2008/07/06(日)21:42
『何も持たず存在するということ』角田光代著
何も持たず存在するということ
171.何も持たず存在するということ
へらへらした大人になりたい。大仰さがまるでない大人に。切なく、おかしな、心の記録。最新エッセイ集。
角田光代さんのエッセイ集です。
年代的に近いせいか、何となく共感出来るなあって
ことが多くて小説とはまた違う等身大の角田さんが見えて
とても親近感が持てる一冊でした。
たくさんのエッセイが載っているのですが私が特に
心を動かされた2編を紹介します。
一つは日経ウーマンからの「本が写す自分」
本が好きな方なら誰しもがうん、うんと頷いてしまうんじゃ
ないかなあと思います。
『本はいつだって私たち自身の鏡なのだと思う。』
そうだなあって思いました。
本が好きな人ってたぶん、好きだから読んでいて
本を読んで心を豊かにしようとかそんなことを考えてはあまりいないと思う。
でも本の中に自分を見つけることはよくあると思う。
弱い自分、駄目な自分、頑張ってる自分、懐かしい自分、幸せな自分、
いろんな自分が本の中にいてその時々自分自身、ハっと
新しい自分を発見して驚いたりする。
本はそんな自分を映す鏡なんだなあって私も思います。
そしてそんな鏡を持ってることを大事にしたいなあって思いました。
もう一つが「違いにゆるがぬ強靱さ」
3ページ足らずの文章なのに涙がこぼれてしまいました。
『八日目の蝉』を書き終えてから書かれた読売新聞からの文章です。
『母になったとしてもならなかったとしても、
何かを持っていたとしても持っていなかったとしても、
そんなことに左右されない強靱さを、人は、私たちは、持っているはずである。』
書き写しててまた泣けてきた(^^ゞ
この文章に至るまでもすごく共感出来ます。
格差社会について書かれてるんだけど本当共感出来た。
人はみんなそれぞれ違って、それは当たり前のことで
みな同じことが、健全で幸福で豊かなことであるだろうかという問いかけ。
心にずっしりきました。
何となく社会からはみ出してはいけない、人並みの人生を
手に入れなくてはいけない、そうじゃないと自分は落ちこぼれで
駄目な人間で自分の存在に意味を持てなくなってしまう。
幼少の頃からそんな風に感じながら育ってきました。
そしていつも自分は人並みになれない劣等感を抱いていました。
私にもそんな強靱さがあるのかな。
心のずーっと奥の方にしまい込んじゃってるので、探して
埃を落とさなくちゃ・・・って思いました。