2006/01/25(水)10:34
茶木の音楽紀行 59
12月に入るとどっさりと雪が降った。
それまでも少しずつは降っていたが、その日はケルン市内でも30センチは積もった
。
一面真っ白な銀世界の中、汽車でアルバイトに向かった。
向こうに着くと山沿いのためか市内よりも随分多くの雪が積もっていたが、クワスト
フはチェーンも付けずに車で現れ、ゆっくりと運送屋に向かいLKWに乗り換えたが
やはりチェーンは付けなかった。
その日の配達は4軒だったが雪のためかなり時間が掛かり、我々は膝上まで雪に埋ま
りながら絨毯を肩に担いで運び、ゆっくり車を走らせ、坂道に差し掛かるとタイヤが
スリップして上れず何度も助走を付けて上り、下り坂ではハンドルを取られて壁に追
突してミラーを壊したりした。
何故チェーンを付けないのか理解出来なかったが、クワストフは最高に不機嫌だった
ので僕はじっと黙って座っていた。
何とか仕事を終えクワストフの家に戻るとレナーテとアンナの姿が見えず、彼のお母
さんがご飯を用意してくれていた。
お母さんは下町のかあちゃんといった風で、「典型的なドイツ家庭料理だけど、どう
ぞ召し上がれ」と言って料理の皿を僕の前に置いた。
ジャガ芋と豆、ブロッコリーにホワイトソースを絡めた物に大きなソーセージがあり
、クワストフは「オレたちは子供の時からこんな料理ばかり食わされて来たんだ、も
ううんざりだぜ」と小声で言い、お母さんは「文句が有るんだったら食べるな!」と
向こうから怒鳴った。
しかし食べてみるととても美味しく、僕は感動した。
思えばドイツに来てから自分で作る以外はずっと外食で、家庭料理など食べた事はな
く、それはドイツのお袋の味だった。
僕が「とても美味しい」と料理を褒めると「そりゃよかった」と顔を顰めてクワスト
フが言った。 つづく