2009/01/18(日)22:30
『爆心』青来有一著
爆心
19.爆心
私がだれでありどこからきたのか、六十年以上の時が流れて私にはもう調べるすべもない。わかっているのは私は昭和二十年八月九日十一時二分の白い光の中から現れたことだけである。私の戸籍上の誕生日はその日になっている(「鳥」)。被爆地で生きる人々の原体験と、その後の日常を描く作品集。釘/石/虫/蜜/貝/鳥
被爆地・長崎を舞台に現代に生きる人の日常を描いています。
登場する人物の多くは信仰心を持った人で、そこから語られる被爆体験は
壮絶で神様は本当にいるんだろうか?というのが一つのテーマにもなっています。
それぞれの短編にそれぞれの色があり、人間の心の奥にある暗くてどろどろした部分が
会話や感情から伝わってきます。
爆心という題から戦争がテーマになった作品群なのかと思っていたのですが
戦争というよりは被爆という一生癒えない傷を抱えた人間とその子供がどう生きていくか。
そういう話が多かったです。
生と愛欲と狂気のコントラストが鮮やか。
印象に残ったのは「虫」と「貝」と「鳥」