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本のある森

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本の紹介・小説

2020.07.05
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カテゴリ:本の紹介・小説
幻想怪奇、推理小説で知られる江戸川乱歩全集、全30巻の第1巻。初期作品22本と乱歩本人による解説を収録。解説はほかの全集などに寄せられたものの抜粋。各作品の後に該当部分が収録されている(ネタバレを含むので注意)。
この巻では有名どころでは表題作の【屋根裏の散歩者】【人間椅子】【D坂の殺人事件】を読むことができる。推理小説中心で幻想怪奇小説はまだないけれど、犯人の告白、モノローグ、凶気などには幻想怪奇小説の色を感じる。

乱歩の推理小説って推理ものとしてはちょっと無理があったり、強引だったり、本格推理としては多分弱い。これは当時、ハードな推理物はあまりうけなかったというのとも関係しているらしい。
ただ、彼の作品の魅力は謎解きよりも犯罪者の心理なのだ。罪をおかす人々は、だれでも実は持っている、でも普段は知らんぷりをしている心の一部のデフォルメである。その“心の一部”が“闇”とか“狂気”とかいう格好のいいものだけではなくて、下世話な好奇心や強すぎる自意識、ものすごい小心さなんていうみっともないものまで含んでいるのがすごいところ。だから読んでいると自分の過去の、所謂黒歴史が掘り起こされるような、なんともいえない気持ちになってしまう。
その“自分の心の恥ずかしい部分”は物語の中でとんでもない事件を起こし、最後にその悪行は暴かれる。そこにカタルシスを感じるのだ、という気がする。

乱歩の作品は怖かったり、気持ちの悪かったりするものが多い。この本にもグロテスクな描写がけっこうある。でも一番怖いのはある作品で描かれる“無意識”だ。誰の心の底にも、あいつにいなくなってほしいとか、あいつをひどい目に合わせてやりたいなんていう気持ちがある。その気持ちが無意識の行動を起こして、自分では気づかぬうちに相手を死なせてしまうかもしれない‥‥。これ、どんな猟奇殺人よりも恐ろしいと思うのだが、どうか。


江戸川乱歩全集(第1巻) 屋根裏の散歩者 (光文社文庫) [ 江戸川乱歩 ]






最終更新日  2020.07.05 18:35:57


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