小さな宝物

2007/10/22(月)16:27

『ニシノユキヒコの恋と冒険』川上弘美著

愛読書(798)

ニシノユキヒコの恋と冒険 145.ニシノユキヒコの恋と冒険 ニシノくん、幸彦、西野君、ユキヒコ…。姿よしセックスよし。女には一も二もなく優しく、懲りることを知らない。だけど最後には必ず去られてしまう。とめどないこの世に真実の愛を探してさまよった、男一匹ニシノユキヒコの恋とかなしみの道行きを、交情あった十人の女が思い語る。はてしなくしょうもないニシノの生きようが、切なく胸にせまる、傑作連作集。 「どうして僕はきちんと女のひとを愛せないんだろう。」 西野幸彦・・・とても女性に優しく本人も気づいていない望みを叶え        誰も愛さない残酷さを持ち合わせ、最後まで憎めない男が呟くセリフ。 この物語は10人の女性の視点から一人の男性のことが描かれています。 読んでいて本当どうしようもない人だなあって思う。 でも憎めないんですよね。 なんか、「ま、いっか」って気にさせてしまう、役得ですね。 彼は結局愛し合うということがどういうことか解らないままこの世を去ってしまいます。 最後まで女性に依存する人生なのに・・・そうか、依存か。 だからと言って執着する訳でもない。 自分を好きだと思う女の子を見つけるのが得意で彼女の望みを叶えるために 優しく時に体を求めたりする。 それは自分に恋人がいても相手に恋人がいてもおかまいなし。 そういう常識的なものは彼には通じないのだ。 彼は愛だけを求めて生きているから。 その割に仕事が出来たりすのがまた憎いんだけど(^^ゞ 女性にとってこういう男性って魅力的なんですよね。 一見そつがなくて優しくて。 でも付き合っていくとだんだんと本質が見えてくる。 この人は誰も愛せない人なんだ。私のことを愛してないんだ。 勘の良い女性だと最初から気がついて割り切って付き合ったり 遠ざけたりするような男性。 私は最初から近づかないタイプだけど(^^ゞ 彼が思春期に体験した特別な出来事が影響してるのかもしれないけど 彼の人を愛せない病は少し可愛そうになるくらい。 だから別れた女性達はみんな彼のことを恨んだりしない。 切なく懐かしく思い出したりはするけれどだれも彼の事を憎んでない。 それはそこに愛がなかったからなんだと思う。 どこか幻想的なもの・・・・しかそこにはなかった。 愛に似たものだったのかもしれないけど愛ではない。 だから女性達はみんなきれいな思い出が作れたんだろうなあ。 それにしても別れ際に必ず言う「結婚しよう」というセリフ。 笑っちゃうくらい彼のだめっぷりがよく表現されてると思いました。 一番共感出来た女性は「おやすみ」に出てくるマナミ。 彼の幸福を心から祈っていた女性。 たぶん西野幸彦は愛を知ることは出来なかったけど 幸福な人生だったんじゃないかなあって思います。 川上さんの本を読むのは2冊目なのですが以前読んだ「真鶴」より とても読みやすかったです。

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