019087 ランダム
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こんにちは、命!

こんにちは、命!

D&C(子宮内容物除去手術)

今回の流産に伴い、カナダで処置手術を受けることになりました。
事実を受け止めるだけで精一杯の状況の中、海外で同じ状況になってしまった方がもしおられたらと思い、私の経験を書き留めたいと思います。

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*10:55am - ナースの問診

10:30amのアポだったが25分待たされる。
このEarly Pregnancy Centreは、私のように流産してしまった者よりむしろ妊娠・出産する人のためのもので、よってお腹の大きな人たち、出産して幸せそうに退院する人たち、またそれらを見舞う人たちでごったがえしている。
そんな片隅の待合コーナーでは、椅子に座った途端すすり泣く女性も数人いて流産の辛さ、この境遇のむごさを実感する。

問診ではこれまでの妊娠歴、今回の妊娠の経緯、処置方法の選択についての説明を受け、手術を希望すると、アレルギーの有無や病歴、朝食の内容とその摂取時間などを訊ねられる。

  <待合室に戻り今度はドクターに呼ばれるのを待つ>


*11:20頃 - ドクターによる超音波検査

胎児の様子を最終チェック。

当たり前だが、やはり心拍はない。

ドクターがとても丁寧に検査をしてくれているのがよく伝わってきて、気持ちが落ち着く。
先月は2センチだった桃太郎、今日は1.8センチになっており、胎嚢も萎縮・変形し始めていた。

この診断を受けて、手術のために必要な書類をドクターが作成、手術同意書に署名をする。

<また待合室に戻り、ナースが手術時間の調整をするのを待つ>


*11:40頃 - 手術時間決定

先ほどドクターが作成した書類一式を入れた封筒を渡され、階下で患者登録をするよう言われる。

手術前およそ6時間は絶食となるため、朝食時間から逆算して午後2時頃に行うことになるだろうとのこと。


*12:00正午 - 患者登録

階下のレジストレーションルームは常に混雑しているため、整理番号を取って呼ばれるのを待つ。
その間、やはり手術を受けるために来ていた女性と少し話をする。
こんなことになってしまってとても残念だが、こういう時は袖触れ合った他人以上のもの、同士のような気持ちになる。

互いに、「頑張って乗り越えようね」と言って別れる。

先方がタイプした必要事項の正誤を確認し、作成してもらった青い患者カードと先ほどの封筒を持って、Day Surgery(日帰り手術)の専門病棟へ。


*12:20pm - 2:15pm - 手術準備と待ち時間

私がDay Surgeryの受付を済ませるのを確認し、ロビーで待っていた夫とムスメが一たん帰宅。
普段と違う様子の中、母親と引き離されることに怯えたムスメが手放しに泣く。

彼らの姿が視界から消えるのを確認した途端、堪えていた涙が溢れ出し止らない。
もう号泣の一歩手前といった感じ。
公共の場でと自制する気持ちより涙のダムが崩壊してしまってどうしようもない。

そんな私の様子を見ていた女性患者2人がそばに来て、しきりに慰めてくれる。

「大丈夫よ、大丈夫」 そう肩を優しく抱かれて気持ちが落ち着く。

ほどなくナースに呼ばれて体重計測、血圧測定を済ませてから手術着を渡される。
所定の更衣室で着替え、腕時計などを含めて所持品や身につけていたもの全てをロッカーに保管し、待合室へ。

手術着と一緒に渡された錠剤2つ(ミソプロストール)は、早期流産で手術の代用として使われるもの(自然流産を促すピル)だが、今回は手術前に膣内に挿入することで子宮頚管を広げる効果があると説明される。
それはともかく、小さく平たい六角形のような錠剤を膣深くに挿入するのは思いの外困難で参った。
実際、指示された位置に挿入できたか心もとない。

副作用として生理痛と出血があるかもしれないと言われたが、今回の私の場合、挿入後3、40分ほどして、極々軽い生理痛のようなものが表れた。

手術予定時間の午後2時過ぎになってナースに呼ばれ、手術室前まで移動する。


*2:20pm - 3:05pm - 最終問診、手術開始


ナースの案内で手術室前に置かれた移動ベッドに横たわる。

そこで、先ほどとほとんど同内容の問診を受け、手術同意書の署名は確かに私のものかを確認する。
そこまではスムースだったが、担当のドクターがなかなか到着せずベッドの上でひたすら待つ。
私と同時期に呼ばれた女性はドクターが早々待っていたので、すぐ手術室へ。
 
ベッドは廊下にあるので、医師やナース、清掃担当者や助手のような仕事をしている人たちが頻繁に行き交っていく。
清掃や簡単なアシストを担当している人たちは英語だけではなく、あらゆる言語で、私が耳にしたことがない、これは何語だろう?と思うものも多々ある。
日頃、英語・日本語・ちょっぴり広東語で生活しているので、とても新鮮。

その間にも、廊下の両側の手術室からはバキューム音が断続的に聞こえてくる。
この音を何かに例えるなら、旅客機のトイレのフラッシュ音か。
この子宮内容物除去手術はバキューム法なので、この音が聞こえるたびに、一つの命が胎内から離れていくのだな、と感じるが、それが間もなく自分にも起こることなのだという実感が今ひとつ乏しい。

そうこうしているうちにドクターが到着。

彼は一度日本旅行をしたことがあるそうで、その時覚えた日本語を披露したり、最近習い始めたという合気道の話をしたりして、私の緊張をほぐしてくれる。

手術室には、ドクター、女性ナース、麻酔専門医、助手の4人がおり、皆それぞれが無駄な動き一つなく準備を進めながら、私の気持ちを和らげようと軽い冗談を言ってウインクする。

 点滴とパッチをされ、麻酔作用のあるガス(?)を強く口元に押し当てられて、深呼吸をするよう言われる。

それを4~5回したところで、意識がなくなった。

次に目覚めた(起こされた)ところはリカバリールームであり、全てが終わっていた。
設置されていた時計は、3:21pmとなっていた。


*3:21pm - 4:30pm - リカバリールームから一般病棟へ

ナースに起こされて覚醒。
「気分はどう?」の問いに、「とても深い眠りから覚めた気分です」と答える。

そのまんまだ。
軽い生理痛を感じるのでそれを伝えたところ、

「10を最高として痛みを例えるなら1~10のうちどれか」

と聞かれたので、2と答える。

その痛みは10分ほど続いて少しずつ引いていった。

「何か飲みたいものがあったらあげましょう」というのでジンジャーエールを頼む。

冷たい飲み物は体を麻酔から切り離してくれるようで爽快。

30分ほどリカバリールームで過ごし、ベッドのまま一般病棟へ移動。
ここで夫・ムスメと合流する。

点滴を外してもらい、術後の注意事項が書かれた用紙をもらう。
翌日からは普段どおり過ごしてよいとのことで一安心。
病院という非日常の空間の中での再会だったためか、ムスメがしきりに私に甘えてくる。

私も覚悟していた痛みがその時には全く引いてしまっていたのと全てが終わったことの安堵で早く帰宅したいとしきりに思う。


*4:50pm - 帰宅

着替えを済ませトイレで用を足す。
おしっこと共に多量の鮮血。
あぁ、本当に終わったんだなぁ、桃太郎はもういないんだなと実感する。
痛みは全くなし。

ナプキンにはほとんど血がつかないのだけど、それから用を足すたびに出血するといったところか。

夫が車寄せまで迎えに来るまでの時間、ムスメと夕焼け空を眺める。
久しぶりに晴れ上がった空は澄みわたるような色のグラディエーションでこの空を桃太郎は渡っていったのだろうか、と思う。

また会おうね。

絶対に会いたいね。

やっぱり、強くつよくそう感じる。


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この手術日をはさんだ両日、私は通常どおりパート勤務(図書事務)をしていましたが、特に身体に負担を感じることはありませんでした。

手術後は強い喪失感を覚えますが、これはあなたの身体を赤ちゃんとの再会の日へと導くための大切なステップです。

こうしてまたあなたはママになるのですから。

また、術後最初の生理は、その量がとても少なくて心配になりました。

日本で同じ経験をされた方々は、私とは反対に出血量が多いという方が大多数のようだったので、大丈夫かなと不安でした。

ブログ内の日記にも書いていますが、術後1回目の生理は通常の6割量くらい。
2回目のそれも、まだ通常と同じ量とはいえませんでした。
3回目になってようやく周期も回復し、量も整ってきたなぁという安心感を覚えたものです。

私が体験した手術はバキューム(吸引法)によるもので、日本のものとは違うかもしれません。
このバキューム法は、子宮内の胎嚢・胎児がある程度成長している段階に行うことが一般的だそうで、かなり初期の段階では吸引の力で子宮が傷つく恐れもあると説明されました。

私の場合、年齢のほかにも治療によるホルモン投与の影響、またバキューム法による手術の余波などもあったのかもしれませんが、手術を受けたこと自体、後悔をする気持ちは全くありません。

流産確定から3週間以上経っての手術でしたし、日に日に早く空へ帰してあげたいなという気持ちが強くなっていたこと。
そして、今回お世話になった病院のドクターやスタッフたちの印象がとても良かったことなどが挙げられますし、何よりも胎内を空っぽにしたら、気持ちはともかく身体は刻々と復旧作業を始めてくれることを実感できたからです。

少しずつ身体が復調するにつれ、私自身の気持ちも次回の挑戦へと上向いていってくれました。

流産、そしてそれにつながる手術は心身に少なからぬダメージを与えるものです。
でも、あなたはそこにいつまでもとどまっていることはできませんし、決してありません。

必ず信じる道を見つけ、そこから歩き始めるのです。

もし流産してしまったとしたら。
そこはあなたの分岐点。
きっと、またあなたはあなたの夢に向かって歩き始めます。



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