
おじいさんが死ぬ瞬間を見届けることにした。
そうすれば「死」がどういうものかわかる気がして。
夏休み、おじいさんの家に通いつめる3人。
そのうち、観察していることがおじいさんにバレてしまい…
***

読み始めてすぐに、物語の世界に没頭できました。
子供のころの夏が蘇ってきたのです。
全身に浴びた日の光の色や、
扇風機の風を受けながら食べたスイカの味。
時々見える大人の世界の不条理さなどなど。
ああ、なんて懐かしい。

この小説が書かれて20年以上も経っているとは信じられません。

人間の死について。
家庭の問題について。
ちょっと大げさだけれど友情について。
そしておじいさんとの触れ合い。

少年たちが経験すること、
考えていること、学んでいくさまが、
時代を超えて普遍的なものだからだと思います。
今も「新潮文庫の100冊」に選ばれているのは、
こういうところにあるのではないかしら。

私は主人公のぼくも好きだけれど、
魚屋さんの山下くんが家業にとても誇りを持っていて、
いっぱしの「職人さん」であることがまず嬉しい。
そして、一番危うげだった河辺くん
(映画『スタンド・バイ・ミー』でいうなら、
リバー・フェニックスがやっていた少年に似ている)の成長が
本当にうれしく頼もしい。

また、子どもたちに観察されていたおじいさんが
どんどん生き生きしてくるのが良い。
生きがいって大事だなと思いました。

ここには書かないエピソードが他にもたくさんあり、
微笑ましかったり、心がしんと静かになったりします。


でもなんといっても、
夜中にトイレに行くのが怖かった山下くんが
最後に叫ぶ言葉が素晴らしい。
そうか、そんな風に思えば良いのか!と
思わず膝をポンと叩きたくなる名言でした。


出版されて21年も経つ本を今更お勧めするなんて、
お恥ずかしい限りですが、
この本はお勧め度★★★★★です。

本当に、良い小説でした。



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最終更新日  2015.07.29 21:25:37
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