「歴代の彼女の中で、もしかしてアンタが一番おバカで何も出来ないんやないん?」
実家で彼と二人で仕事をしていた。
午後2時32分、携帯が鳴る。
母からだった。
「家におるんやったら、駅まで迎えに来てくれん?」
調度、CD-Rを買いに出掛けようとしていたところだったから、
電器屋経由で母を迎えに行った。
彼の車の助手席から母に手を振った。
「いっくら探してもアンタの車が見えんけ、事故にでも遭ったかと思って心配したよ」
そう言いながら母は彼の車に乗り込んだ。
電器屋経由で行くから、3時近くになると伝えていたのだが…
「いつも、すみませんね。
うちのiku3+は遊くんに何かご迷惑は掛けていないかしら?」
と母が訊く。それに苦笑しながら彼が答える
「そんな事ないですよ。
ちょっとドジだけど、iku3+さんが居てくれて僕は助かってますよ」
「ところで、遊くんの誕生日っていつなの?」
「僕ですか?iku3+さんの半年後の1月です」
「あら、iku3+の方が半年お姉さんなのね。
なのにうちのiku3+ときたら三姉妹で一番のおっとりさんで、長女のくせに末っ子みたいで…」
「確かに、おっとりしてますけど、意外としっかりした面も持っているんですよ、彼女」
「そうなの?
もぉ~、お母さんはアンタの事が心配で心配で!ちょっと、iku3+、聞いとるんね?」
ちゃんと聞いてるよ、とだけ答えた。
母は続ける。
「ねぇ、歴代の彼女の中で、もしかしてアンタが一番おバカで何も出来ないんやないん?
遊くんって会社をやっているじゃない?だから、お母さん心配なんよ」
母は、度々iku3+に言っていた。
「アンタなんかで、彼を支えられるの?」と
車内が静まり返ったところで実家に着いた。
3人無言のまま家に入った。
彼と再び作業を始め、ポツリと彼が言った。
「iku3+はペーペーなの?」