どっちも優しい子
火曜日の午後、数年ぶりの久々でひどい胃けいれんを起こした。なんとかブスコパンを飲み、「効いて来なければこれは救急車沙汰かも…」と思いつつ転がって悶絶していると、茶々ちゃんがすぐにやってきた。彼女は心配してくれるあまり、「ぬぁん、うあぁぁぁん、わぁぁぁぁん」とひとしきり大騒ぎしつつ、横腹に乗って来た。有り難いのだがさすがにたまらず、降りていただいた。すると今度は甘露嬢がやってきて(一声鳴けば、背後にいてもどっちの猫かすぐに分かる我が家)、人の背後で「ぴゅるるるるっ」と鋭く鳴くと、そろりそろりと自分を踏まないように正面に回り込み、人の腹の前で「こてん」と横になった。そして、そろりと片方の前足を伸ばすと、「ぺと」と、こちらの胃の上部に押し当てて来た。ブスコパンが効果を発揮してきたのも確実にあるとしても、かんちゃんの温かい前足が触れている部分から楽になって行ったのは、事実であった。平熱37度の自分であるが、寄り添ってくれたかんちゃんの身体から発せられるぬくさが、なにやらいつもよりさらに温かいもののようにも感じられた。やがて、少しずつ胃けいれんのひどい苦しさが去っていって「あ、このままちょっとうとうとできるかも知れない」と思える程度に楽になって来た頃、甘露嬢は再び「そろり」とした動きで前足を引っ込めて、ベッドの上から去って行った。ああ、とらちゃんがこういうことしたなぁ。彼は関節痛でひどくしんどい時にその近くにぴとっと貼り付いてたったけなぁ。で、彼はそのまま人と一緒に寝ちゃうんだよな、なんて事を思い出しつつ、そのまま少し寝た。起きると、まだ胃のしこり感というか「そこに胃があるなぁ」とはっきり分かる違和感は残っていたものの、痛みと言えるほどのものではなくなっていた。ちゃーこさんは起き上がって来たオレに大慌てで駆け寄って来ると、またひとしきりうわおわおと鳴き続け、しばらく、ぴったり付き添ってガーディアンをつとめてくれていた。かんちゃんも、寄って来るというよりいつもよりも頻繁に、こちらの様子を見に来ていた。生き物のたいていは、けっこう他の生き物が弱った時、できるだけの手当や付き添いをしてくれようとするもんである。