富島健夫『朝だちの唄』(『富島健夫小説選集』14)
「富島健夫」のGoogle検索「タイトル + 富島健夫」のYahoo!検索***著者:富島健夫出版社など:実業之日本社初版:昭和五十六年三月二十五日初版発行本体価格 730円カバー絵:影山恵子目次プロローグ/少年の日/クラスメート/甘い誘い/風雲急/人妻/男の初夜/傷の鼓動/目撃者/現場を見た男/夜の花/じゃま者たち/夜の乱舞/犯行相談/けだものたち/尾行/なぐり合い/奇妙な夜/三人の中で/二人の恋人/なにもできない/男の心理/けもののざわめき/聖なる夜/女人哀情/女の友情/彼女の友だち/荒っぽいやつ/別れない女/知られていた情事/男の悲しみ/ライバル/あたらしい出発/クライマックス/追いかけないで解説 清原康正初出誌「週刊実話」昭和45年7月20日号から 昭和46年4月14日まで)連載とある。昭和46年に、同じ実業之日本社から、二冊編成で、短編を含めて刊行された作品。(荒川佳洋編著『富島健夫書誌』で調べました。編著者荒川佳洋さんのブログはこちらです。年譜や評伝など富島健夫がいっぱいです)カバー折り返しに推薦の言葉同人雑誌「文学者」を私が出していたころ、富島健夫君は執筆者のひとりであった。はじめて富島君に会ったとき、早稲田大学の学生服をきていた。私はおどろいた。かれの作品をよんでいた私は、よほどの年令とばかり思っていた。改めて私は、学生でありながら、これだけのものが書ける才能に目を見張る思いであった。学生時代私にも同人雑誌の経験がある。そのころの文学学生の青臭い記憶のある私には、富島君の大人びた、ゆたかな才能は驚異であった。作家というものは努力によってのみ出来上るものではない。その素質は生れながらにその人に備っているものである。私は富島健夫君の将来に大きな希望をかけた。この選集ですでに三回目の作品集という。いかにかれのものがよまれているかということになる。かれは私の期待を裏切らなかった。これを機会に、かれがさらに大きく飛躍してくれることを、心から祈りたい。丹羽文雄とある。あらすじ***ネタバレです******ご注意ください***カバーうしろに、女子学生の七十パーセント以上が“女になって”卒業するという京南大学に入学した長田玲児は、郷里にシンプルなペッティングまでの仲良し、こずえを残して上京した身だ。そして、コケティッシュな同級生の弘子の部屋に酔いにまかせて泊るような強気の彼も、結局、童貞は、下宿先の人妻・元子に与えてしまう。一度の体験で、男性としての落着きを覚えた玲児は、弘子にも性の手ほどきをし…やがて彼を負って上京したこずえと、その友人春美、さらに弘子の三人で、一夜をともに過ごすめぐり合わせとなったが……。とある。以下くだらない雑談注意・ネタバレご注意・太字引用解説より。作者の狙いはどうやらそうした結末にはないようなのだ。既成のモラルに忠実な女とそうでない女、その間にあって揺れ動く若い男の心理、それを描き尽すところに作者の狙いがある。また、モラルに対する優劣の判定を下していないことにも注目したい。青春がもつ乱脈さといったものを読者の前に展開してみせる。