「昔の恋人、別れた今も気になりますか?」
先日、彼に連れられ部品屋に行った。
所狭しと並べられた大小様々な部品達。
独特なニオイのするその場所を、少しだけ懐かしいと感じた瞬間、はっとした。
元カレとのデートコースには、必ず電気屋と部品屋が入っていた。
一緒に映画を観る、買い物をする、ドライブに行くということは殆どなかった。
金が掛かる、時間の無駄、疲れるという理由で、
きっと『普通』のカップルがしているであろうデートというのはしたことがなかった。
では、何をしていたのか?
自分の趣味には幾ら時間を割いても平気な元カレ。
俺が何かしているのを傍で黙って見ていろ、そんな感じ。
ヤツがサーフィンに行けば、私は潮溜まりで小さな子ども達と遊んだり空を眺めたりして時間を潰した。
シルバークレイは私が物凄い興味の反応を示したのだろう。
少しだけ分けてくれて、一緒にちまちまアクセサリーなんかを作ったりしていた。
しかし、私の方がヤツより幾分器用だったせいか上達が早く、それが悔しかったようで直ぐにしなくなった。
ガーデニングだけは、観葉植物を育てるのが好きな私の影響で、二人で様々な植物を育てた。
マングローブ、サボテン、蘭、ユリ、ミニバラ、苧環、チューリップ、ひまわり…
一番見ていて時間を持て余したのが、ヤツが訳の分からない電気部品を組み立てている時。
待ち草臥れて、雑誌を読みながらよく転寝をしていたっけ…
何気に手に取った部品が、ヤツの勤めていた会社の製品だったせいだろう。
忘れたつもりでいた記憶が不意に蘇ってきた。
『アイツ、今頃、何やってんだろう?』
「昔の恋人、別れた今も気になりますか?」
正直なところ、私はほんの少しだけ気に掛かります。