わが街小田急沿線

2022/10/01(土)18:41

小田急線開通90年(11)47年ぶりに訪れた小田急沿線最後の“秘境”

鉄道(22)

小田急線開通90年(11)  47年ぶりに訪れた小田急沿線最後の“秘境”  小田急線で駅間距離が最も長いのは渋沢駅~新松田駅の6.2km。その区間は丹沢山地に近い神奈川県の秦野市から松田町にかけての広大な原風景が残る地域です。私はその地域を高校2年生だった1970年以来、47年ぶりに訪れました。  渋沢駅は広大な原風景を控える駅といっても、1日の乗降人員は1970年に約15,000人だったのが2016年には約29,000人に増え、新宿駅に近い参宮橋駅、代々木八幡駅や乗換え駅の豪徳寺駅などを上回っています。渋沢駅の後背地には約1.5km四方の広大な工業地帯があって渋沢の町の繁栄を支えています。  渋沢駅は近代化され、駅の南北にはバスターミナルができ、周囲には新しいビルが建ち並んでいます。                渋沢駅南口広場 (2017年撮影)  私は今回、1970年に来た時と同じく渋沢駅で降りて新松田駅方向に2~3kmの道を歩いて写真を撮りました。線路の北側を駅から1.3kmほど歩くと下り坂となり、さらに250mほどの所で四十八瀬川を渡ると小田急線の線路が見えます。線路の下をくぐると、そこは今までの町並みとは一変し、47年前あるいは小田急線の開業時から変わらぬと思われる原風景が広がります。        ①周囲の緑に映える青色の特急ロマンスカー60000形。(2017年)  以下は1970年4月初めと2017年12月初めに同じ地点から撮った写真です。           ②田畑の中の小道から渋沢方面を望む。(1970年)         ②現在。左端に真新しい事業所の建物が見えます。(2017年)        ③家屋の点在する林を背景に走る中型車輌の2400形。(1970年)       ③現在。昔と変わらぬ景色の中を走る特急ロマンスカー50000形。                               (2017年)       ④山野の景色とともに開業時を彷彿させる1輌で走る荷物電車・旧1000形。                                (1970年)       ④現在。やはり昔と変わらぬ景色の中を走る10輌編成の急行8000形。                               (2017年)       ⑤山林と田畑の原野を背景に走る3輌編成の各駅停車・旧4000形。                               (1970年)       ⑤現在。昔と変わらぬ田畑と、量を増した山林を背景に走る10輌編成の    快速急行4000形。(2017年)  私が歩いたのは、ここまでですが、この先は左右の山が迫り、小田急線は曲がりくねって流れる四十八瀬川を何度も渡って新松田駅に向かいます。               撮 影 地 点 図  このように、47年前と比べて若干、建物は増えましたが、小田急沿線の他の多くの地域で田畑などの宅地化が進んでいるのに対し、貴重な“秘境”とも言える風景がこの地域では意外にも温存されていることがわかります。  秦野市では「里地里山保全再生モデル事業」を進めており、この地域では「四十八瀬川沿いの水田、休耕田をビオトープや花壇等として活用し、多様な生物が生息する空間、景観が楽しめる空間を生み出す」という目標を掲げています。そのため、この地域の“秘境”たる風景は今後も安泰と思われます。  里地、里山とは、森林などの未開発地域と都市化した地域の中間に位置し、人々が農業や林業を営んでいる地域で、田畑や雑木林、ため池が残る、日本のふるさとの原風景を思わせるような地域です。また、「ビオトープ」とは、「自然の状態で多様な動植物が生息する空間の最小単位」を意味します。自然が失われつつある中で、このような空間を作り、小動物や植物などを呼び戻そうと、各地でビオトープが作られています。                              (つづく)

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