小さな労働者@ベトナム
友人と行ったベトナム縦断ツアー、短期間で南から北へと縦断したのは、帰国後もかなり疲れが残ったが、ベトナム、とても楽しかった。同じツアーで、どうベトナムが見えるかは、人それぞれで、友人も私とは違い、あまりベトナムの暮らしに興味がない。私は世界遺産よりもグルメよりも、人々の暮らしに関心がある。まずホーチミンに着いて、バスから見たベトナムの人々は、家や商店の前に、Tシャツ半パン姿で、まったりするおじさんたちと、路上で野菜や果物、または観光客向けにいろいろな手工芸品を売る女性たちだった。失業率50パーセント、就業してない、就業できない人々が多く、路上でふらふらするか、バイクでふらふらするか。女性はとにかく家族のために何かして働く。(これはどの国でも共通かも?)そしてベトナムで過ごすうちに、私が特に目についたのは、小さな労働者だった。私たちのバスに乗って補助する役目をしていた青年は、日本なら中学生高校生の15歳~18歳くらいだった。ホテルの隣にあった大きなスーパーマーケットで、カートを片づけたり、警備したりする役目をしている男の子は、ぶかぶかの警備の制服をきた小学生に見えて、驚いた。路上で果物やいろいろな物を売る女の子も10代だろう。旅行会社の係員は地域によって変わる。最初から3人目までは30歳から35歳くらいの旅の仕事にも慣れた日本語も堪能なベトナム人男性だった。最後のハノイの男性係員は29歳だと言ったが、仕事して2年目になろうとする。案内も日本語もぎこちなかった。彼はハノイ近郊の貧しい農村の出身だった。食べ物はなんとかなったが、ほかが買えなくて平均月収1万2千円~2万円くらいのうち、低い方だったらしい。4人兄弟で大家族で住んでいるが、生活は厳しくて、父親は若い頃からベトナム戦争もあり、軍役があったり、仕事を探して村を離れ、年老いて村に戻った。教育は義務教育はあるが、国の支援が全くなく家計を圧迫していた。小学校5年中学校4年制だが、学校は毎月一人3000円くらいかかる。貧困家庭ゆえ、長兄は小学校を卒業して中学校に行かず働いたそうだ。そして次の姉も中学校1年でやめて働いた。第三子の兄は、上の二人の労働のおかげで高校卒業後働いて、その後大学に行った。末っ子の彼も働く兄たちのおかげで、高校を出て中国、日本の工場で働いた。そして勤勉な日本人たちと日本企業に憧れて、3年働いたお金で大学で日本語を習った。大学生の時も、一生懸命働かなくては生活できなくて、ひとり暮らしのお金もなくて、片道2時間の距離を毎日農村から通った。そして卒業して、何件か仕事を渡り、今の日本の旅行会社ベトナム支社に雇ってもらったらしい。みんな早く働くものだから、平均結婚年齢は20歳~22歳。家族兄弟みんな助け合って一緒に住んでいることが多いらしい。彼も就職してからやっとお嫁さんが来てくれたらしい。そして村で両親、兄家族、姉家族と一緒に住んでいると言う。ベトナムの若い女性たちが今一番良い結婚として考えてるのは、10代20代前半で、裕福なお年寄りの外国人と結婚することらしい。そして10年~15年くらい外国で結婚生活した後や配偶者が亡くなった後、遺産のドルを持って親のところに戻ることが夢と思うらしい。30代で母国に戻れば、家族にもお金のある余裕の生活を送らせてあげられるという。事実、高齢のアメリカ人とか、老後を共にしてくれる若い花嫁を探しに来るらしい。結婚は、手っ取り早い貧困からの脱却手段で、愛情云々とか言ってる場合じゃないんだろうな。ハノイの係員の彼も高校を出て働いている時に好きな人がいた。でもその時彼の月収は1万円、夫婦で働けど今後の生活が苦しいのは見えた。その彼女は月収3万円の高校の先輩と結婚したという、辛い経験の持ち主。で、今は、月収3万円弱になったというので、バスの中で拍手した。私が見た小さな労働者の理由が分かった。賄賂が当たり前に横行する社会、警察官が賄賂を一番多く取り、警察官の子が警察官に、公務員の子が公務員にと、優秀でも賄賂の払えない農村の子は地位のある仕事に就けないそうだ。よくある社会主義国の現実。10代から路上で毎日野菜や切り絵を売り、商売人に小間使いで仕えたり、あるいは夜のお店とか、風俗的なことをして、わずかなお金をすべて家族の生活費に充てて、学校は通えなくても若くしてまた貧しい家庭を持つ。校庭でサッカーボールを蹴り、水泳や習字を習い、ピアノを習い、自由に友人と遊ぶ日本の小学生、親のお金で塾に通う中学生とのギャップが大きすぎる。せめて看護士や美容師や栄養士やなにか資格の取れる学校に行けたら、彼らの未来は明るいのになと考えたが、やはり問題は教育費がないこと。路上のベトナムの子供たちは、そういう夢さえ知らず、親に言われるまま、学校にも行けないで、日銭頼りに働くのだろう。選択肢がない。もっと田舎にいけば、もっと貧しく、ストリートチルドレンもいると聞く。ベトナムも子どもの教育を充実しなければ、大きな国の発展はないだろう。この家庭の貧しさをどのように克服できるのだろう。いろいろなシーンで私たちの旅に関わる小さな労働者たちにわずかでもチップを渡さずにはいられない気持ちになった。ハノイのフランス料理屋でベトナムワインを頼んだツアーの40代の奥様、ワイングラスの注ぎ方が悪いと、食事しながら文句を言っていた。私はワインボトルを持ってきてグラスに注いだ店員が、飲酒する年齢にもなってない男の子だったのが、気になっていたのに。日本人はアジアの国々でどうやら横柄で傲慢になっていく。海外旅行で観光して美味しい物食べて、楽しければいいのではなく、アジアの国々がお互い興味・関心を持ち合い、発展できたらいいのになと感じた旅だった。ベトナムにマクドナルドハンバーガーの1号店が出来たというニュースあり。塾の前にハンバーガーを容易に食べられる日本の子供と違い、ベトナムの子のあこがれの店になるだろう。追記ベトナム、特にハノイには日本、韓国、中国の企業が最近どんどん工場を進出させている。でも労働条件は日本が一番素晴らしく、1日8時間限定でお給料も良い。韓国、中国に至っては、1日10時間、12時間が当たり前になり、さらに残業手当なしに延長有り、給料も低いらしい。それでベトナム人はみんな日本の企業の工場で働きたいと思っている。ベトナム支社の日本人たちは現地のベトナム人労働者にも丁寧で紳士的と聞いて、誇らしくて嬉しくなった。