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本のある森

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本の紹介・SF

2020.08.20
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カテゴリ:本の紹介・SF
1年ぶりにミラクルタウンに行ってきた。
コロナ流行中にいったいなにをやっているのか、そもそもその街はなんだ、日本国内なのか、と言われそうだが、もちろん架空の街である。
『ポエムくんとミラクルタウンの仲間たち』を久しぶりに読んだのだ。久しぶりといっても冒頭に書いたように1年ぶりだ。読書記録を見ると年に一度のペースで少なくとも4回は読み返している。我ながらよく飽きないものだと感心する。


繰り返し読んでも飽きない、というのは、もちろん内容が面白いからとか、気に入っているからということもあるけれど、目的が“ミラクルタウン滞在”だからというのが大きい。疲れたり体調を崩したりすると、ミラクルタウンに行きたくてたまらなくなるのである。
今回は暑さで疲れていたのと、もし冬にコロナのもっと大きな波が来たら、自分も感染して助からないのでは、などと考えてしまい、じゃあ元気なうちにもう一度行っておくか、となったのだ。


ミラクルタウンの空はいつも晴れていて、青い空にふわふわした雲が浮かんでいる。晴ればかりで雪が降らないので、人工降雪機で雪を降らせたことがあるくらいである。
あまり大きな町ではないようだが、公園や港、天文台がある。天文台の時計は以前は日時計が採用されていたが、ある事件をきっかけにデジタル時計に替えられた。鉄道は公営であるらしく、職員は事務的でサービスが悪い。しかし、コインを入れると手がにゅっと出てきて券を手渡してくれる券売機は暖かみがあると評判である。
この町の本はわたしたちの世界のものと違い、刷りたてのものは気を付けないと活字が風で飛ばされてしまう。さらに繰り返し読むと活字が擦り切れて薄くなってしまうらしい(これはちょっと困る)。また、電車内で本を読むためには読書用の特別な切符が要るので読書家は注意が必要である。
しかし、この町の最大の特徴はなんといっても住人たちである。彼らは自分の姿を特定のものに変えられるのだ。主人公のポエム君はタンポポに変身できるので、その力を使って公園でバイトをしている。植物に変身できる人は珍しいそうである。
この能力を別にしても、住人は楽しく、そして優しい人たちばかりだ。ポエム君の彼女のファニィさん、物知りのオールド老人、鏡職人のミラーさん、時計屋のレンズさんなど(ミラーさんとレンズさんのふたりは腕が良さが災いして事件を起こしてしまう)。
ミラクルタウンの近くにはジャングル密林市とマウンテン山岳市があり、仲が悪かったのだが最近は関係を修復しつつある。

この本を初めて手に取ったのは図書館で、そのとき既に絶版になっていた。どうしても欲しくなって古書店を探し回り、どうにか1冊手に入れた。あんなに探してもなかったものが、ふと入った小さな店の棚に、たいして高い値もつけられず、当たり前のように並んでいたのはなんだか不思議だ。
そうしてわたしは頻繁にミラクルタウンを訪れるようになったのだが、実はこの本、少なくとも2冊の続編が出ているらしい。また古書店を探さなくては。



『ポエム君とミラクルタウンの仲間たち』
横田順彌
集英社






最終更新日  2020.08.20 20:00:08


2020.08.12
テーマ:SF。(53)
カテゴリ:本の紹介・SF
遠い未来、人類は個人の自由と個性が尊重される完璧なユートピアを作り上げていた。
細分化された個人の望みに応えるために多様化されたシティのひとつ、ファーイースト30。主人公のイヴはごく平凡な、特別な才能もなく、将来やりたいこともなかなか見つけられない少年。シティが好きで、風に吹かれながら草原に立っていることだ好きだけれど、だからといってそれを将来に結び付けたいわけじゃない。「あなたはこれが好きなのね、じゃあそれを仕事にすればいいじゃない」そんなふうに言われても、何かが違う、と感じてしまう。
そんな、ぼんやりとした悩みを抱えた彼がある日出会ったのが、銀色の髪の、まるで少年のように華奢な女性レダ。彼女はきまぐれで感情的で子供っぽく、イヴがこれまでに会ったことのないタイプの人間だった。しかも、たんにエキセントリックなだけではない。彼女は“紊乱者”と呼ばれる反社会的存在だったのだ。
ファーイースト30は、自然環境や人口はもちろん、市民の教育や健康状態、パートナー選びまで、すべてが人工的に管理されている。人々はフラスコから生まれ(女性の胎内すら必要としない)、ふさわしいとされる年齢になれば性ホルモンを服用してパートナーと契約を結び(もちろん一生独身でいる自由もある)、自分の適性に合ったギルドを選ぶ。すべての自由がある世界だけれど、用意された選択肢の中にしか自由がない世界。そんな偽物の自由をレダはあざ笑い、はねつける。レダは真の自由を求める革命家なのだろうか? いや、レダは革命家などという枠にも収まらない人間だ。彼女の心には誰にも埋められない闇が、そして過去には秘密があった。


『グイン・サーガ』の著者、栗本薫による少年の成長物語。1巻はレダのパートナーのアウラや犬の(喋れる)ファンとの交流など穏やかなシーンが多いのですが、2巻以降は辛い展開になってゆきます。あと、R18というほど直接的ではありませんがけっこうセクシャルなシーンがあるので、苦手な方は注意した方がいいかもしれません。
個人的にはファーイースト30の風景や、物語の語り手でもあるイヴのモノローグのリズム、あと哲学犬のファンがものすごく好きです。普段は猫派なのに。


レダ 1
栗本薫
早川書房


レダ 1【電子書籍】[ 栗本 薫 ]
文庫は絶版ですが電子書籍版が出ています。



【中古】単行本(実用) ≪趣味・雑学≫ レダ / 栗本薫 【中古】afb
ハードカバー版の表紙が素晴らしい。







最終更新日  2020.08.12 20:00:08

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