|
カテゴリ:なりそこない(詩)
日が暮れて、夕焼けの中朝顔が咲いた。
2人の詩人が詩を書いた。 「 私はなぜ見紛うたのか。 希望の光と見えたものが、 暮れ落ちる命の最後の輝きだったとは。 それすらも、やがて灯火の如く消えるだろう。 私はなぜ見抜けなかったのか。 私はなぜ進めないのだろう。 希望の光を夜が奪った。 私の所在を闇に屠った。 私は人々の忘却の彼方へ 無なる闇に還るのか。 見知らぬ地に独り生まれ出で、 仲間達はとうに果て、 私はなぜ独り凍え、 私はなぜ見失い、 私はなぜ生き、 私はなぜ 」 「 夕映えの朝顔。 あなたはなぜここにいるのだろう? 輝く夕日を 朝日と見誤ったのか。 それとも 夕焼けにつられて開いたか。 ・・・でも、綺麗だね。 夕映えの朝顔、あなたは美しい。 ここにただひとつ あなただけの花を美しく咲け 」 2人は言い争った。 「あなたは、アサガオにとって夜がどれほど辛いかを知らない。 じきに夜が来る。 夜になれば短い命を閉じるのは明白なのに、それを誤魔化して生きるのか。」 「たとえ儚く散ったとしても、美しい花を咲かせることに意義があるのです。 たとえ苦境が待ち受けていようとも、今このアサガオは美しい。」 「それならば、余計に朝咲いた方がよかったに違いない。なんと不幸なことだろう。」 「過ぎた事を言っても始まりません。このように美しい花を咲かせて、アサガオはきっと満足でしょう。」 ―そこへ、3人目の詩人がやって来て詩を書いた。 「 咲くべき時は神が決める 夜の怖さは神が決める 美の基準は神が決める 幸・不幸は神が決める 」 すると2人は「答えになっていないじゃないか」と怒り出した。 そこで、彼はこう付け足した。 「 全ての真理は神のみぞ知る 神の所在はあなたが決める 」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004.07.30 22:01:23
コメント(0) | コメントを書く
[なりそこない(詩)] カテゴリの最新記事
|