『ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢』
© 'All Rights Reserved "Copyright" Vienna Waits Productions, LLC.'"最近アメリカ映画はこういうドキュメンタリーが流行ってるのか、それとも日本でようやく公開されるようになったのかは分からないけれど、陳腐なラブストーリーや、ただ映像の迫力だけのアクション映画といったステレオタイプな作品より余程面白い。で、これはアメリカのすごさと言うかしたたかさだけれど、ブロードウェイと言う世界一有名で厳しいミュージカルの、しかも最高峰の作品「コーラスライン」の再演オーディションを、そのままドキュメンタリー映画にしてしまうんだから恐れ入る。また「コーラスライン」を選んだのはそれだけではないのだろう。いわゆるバックダンサーを選ぶオーディションをそのままミュージカルにしたのが「コーラスライン」なのだから。舞台の裏側を題材にした舞台の、本当の舞台裏をそのまま作品にしてしまった、これだけで観る価値ありだ。そして今回映画になった再演版のオーディション、集まった参加者3000人以上!しかもどこから来たのか尋ねてみれば、アメリカ各地のみならず、中にはオーストラリアと答える人もいる。そんな彼らはたった19枚の切符を手に入れるため、8ヶ月にも及ぶオーディションを受けるためだけにニューヨークへ、身一つでやってきた。今回のオーディション、経験は不問、踊れるならノンプロでも参加は認めてもらえたようだ。ブロードウェイデビュー。コーラスラインに賭ける夢。そしてそれこそがまさに「コーラスライン」という劇そのもの。しかしそれはプロだろうとも変わらない。むしろ今まで数々のオーディションで一喜一憂してきたプロだからこそ、端役でも欲しいという気持ちが分かるのだ。1次でかなりの数がふるいに掛けられてもなお数百名が2次に残り、ここからは役毎により細かなオーディションが進む。ここから始まるライバル同士の激しい戦いがすごい。日本人唯一のキャスト、高良さんなんてオリジナル版を演じた本人から裏でダメ出しされてるし、もはや一目惚れで役が内定してしまう人もいる。そして最終選考まで残った数十名は全員が役を貰ってもいいのではないかと思えるくらいに皆素晴らしい。しかしこうも厳しいものなのかと、そしてここまでしてもなお落とされてしまうのかと、客観的に観ている側からすればそう思える程に審査員の目はシビアで無情。これがプロ対プロの戦い。光と影が一瞬にして決まる。しかし落とされる側もまたそれを糧としていく。ミュージカルが人生の全てだとしても、これが最後ではない、明日へと続く道。彼らにも拍手を贈りたくなる。そして見事栄光を勝ち取った19人による再演は、ハリウッドのスーパースター達も訪れる程の盛況で、そして彼らが舞台に立つその瞬間、今までオーディションを観てきた我々は彼らと同じように感動を味わえるだろう。コーラスラインに架かった夢。それぞれの想いの熱さや言葉の全てがリアルだからこその本当の感動。エンターテインメントとしての魅せ方を知っているからこそ成り立つアメリカならではの映画だ。