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世界平和とお金のない世界 知恵の輪

世界平和とお金のない世界 知恵の輪

12歳の少年が世界を変える(後半)

<資源をどう使うか?>



「僕もこのシステムは素晴らしいと思いましたよ」

「これからの資源の使い方はこのシステムは大切だと思いました」

と栄治と美佐枝がコメントした。

「ところで、このシステムの規模は世界中同じなの?」

と素子が問いかけた。

「国や地域によって生活様式が違うから現状に合わせて作れば良いと思いますよ」

「早い話が循環型システムになればいいんですよね」

と稔が意見を書いた。

稔も地球全体のことがイメージできるようになったようです。

美佐枝が温暖化について

「一つ質問して良いですか?温暖化対策にも触れているけど、効果はあるのかしら?」

「CО2削減に限って考えてみたんですけどね、大規模リサイクルセンターの活躍で新規の生産が少なくなって生産工場の活動が減ると思うんです」

「それはエネルギーが分散されるだけで両方あわせれば同じじゃないですか?」

「専門的なことはわかりませんが大規模に生産するより小規模で生産するほうが公害を減らせる技術は可能だと思うんです」

考えてみればゴミの焼却でも大量のゴミより少量のゴミのほうが公害を起こさないシステムは作りやすいです。

「それに電化をもっと推進するべきだと思うんです」

「どうしてですか?今は出来るだけ節電をするようにしているけど」

「電気を使うことがいけないのではなく電気の発電方法が温暖化を助長しているんです」

「どういうことですか?」

稔を初めみんなが疑問を投げかけました。

「排気ガスが出る自動車より電気自動車が良いでしょ?」

「はい」

「石油や石炭や天然ガスを使った発電より水力や風力発電が良いでしょ?」

「はい」

「もしも、もしもですよ。フリーエネルギーが一般化して各家庭で発電できれば良いでしょ?」

「もちろんです」

この頃はフリーエネルギーは賛否両論あったものの一部で使われていました。

「各工場も大規模リサイクルセンターも出来るだけ電気モーターを採用すれば温暖化ガスを極力出さないように出来ると思うんです」

「そうですね、素晴らしい提案だと思うわ」

「大規模リサイクルセンターの実現がいままでの生産方法にも改善を促すってことですね」

「そう言うことです」

大規模リサイクルセンターの実現はいろんな分野を改善していくきっかけになるようです。

そして稔が

「僕んちでも電気が自由に作れるようになると電気代を気にしないで良いんですよね?」

「でも、遅くまで起きてちゃダメよ」

と素子が釘を刺した。

「はい」

経済活動はコストを第一に考えるけどコストを考えなければ良いことが沢山おきそうです。

それに

生産に必要な資源やエネルギーの問題も解決する手がかりが見つかるのでしょう。

自動車やバイクもエンジンからモーターへ全面的に移行する計画も持ち上がっているようで、部品製造の会社も激減すれば今より少ない資源で生産可能になりそうです。



        <奪い合いをなくすために>



「循環システムの次は流通のシステムの提案です。人件費は軍事費の一部から流用してもらうけどいつまでもというわけにも行かないので最初に提案したほうが良いと思うんです。だからお金のない世界への提案です」

~~~提案書原稿(3)~~~

世界平和が実現するために提案をさせていただいておりますが、基本的な提案をしたいと思います。

それは

「すべての提供者はお金を要求しない」

と言うことです。

物を提供する人や団体も技術を提供する人や団体もサービスを提供する人や団体もすべてボランティアです。

そうすれば

すべての人や物が自由に流通します。

利益のために人や物が動くのではなく平和のために人や物が動くのです。

国際支援団の活動が円滑になるだけでなく世界中の人々の交流が増えると言うことです。

温暖化や異常気象が続くと食糧不足や生産能力が陥ってしまうことがあります。

「有る所から無い所へ」

「余る所から不足する所へ」

物や人材が自由に行き来することが出来ます。

世界平和は人々の交流が基本です。

互いの文化を尊重し互いの不足を補う関係を作ること。

損得なしで行動できるシステムにしたいのです。

~~~提案書原稿(3)以上~~~


「温暖化もすぐには解決しませんが異常気象による食糧不足や生活必需品の生産不足が解決されないと困りますからね」

「そうなんです、お金のやり取りをしないと何も手に入れることが出来なければ奪い合いの戦争は続きますからね」

「お金を大切にする人たちから見たらどう思うんでしょうね?」

「お金を助け合いの道具に使ってる人たちが多いからね」

「自分が動けなくてもお金が代理になってくれる」

「だからこそ、もう一つの世界が必要なんですね」

お金がないと何も出来ないシステムから卒業するために何が必要か?



        <お金のない世界は世界一家>



「ついにお金を使わないシステムの提案が出てきましたね」

美佐枝が待ち構えたようにコメントした。

「お金のやり取りは本当に面倒くさいです。物に価値を付けなければ値段が決まりません。今すぐ欲しいものがあってもお金がないと手に入らない」

世界中で人や物が自由に行き来するためにはお金がないと何も出来ないシステムは不便です。世界が一つの家族のようになるにはどうすればよいか?

「助け合い、分かち合いの必要性はわかるんですけど、国レベルでも個人レベルでも自分の物は誰にも渡したくないっていう気持ちはどうすればいいですか?」

と栄治が疑問を書いた。

「提案の中に『互いの文化を尊重し』と書いたのは互いの生活に必要な思想やものを侵害しないという意味合いを持たせたんです」

「それはどういう意味ですか?」

「個人や国が必要とするものを奪ってはいけないという意味なんです」

そこで素子が質問した

「ものであれば所有権を侵害してはならないってことなの?」

「そうなんですけどね、所有権は廃止したほうが良いと思うんです」

「それは困るでしょう?」

「所有権を廃止するけど使用権(占有権)だけで良いと思うんですよ」

「どう違うの?」

「もう一つの世界の提案は世界平和とお金のない世界だけどね、地球は一つの家族と言う考え方なんです」

「あ!このあいだ言ってましたよね、家族だったらお金のやり取りはしないし、自分の物でも自分が使わなくなったら誰が使っても良いって」

と稔がコメントした。

「そうなんだよ。自分が使っている間は誰も奪ってはいけないけど管理が出来なくなれば誰かが自由に使っても良いって言うことです」

個人の所有地も国の所有地もゴミ屋敷が増えたり森林破壊が増えたり、管理が出来ないのに放置している状態が所有権の存在でおきている。

「だからね、 国でも個人でも使用権さえあれば他人や他国は侵害してはならないという決まりごとがあれば問題ないと思うんです。ただし『使っている間は大切に管理すること』が条件だけどね」

「循環型システムと同じですね」

「どういうこと?」

「地球と共存するためには必要な約束だと思ったんです」

「稔君もよくわかってきたね」

「ありがとうございます」

「お金のやり取りをしなくても資源の奪い合いが無くなるためには今以上の信頼関係が必要になってくるわね」

美佐枝が心配してコメントを入れた。

「それを助けてくれるのが国際支援団の活躍なんです。一つの地域に支援活動するのは200ヶ国以上の人たちが一団となって行動すれば世界が一つの家族のように理解しあえると思うんです」

「それは良いアイデアだと思うわね」

それぞれの国や地域に応じた環境と人々を大切にするということを幸夫は言いたかったようです。



        <家族のような世界>



200を超える国や地域の民族が家族のようになる世界って?
幸夫が続いて提案を出してきた。

「以前、世界中の民族の文化を尊重するという話をしましたが、信頼関係をもっと深めるために文化交流を盛んにしたら良いと思うんです。それが次の提案です」

~~~提案書原稿(4)~~~

生活のために人々の交流は大切ですが文化交流も大きな力を持っています。

文化交流は

互いが「自分を知ってもらう」ことです。

世界中に友人ができれば

子どもたちの笑顔を見たら・・・

戦争なんて考えられません。

音楽や芸術をはじめ生活文化など互いに紹介しあったり専門職の技術は多くの人に知って欲しいです。

私は子どもたちの声が大好きです。

人種を超えて歌う歌声は心が豊かになります。

その一つが

「What a Wonderful World」です。

(なんと素晴らしい世界だろう)

子どもたちが仲良くなれば大人も同じ。

「いつまでも平和でいたい」と思います。

軍隊も核もない世界は努力しなくても実現します。

世界は楽しいと思える環境を作ることです。

テレビ番組もユーチューブも大きな力です。

新しいもう一つの世界を創りましょう。

世界中でそう思うだけで実現します。

お金のない平和な世界です。

よろしくお願いします。

~~~提案書原稿(4)以上~~~


「国際支援団の役割はすべての民族が幸せに暮らせる環境を作る仕事だけど民族間の交流も大切ではないかと思うんです」

「そうね、好き嫌いは誰にもあるけど交流が好き嫌いを払拭してくれるかもしれないわね」

美佐枝がコメントした。



        <家族のありかた>



「文化交流は今でもいっぱいあるけど日本を知らない人たちも多いですよね」

「日本を知らない人たちも日本を嫌っている人たちも交流が増えれば解決しそうな気がします」

「僕もそう思います」

みんながコメントを書いた。

そこで稔が思い出したことを書いた。

「学校でいじめの話があったとき嫌いな人と好きな人の話があったんです。そのとき『嫌いな人は敵じゃない』って言ったんです」

「ほ~それはすごいじゃないの。どうしてそう思ったの?」

「僕は『人様に迷惑をかけてはいけない』って教わりました。でもね友だちに何か言おうとしても『迷惑になるんじゃないか?』って思うようになったんです。それでね『人が喜ぶことをしよう』が良いんじゃないかって思ったんです」

「一緒に楽しめれば迷惑をかけずに相手も喜ぶってことね?」

「そうなんです、幸夫さんの交流の話を見てそれを思い出したんです」

そこで素子が

「私も子供の頃から『人様に迷惑をかけてはいけない』ってしつこく言われたものよ。だから人と接することはなるだけ避けてきたわ。稔君の言う通りよね、良い話をありがとう」

「稔君もいろいろ経験しているんだね」

と栄治も一言書いた。

「ありがとうございます」

利益を上げるために働いている栄治が

「たしかに今までは損得勘定で生きてきたから、損することは出来るだけ避けて、自分にとって得する相手を味方のように接してきたんだよね」

「これからは敵も味方も作らないほうがいいですね。敵と思うから争いになるんですね」

と美佐枝がコメントした。

「稔君が言ったように『人が喜ぶことをしよう』と言うのは人が喜んでもらえる行為は自分のためでもあるんですよね。そういう人たちが自分をいじめることなんてありえないですからね。そこでこんなことを考えたんです。お金の要る世界が損得勘定で生きるのならお金のない世界は尊徳感情で生きていける。だからお金のない世界のほうが自分らしく生きていけるんじゃないかなって」

「そうですね、稔君の一言でいつも考えさせられますね♪。ところで、提案書の原稿はこれで終了ですか?」

「いえ、あと一つあります」

「それでは最後の部分を書きますね」

~~~提案書原稿(5)~~~

最後にみなさんにもう一度イメージしていただきたいことがあります。

一つの時代に二つの世界を作ることです。

今のお金の要る世界とお金を使わないもう一つの世界です。 

戦争も貧困も飢餓も核もあるこの世界に、戦争も貧困も飢餓も核もない世界を作ります。

同じ時代に二つの世界を作ろうと言う訳です。

もう一つの世界は世界中が手をつなぎます。

世界中の情報をまとめるには国連が必要です。

ここにおられるみなさんの力が必要です。

僕は12年前日本で生まれて日本で育ちました。

日本の食事「和食」がユネスコ無形文化遺産になりました。

僕は日本の心「和をもって貴しとなす」が大好きです。

意味は

「何ごとをやるにも、みんなが仲良くやり、いさかいを起こさないのが良い」

と言うことです。

今までは

軍事力で世界平和を訴えていますが、

これからは

「和をもって尊しとなす」を実践してこの言葉がユネスコ無形文化遺産になるように頑張りたいです。

二つの世界は二階建ての家のようにお金の要る社会とお金のない社会が同居します。

お手本の社会を創ると言うことです。

お金のない社会が軌道に乗ればお金の要る社会は崩壊します。

それで

本当の世界平和が実現するんです。

よろしくお願いします。

大切な時間をいただいてありがとうございました。

~~~提案書原稿(5)以上~~~


「提案書は以上で最後になります」

「幸夫さん、12年前の誕生って僕のことですか?」

稔がびっくりして質問をした。

「そうだよ」

「え~、ダメですよ」

「大丈夫だよ、今の稔君だったらみんなの意見を発表できるよ」

「そうですか?国連には一度行ってみたいと思ったことがあるけど」

「稔君なら大丈夫よ」

「稔君だからこそ世界の人たちに感動を与えると思うよ」

「日本の心を世界の人たちに知ってもらえることは良いことですね」

「平和の『和』を知ってもらうことも大切なことかもしれないわね」

「それを12歳の稔君が伝えることも良いことですね」

参加した全員が賛同してコメントした。

お金の要る世界にもう一つのお金のない世界を作るという提案は稔だったから打って付けなのかもしれない。



        <学校で未来を学ぶ>



「さて、幸夫さんが書いてくださった提案書だけど内容について変更とか書き足しとかありますか?」

素子が全員の意見を聞いてみた。

「細かいことまで書き足したら文章が長くなって聞く人の感動が薄れてしまうと思いますよ」

「私もそう思います。細かい内容は『やる』と決まってから提案したら良いと思いますよ」

「そうですね、とりあえずこの文章で提案書にしたいと思います」

みんなの意見が一致したところで次の話題に進むことにした。

「さて、すぐには国連で演説することは叶いませんがこの計画を多くの人に知ってもらうことが必要です」

「国連で演説することを知ってもらうんですか?」

「それも大切ですが、もっと大切なのは世界平和の実現が可能だと思ってもらうことね」

「世界平和になれば自衛隊の活動も要らないし、難民の受け入れも悩まなくても良いし、領土問題も飢餓や貧困も無くなりますもんね」

「そうですね、世界平和が実現する方法を話し合えば提案書の内容が理解できますよね」

「ところで稔君は学校で平和について話し合ったことがある?」

「はい、社会の時間で勉強しました」

「どんな勉強したんだろう?」

「近ごろは自衛隊の必要性なんかも教えるんじゃないの?」

「政府が言う積極的平和主義は自衛隊の必要性と言うくらいだからね」

「積極的に平和を訴えるのなら軍隊を廃止できる環境を作れば良いのにね」

それぞれ意見が出たところで稔がコメントした。

「学校で提案してみようと思うんですけど」

「何をですか?」

「幸夫さんが作ってくれた提案書を授業で取り上げてくださいって」

「良いかもしれないわね」

「僕が国連で発表するって言っても良いですか?」

「先生は本気にしないだろうけど提案書の内容をみんなで考えてみるのは良いと思うよ」

「じゃあ先生に提案書を見てもらってお願いしてみます」

稔は提案書をプリントして翌日担任の先生に見てもらうことにした。


先生は一度読んでみて

「わかった、職員会議で提案してみるよ」

と快諾してくれた。

数日後稔は職員室に呼ばれた。

「稔君、会議で話し合ったんだけどね、小学生レベルで考えることなのか疑問に思う先生もいるんだよ」

「僕はインターネットで大人の人たちと一緒に考えて国連で僕が発表しようと決めたんです」

「え!そうなの?」

「はい!」

「それじゃあ、もう一度会議で話し合ってみるよ、稔君はもう決めているんだね」

「はい」

「もうしばらく待ってね」

「はい、お願いします」

稔は自分が本気であることを先生に伝えた。

先生も稔の想いを大切にしようともう一度会議で取り上げる気持ちになった。

小学校の職員会議では小学生が国連で演説することなどありえないと一笑していたが特別活動としてなら学ぶ価値はあると判断しました。

そして一週間後稔は職員室へ呼ばれた。

「稔君、やっと許可が下りたよ。特別活動の中で勉強して良いって。良かったな。近いうちみんなで勉強しような」

「はい!ありがとうございます」

帰宅した稔はさっそくインターネットを開いてコメントを書いておいた。

「皆さん学校で提案書を取り上げて勉強することになりました。特別活動だけど」

しばらくして素子が

「そう、良かったわね。で、先生は何か言わなかった?」

「僕が国連で演説しますって言ったら笑ってました」

「でしょうね(笑)みんなが考えてもらえれば大人も考えてくれると思うわ」

「そうなると良いです」

「ところで、特別活動って何なの?」

「教科書のない勉強です」

「どんな勉強するの?」

「道徳とか社会の一員としての体験とかです」

「へ~そうなの?」

素子は古い教育を受けていたのでわからなかった。

「それなら、提案書は良い教科書になるわね(笑)」

しばらくして参加者全員が稔の報告に喜びのコメントを入れた。

そして

「良いことが起きそうなので皆さんも提案書の原稿を拡散しましょうよ」

と美佐枝が意見を書いた。

「そうですね、それと同時に各政党やテレビ局の番組などに取り上げてもらえるように投稿しませんか?」

「良いですね、ぜひやってみましょうよ」

「マスコミ関係の人が協力してくれると早く広がると思いますね」

幸夫も栄治も前向きな意見を書いた。

「それではみんなで提案書の拡散と稔君の学校での勉強会を中心に活動してみましょう」

「賛成です」

「それでは時々状況報告会をやることにして散会します」

「状況報告会は定期的にするんですか?」

「いえ、報告したいと思った時に書いてくださればOKですよ。お互い忙しいでしょうから」

「そうですね。見るだけなら毎日でも出来ます」

「では、そういうことで」

稔は学校の特別活動でどのように意見を言ってくれるのか気になっていた。

インターネットでは反対意見はほとんどなく楽しく意見交換が出来たからである。

そしてその日が訪れた。

「稔君から提案書が出されました。それは『世界平和とお金のない世界』です」

「え~!」クラス全員が叫んだ。

「みんなはインターネットをやってますか?」

「はい」

「稔君はインターネットで大人の人たちと世界平和について話し合ったそうです。そして世界の人たちに世界平和を実現しようと提案書を作りました。その提案書がこれです。コピーしたのでみんなで一枚ずつ取ってください」

さあ授業が始まりました。



        <小学生の意見は>



プリントが配られてみんながざわついた。

「みんなは世界平和ってどんな世界かわかりますか?」

先生がみんなに質問をした。

「はい、世界から戦争がなくなることです」

「世界中の人たちが仲良くすることです」

「困っている人たちがいたら助けてあげることです」

生徒たちはそれぞれ思っていることを言った。

「ところで、提案書を見てビックリしたと思うけど、お金のない世界の話も書いてあります。先生も今まで考えたことのない世界だけど稔君はどうしてお金のない世界を考えたの?」

「それは大人の人たちが物々交換をしなければ良いって言ったんです」

「ほ~、物々交換ね。現在は文明が発達して物々交換はしないよ」

「それも僕が言ったんですけどね、お金は物々交換を便利にしたけど物々交換は今でも続いているんだって」

「なるほど、交換社会は今でも確かにあるね」

「先生、お金は何でも交換できる便利な道具だと聞いたことがあります」

と一人の生徒が発言した。

「たしかに。そうだよね。ところで稔君はどう思ったの?」

「はい、世界平和は世界中の人たちが家族のようになったら良いという話しになって、家族は物々交換なんてしないという話になったんです」

「なるほどね、70億人が一つの家族という考え方だね。みんなはこの意見をどう思いますか?」

「僕は宇宙のことが大好きで宇宙から撮った地球の写真を見て『こんな小さな惑星に僕たちがいるんだ』って思いました。それを思い出したら一つの家族と思ったほうが良いと思います」

「家族の中でもケンカはあるから戦争もあるかもしれません」

「そうだね、いろんな意見があるからケンカもあるよね、それが文化も言葉も考え方も違えば戦争が起きるかもしれないね。そう言うことは提案書にも書いてあったね。え~っと、これだ『互いの文化を尊重し、互いの不足を補う関係を作ること。損得なしで行動できるシステムにしたいのです。世界中で支え合いの関係が築かれれば飢餓も貧困もなくなり軍隊は不要になります』ここに書いてあったね」

「先生、この文章もそうだと思います。『世界平和は「支え合い」「分かち合い」の世界です。互いが互いを必要とし助け合っているのです』」

「そうだね、ケンカしても互いが必要な人だったら戦争で殺し合いはしないよね」

「先生、世界平和はなぜ実現しないんですか?」

女子生徒が疑問を投げかけた。

「そうだね、誰もが願っているのにいまだに実現しないのはなぜなんだろうね?」

「先生も子供のころ世界平和について勉強したことがあるんですか?」

「そうだよ、みんなと同じように戦争の悲惨さも世界平和の素晴らしさも勉強したよ」

「先生、こうしたらどうですか。今まで世界平和が実現しなかった理由を考えるのを宿題にしたら」

「そうだね、みんながおうちに帰ってお父さんやお母さんと話し合ったり、インターネットで調べてみたりするのも良いね」

先生は生徒に宿題を与え、授業の内容を職員会議で発表した。


稔は帰宅するとインターネットを開いて仲間たちへ状況報告した。

「みなさん、学校で提案書の勉強会をしました。そしたら先生が『世界平和はなぜ実現しないのか?』という宿題を出されました」

しばらくして栄治が

「学校の先生にも答えは見つからないんだろうね」

とコメントして稔が応えた。

「とりあえず、みんなが親に聞いたりインターネットで理由を探そうと言うことになりました」

しばらくして参加者が集まり意見交換した。

「世界平和が実現するとお金儲けができなくなるという人たちもいるよね」

「それは戦争兵器を作る会社でしょ?」

「そこで働いている人たちは死活問題よね」

「戦争は無いほうが良いけど戦争が無くなると困る人たちがいるということですよね」

「殺すための道具を作る人たちと、敵から自国を守る人たちの生活がかかっているってことね」

そこで稔はみんなに質問をした。

「いままで世界平和が実現しなかったのは戦争が無くなると困る人たちが多かったからですか?」

「そうだね。結論はそういうことかな~」

「それだけじゃないでしょう」

「心の問題とか考え方の問題もあるんじゃないですか?」

「やっぱりお金の要る経済活動の中では心も思考も敵味方にわかれて判断するんじゃないかな~」

「だから僕が提案したようにもう一つの世界が出来たら良いってことですよね」

「そうだよね、いまの社会システムの中では世界平和は夢物語になってしまうよね」

「経済活動の中でしか考えられない人は世界平和は不可能だと思っていると思うよ」

「やっぱりそうなんですね」

稔はわかっていたことだけど宿題の答えを書くには難しすぎた。

数日後宿題の発表会をした。

「みなさん、宿題の答えの用紙を集めてください」

後ろから集めた用紙を先生がファイルに収めた。

「みんなの答えはあとから先生が読んでまとめます。ところで、調べてみた感想をみんなに発表してもらいたいんだ」

「え~」みんなは驚いた。

「みんなの答えは尊重するよ。でも、紙には書いていないみんなの気持ちを聞きたいんだよ」

「そうなんですか。それなら言いたいことがいっぱいあります(笑)」

「何でも良いから言ってくれ」

みんなは手を挙げて言いたいことを順番に言った。

「大人はずるいと思いました。世界平和は自分とは関係ないってお父さんが言ってました」

「僕の父さんも言ってたよ」

「僕のお父さんは子供の頃から世界平和になったら良いって思ってたけどいつのまにか大人になって何も出来なかったって言ってました」

「大人のずるさが出ているんだね、他には?」

「大人も子供と同じところを見つけました」

「何を見つけたの?」

「面倒くさいことはしたくないから出来ない理由を考えているってことです」

「へ~、何だろう?」

「それはね、私が買い物を頼まれて行きたくないから『いま宿題やってるから行けない』と言ったときと同じなんです」

「うんうん、それで」

「世界平和なんて難しいじゃないですか、お父さんはボランティア活動もしているけど会社の仕事が忙しくて私たちと遊ぶ時間がないんです。たまに休んでいるときも『仕事で疲れているから』って私たちと遊ぶことができないし、世界平和なんて考えもしないんです」

「そうだね。仕事を優先するから子供のことや世界平和のことまで考える暇がないんだね。ほかに意見のある人いますか?」

「はい!」

「稔君どうぞ」

「はい、みんなの話を聞いて思い出したんですけど、インターネットでいろいろ調べたり大人の人とお話して思ったことなんですけどね。夢や希望を言う人は多いのに夢や希望が実現するために行動する人はほとんどいないってことです。それと政府の批判や愚痴を言ってる人も多かったです」

「そっか~、なるほどね。みんなもありがとう」

世界平和は誰もが望むことなのに世界平和のために行動を起こすことが出来ない理由をいっぱい持っているようです。

先生は生徒たちの本音を聞いたのち宿題の答えを読みながら違う視点で生徒たちに考えるきっかけを考えていた。



        <意識改革を知る>



次の特別活動の授業では先生があらかじめプリントを生徒全員の机に配っていた。

そのプリントには生徒たちに考えて欲しい内容が書かれていた。

「このあいだ、みんなの意見を聞いてとても参考になりました。ありがとう。きょうは先生とみんなが一緒に考えて欲しいことを書いてプリントにしました。これは、みんなの意見と稔君からもらった提案書を参考に書いたものです。一度先生が読むから一緒に目を通してください」

~~~~~~~

世界平和はなぜ実現しないのか?

それは大きな錯覚から来ているのかもしれない。

自愛や愛国心。

自分が第一 自国が第一

それは

自分さえ良ければ良い

自国さえ良ければ良い

愛の勘違いだったのかもしれない。

愛はすべてを大切にする心。

自分を大切にしたいのなら周りの人を大切にすること。

周りの人を大切にすると周りの人は自分を大切にしてくれる。

自国を大切にしたいのなら他国を大切にすること。

他国を大切にすると他国は自国を大切にしてくれる。

お金の要る経済活動は自分や自国を最優先に考えてしまう。

自分が幸せにならないと周りの人を幸せにしてあげることが出来ない。

できれば世界中が一緒に幸せになったほうが良いんじゃないか。

~~~~~~~

「ざっと読んだけどわからないところはありますか?」

「大きな錯覚って何ですか?」

「たとえば自愛と愛国心で言うと・・・ところで『愛』ってわかるよね?」

「え~っと、好きってことですか?」

「それもあるけど、大切にする心なんだよ」

「へ~」

「続けるよ、自愛は自分を大切にする、愛国心は自分の住んでいる国を大切にする。ここまでわかるね?」

「はい」

「自分を大切にするために他人を犠牲にしたり自分が住んでいる国を大切にするために他国を利用して自分の国の利益ばかりを追求する。ここまでわかりますか?」

「はい、なんとなくわかります。このあいだテレビでTPPのニュースを見ていたとき父さんが『日本が損をしないように交渉してるのか?』って言ってました」

「これも愛国心からくるんだろうね」

「これのどこが大きな錯覚なんですか?」

「では、続きを読むよ。自分さえ良ければ良い、自国さえ良ければ良いという所です」

「自分さえって考えている人は少ないと思いますよ」

「では、貯金を考えてみるよ。みんなは貯金をしていますか?」

「お年玉はまだ少し残ってます」

彼の言葉で大爆笑を誘った。

「世界中に貧困や飢餓があるのは知っているよね」

「はい。授業で習いました」

「貧困や飢餓の人たちから見たらどうだろう?」

「でも、貯金していないと困ることになるよってお母さんに言われたよ」

「そうだよね。これは当たり前のことだよね。自分さえ良ければ良いって思っていないのにお金が無くて生きることさえ出来ない人たちから見たら?」

「貯金するお金があるなら分けてくださいって言うでしょうね」

「そこなんだよ。提案書を読んでみてみんなにも考えて欲しかったことなんだよ」

「自分が良くなるために誰かを犠牲にしてはいけないってことですか?」

「そうなんだよ」



        <自分と他人の関係>



先生は生徒たちに言いたかったことはまだあったようです。

「君たちにもう一つこれから連想してもらいたいことがあるんだ。それはね、いじめの問題なんだ」

「いじめの問題と関係あるんですか?」

「この文章を考えて欲しいんだよ『自分を大切にしたいのなら周りの人を大切にすること。周りの人を大切にすると周りの人は自分を大切にしてくれる』」

「いじめることは人を大切にしないからですか?」

「そうだね、さっき『愛』の話があったよね。嫌いな人は愛せないって。愛は大切にする心とも言ったけど。『敵を作らない』ということを言いたかったんです。これは稔君の意見を参考にしました」

「敵を作らないほうが良いって、どういうことですか?」

「それはね、敵を作るとやっつけたくなるんだよ」

「味方は大切にするけど敵は大切にしないってことですよね」

「そうなんだよ。きらいな人でも敵ではなかったらいじめたりすることはないんだよ」

「そっか~!」

「世界でも敵がいなかったら戦争だって起きないだろ?」

生徒たちは世界平和の話からいじめの話に納得がいった。

「稔君はインターネットで大人の人たちとほかにどんな話をしたんだい?」

「世界平和は戦争をしないことだけど、敵を作らないためには家族のように必要としあう関係が良いって言うことでした。人様に迷惑をかけてはいけないことも大切だけど人が喜ぶことをしようというのも大切だって」

「稔君が言ったように学校では人に迷惑をかけてはいけないって教えるけど人が喜ぶことをしようと積極的に教えなかった気もするよ。これは教育委員会にも提言しようと思う。そこでみんなに提案なんだけどね、稔君を国連へ行かせようと思うんだ」

「え~!」

生徒全員がビックリして驚きの声をあげた。

「この世界平和の提案書は稔君の大人の友だちが作ってくれたものだけどね、稔君が国連で発表するために作ったそうなんだ」

またまた生徒たちは驚いた。

子供が国連へ行くなんて、誰も思ってもいないことだったからである。

「君たちの未来のためにも世界平和を実現したいし、僕たちの仲間が国連で演説をする姿を見たいじゃないか」

「はい!賛成で~す」

教室は歓声と拍手で満たされた。

「そこで、みんなにお願いがあるんだ。インターネットを使って世界平和の提案書を拡散してもらいたいんだよ」

「どうすれば良いんですか?」

「スマホでもパソコンでも良いから提案書を見てもらえるように働きかけるんだよ。そして『僕たちの仲間が国連で演説できるように協力してください』ってね」

「なんか難しいことでもするんじゃないかって思っていたけど、こんなことなら簡単だから誰もが出来ると思います」

教室の仲間たちは稔の提案に賛同して協力をしてくれることになった。

稔は帰宅するとさっそくインターネットを開いて仲間に報告文章を書き込んだ。

「みなさん、学校でクラス全員がインターネットで世界平和の提案書を拡散してくれることになりました」

書き込んだあとしばらく待っていたが誰も書き込みが無かったので電源を切って宿題を済ませることにした。

数時間後インターネットでは素子と美佐枝が会話を始めていた。

「稔君ご苦労様。朗報をありがとう」

「稔君が学校で活躍しているみたいですね」

「そうね、提案書の拡散は私たちもやっているけど学校の仲間たちも参加してくれれば広がりは早いですね」

そして幸夫も栄治も会話に加わった。

「稔君やったじゃないか」

「提案書の内容も良かったんじゃないですか?」

「そうかな~?」

「そうですとも、あの内容だったら私も取り上げてもらえると思いましたよ」

「ところで、稔君はどうしているんだろうね」

「勉強もあるし大変でしょうね」

「私たちも拡散以外に何か出来ることは無いかしら?」

「幸夫さんが以前いろんな所に提案したことがあるって言われましたよね」

「循環型システムの提案とか各政党やテレビ局に出したけどね」

「世界平和の提案書も出したらどうでしょう?」

「みんなで出したら取り上げてもらえるかもしれませんね」

「それぞれ分担して提案書を出しましょうよ」

「そうですね、テレビ局と各政党、それに国連関係や世界平和を訴えている団体とかのホームページを探して一覧表にしてみましょうか?」

「まずそれからですね」

「こんにちは」

「あら、稔さんこんにちは」

稔が参加した。

「次の作戦会議ですか?」

「そうだよ、稔君が学校で頑張ってるから僕たち大人も頑張らなくっちゃね」

「ありがとうございます。学校では先生が教育委員会へ提案するとかクラス全員がインターネットで拡散しようということになりました」

「すごい成果だよね。だからこそ僕たちも頑張らないといけないよね」

世界平和の提案書が拡散され、政治家やテレビ局などに提案投稿されることになりました。



        <拡散とテレビ局の取材>



翌日、幸夫が各政党とテレビ局のブログを探し出し一覧表を作って提示した。

「幸夫さんご苦労様です。ありがとうございます」

「稔君、こんにちは。各政党とテレビ局への提案投稿は僕と栄治君と素子さんと美佐枝さんの4人でやるから稔君はこの一覧表にない所を探してくれないか?」

「はい、わかりました」

その日はこれからの行動を確認しあった。

いまの政治家が興味を持ってくれるのか?

政治家は理想を語るが理想を実現する気はない。

それは

立候補するときの政見がいつまでも実現しないことで実証されているからである。

それは参加者みんなが理解していることではあったが、やれることは何でもやってみることに異論は無かった。

テレビ局へ提案投稿するとブログのアクセス数が異常に増えていることがあった。

あきらかに関係者が訪問して確認していることがわかった。

各政党への提案投稿は相変わらず

「ご提案ありがとうございます。参考にさせていただきます」

などお決まりの返事で対処していた。

「皆さん、その後の反応はどうですか?」

素子がコメントを入れた。

しばらくして栄治が

「応援していますよってけっこうコメントがありましたよ」

「それは良かったですね。私のブログでも応援メッセージがありましたよ。ほかの人たちのところも支援者が多いといいですね」

「楽しみです」

しばらくして稔が

「学校でこんな話がありました。それは友達のお父さんがテレビ局で働いているんですけどね、テレビ局で話題になって僕を取材したいって言うことになりました。どうしたらいいですか?」

栄治がビックリして

「それはまたとないチャンスじゃないか」

素子は

「稔君、良い話だけどご両親に相談してから返事したほうがいいですよ」

と返事を書いた。

「やっぱりそうですよね。お父さんとお母さんに言ってから決めます」

稔は父親が単身赴任で県外にいるのでいつも相談事はメールでやり取りをしていた。

さっそく事態の経緯を書いてメール送信して返事を待った。

しばらくして父親から返事が届いた。

「元気そうで何よりです。大体のことはわかったよ。お父さんは稔君がこんなに真剣に取り組んでいることが嬉しいよ。お父さんは大賛成だよ。お母さんにも了解をもらわなきゃいけないよ。取材する人が家に来るかもしれないからね。それから『お父さんは大賛成』と言っておいてね」

稔は「ありがとう」と返事メールを送った。

母親にも了解をもらってから稔はインターネットの仲間たちに報告した。

「みなさん、お父さんとお母さんに了解をもらいました。明日学校で友達にOKの返事をします」

ローカルのテレビ番組とはいえ、多くの人に知ってもらえるきっかけになる可能性が出てきた。

稔は学校へ行くとさっそく友達に取材OKの話をした。

そして担任の先生にも報告すると「良かったな~、頑張れよ。応援してるからな」と言ってくれた。

翌日テレビ局から稔の自宅へ電話がかかった。

「テレビ局のものですが、希望さんのお宅ですか?」

「はい」

「稔君のお母さんですか?」

「はい、そうです」

「取材の承諾をしていただいてありがとうございます。3日後の夕方7時から二時間伺いたいのですがご都合はよろしいでしょうか?」

「はい、いいですよ」

「でわ、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」

テレビ局の取材日時が決まった。

その日の夕方

学校から帰った稔はお母さんから

「テレビ局の人から電話があって、3日後の夕方7時から二時間取材に来るってよ。部屋の掃除をしておいてね」

と言われ「うん。わかった」と自分の部屋に行った。

稔は部屋に入ったとたんパソコンの電源を入れた。

「どうしよう。どうしよう」

とつぶやきながら。

いつもの掲示板を開いて

「みなさん、ついに取材の日にちが決まりました。3日後の夜です。何を話していいのかわかりませんあせってます」

と書き込んだが誰もコメントを書いてくれなかった。

その夜パソコンを覗いてみるとみんながコメントを入れていた。

「稔君よかったね、あせらなくても大丈夫だよ」

「ついにやってきたね。思っていること話せば良いよ」

「大丈夫よ。ここで話すように話せば良いのよ」

「カメラに向かって話しちゃダメよ。質問した人の目を見ながら話してね」

「みなさん、ありがとうございます」

そして

3日後その日が来た。

「こんばんは。テレビ局のものですが」

「は~い」

稔のお母さんが玄関に迎えに出た。

お母さんは昼間のうちに美容院で髪のセットとメイクをしっかりしていた。

「こんばんは。きょうはよろしくお願いします」

男性カメラマンと女性レポーターの二人が玄関の前に立っていた。

「こちらこそよろしく、どうぞこちらへ」

と二階の稔の部屋に案内した。

「稔君こんばんは」

「あ!はい、こんばんは」

「よろしくお願いしますね」

「はい、お願いします」

稔は緊張して深呼吸をした。

「稔君は星が好きなの?」

「はい」

レポーターは稔の緊張をとぎほぐすように部屋の写真を見て言った。

「僕は宇宙が好きで天体写真なんか飾るのが好きなんです」

「そう、いいわね~」

「これがプレアデス星団でこちらがアンドロメダ星雲です。そしてこっちがオリオン大星雲です」

「まあ、きれいな色ね」

レポーターはカメラの準備が済み、稔の緊張もほぐれたところで稔の前にマイクを差し出して

「ちょっとテストするからお話してくれる?」

「はい」

「マイクの音量を確かめないとね。きょうは二人だけだから大変なの」

と笑って穏やかな雰囲気になった。

「それでは稔君に質問しますね」

「はい」

取材が始まった。



        <稔君は何を語る?>



女性リポーターは国連で演説する「世界平和の提案書」の原稿を手に持って稔に質問をした。

「この提案書は素晴らしいことが書いてあるけど稔君が書いたの?」

「いえ、僕じゃないです。インターネットで知り合った幸夫さんに書いてもらいました」

「そう、ところで稔君はどうしてこういう話に興味があったの?」

「それは~、借金がきっかけなんです」

「借金?・・・誰の?」

「僕じゃないですよ。国の借金です」

「国の借金からこんな話になるなんて不思議ね、ハハハハごめんなさいね。どうしてなんだろう?」

「国の借金は僕たち国民が返さなきゃいけないって聞いたんです」

「それで?」

「僕は借りたことのない借金を返さなきゃいけないのが不思議でインターネットで大人の人に聞いてみたんです」

「はい、それで?」

「物々交換をやめなきゃいけないって」

「え?」

「僕も『え?』って思いましたよ、ハハハハ」

「ですよね」

「お金は物々交換を便利にしただけだって。物々交換はいまでも続いているんだって」

「そう言われるとそうよね」

「でしょ?。だから世界中が家族のようにならなきゃいけないって」

「どうして?」

「家族は物々交換もお金のやり取りをしないでしょ?」

「そう言われるとそうよね」

「世界中の人たちが家族のようになればお金のやり取りもしないし世界平和も実現するんだって」

「な~るほど。稔君のお話聞いていると学校の先生のお話を聞いているみたい。ハハハハ」

「そうですか?ハハハハ」

「提案書を読んでみてお金のない世界の話が書いてあるけど稔君の言葉で聞くと説得力があったわ」

「そうですか?」

「稔君が国連で演説するって聞いたけど稔君なら大丈夫ね」

「そうですか?」

「稔君とお話している大人の人たちはどんな人たちなの?」

「栄治さんと幸夫さんと美佐枝さんと素子さんです」

「へ~、いろんな人たちがいるんですね」

「はい、インターネットでお話しすると時々いろんな人が意見を書いてくれるので勉強になります」

「インターネットで遊ぶ人が多いのに稔君は素晴らしい社会勉強をしているのね。借金の話から世界平和の話になるまで稔君はどう思ったの?」

「どう思ったかって?」

「世界平和を望む人が多かったと思うの、どんな意見が多かったの?」

「世界平和を望む人は多いのに実現しないと思っている人が多かったです」

「それでも稔君の仲間たちは世界平和が実現するって思っていたのね」

「はい、実現しないと思っている人は実現しない理由ばかりを言っていたんです」

「そうなの、私もその一人かもしれないわね。世界平和を望んでいるのに可能性を信じていない自分があるから」

「僕は借金で苦しむのがイヤだから世界平和の実現をしたいんです」

「それが一番の力ね」

二人の会話は趣味の話や宇宙の話で時間が過ぎていき・・・・

「そろそろ終わりになりますが、稔君が国連で演説できるように応援してるね。今回は本当にありがとうございました」

「ありがとうございました」

取材班は後片付けをしながら

「3日後の夕方ニュースで流しますから見てね」

と言って家族に挨拶して帰って行った。

取材を終えた稔は早速インターネットを開いてみんなに報告メッセージを書いた。

「みなさん、やっと取材が終わりました。緊張して何を話したか覚えていません(笑)きょうは疲れたのでもう寝ます。放送は3日後の夕方だそうです。何分放送されるかわからないけど録画しておきます。おやすみなさい」

そして数分後稔が電源を切ったあと仲間たちからコメントが書き込まれた。

「稔君ご苦労様、ゆっくり休んでね」

「稔君やったね、放送が楽しみだね。お休み」

「稔君の勇気に励まされるよ。ありがとう。ゆっくり休んでください」

「みのるくん、おやすみ~♪」

翌日学校から帰った稔は宿題を済ませパソコンに向かった。

電源を入れて掲示板を見ると

仲間以外にも多くの人たちのコメントが書かれていた。

嬉しくなった稔はコメントを書いた。

「みなさん、こんにちは。たくさんのコメントありがとうございます。とっても嬉いです」

放送当日の朝、稔はお母さんの声で目が覚めた。

「みのる~起きて、新聞のテレビ欄に載ってるよ『12歳の少年が国連で演説』って」

「え~?」

「まだ決まってないのにね」

「なんだよ、?マークが付いてるじゃないか」

「あらホント」

学校では稔のテレビ出演の話題で持ちきりです。

先生が「今日はみんなでしっかり見ようね」と言ってくれた。

ついに放送時間が訪れた。

稔は放送時間の5分前からDVDの録画を始めていた。

仲間との約束で録画を忘れないように。

番組が始まった。

稔の出番はすぐではなかった。

県内のニュースや天気予報があって身近な話題のコーナーが始まった。

コーナーのタイトルは「12歳の少年が国連で演説!?」

新聞のテレビ欄と同じタイトルだった。

これが女性リポーターの精一杯の応援だったようです。

映像は家に入る前から始まって玄関に入ると母親に挨拶。

「あ~恥ずかしい」とお母さんが顔を押さえながらテレビの前から台所へ逃げた。

映像は二階へ上がって稔の部屋へ、部屋の中を映し稔の紹介から本題に入った。

国連で何を演説するのか、演説することになったきっかけは何なのか、それをわかりやすく稔に質問するレポーターの印象がさわやかさを与えた。

そして、放送では世界平和の提案書がナレーションで紹介された。

終盤で稔の将来の夢などを聞いて終わった。

わずか5分の出来事だった。

「もう終わったの?」

「うん」

「二時間近く取材してたった5分なのね」

「そんなもんでしょ?」

「でもわかりやすかったわね」

「うん」

稔の初テレビは大成功に終わった。

稔は安堵感と恥ずかしさと物足りなさを感じた。

この電波は地元しか届いていないことを。



        <テレビの影響は>



放送が終わって稔は自分の部屋に入りパソコンのスイッチを入れた。

「さあ、みんなに報告しよう」

掲示板に向かうとすでに会話が弾んでいた。

「稔君は初めてテレビに出たんでしょ? 凄いわよね」

「僕なんか一度もないよ」

「私だって(笑)」

「みなさんこんばんは」

「あら、稔君こんばんは。どうだった? テレビ出演は」

「恥ずかしかったです」

 

「録画は出来たの?」

「はい、出来ました」

「パソコンに入れたの?」

「いえ、DVDです」

「DVDからパソコンへ入れられますか?」

「はい、出来ます」

「パソコンに入れたら みんなに送ってもらえるかしら」

「はい、やってみます」

「ではお願いね、一時間くらいしてまた来ますから一旦電源を切りますね」

「了解しました」

 

稔はテレビの放送をDVDで録画したものをパソコンに取り込んだ。

そして仲間たちに送信した。

一時間後掲示板に行ってみるとすでに会話が始まっていた。

 

「稔君すごいよね。 しっかり話してるじゃないですか」

「私も見たわ、12歳とは見えないわよ」

「これで多くの人に知ってもらえたと思うよ」

「こんばんは。見てくれたんですね。 ありがとうございます」

「稔君ご苦労様でした」

「お母さんはきれいな人なんだね」

「はい、ありがとうございます」

 

稔のほかに栄治と美佐枝と素子の4人だったが幸夫が遅くれて会話に参加してきた。

 

「みなさん遅くなりました。残業があって夕飯が遅くなりました」

「幸夫さんこんばんは」

「稔君こんばんは、録画を見たよ。良かったよ。ご苦労様でした。ところでみなさんに提案があるんです」

「何でしょう?」

「稔君が活躍するお話がテレビで放送されたのでそれを活用してみようと思うんです」

「どうするんですか?」

「稔君に送ってもらった録画を ユーチューブに載せて世界中の人に見てもらおうと思うんです」

「世界中ですか?僕は地域の人たちだけしか見ることが出来なくてチョットがっかりしていたんです」

「そうよね、国連で演説する目標があるんだから幸夫さんの提案は有効ですね」

「私も大賛成よ」

「それから稔君にお願いなんだけどね、テレビ局の人にユーチューブに載せて良いですかって了解をもらっておいてね」

「はい、わかりました」

「ところで、世界中に発信するんだからせめて英語に翻訳して字幕を入れるとか、二ヶ国語放送にしないとね」

「まあ本格的ね(笑)」

「だれか知り合いにいませんか?」

「映像を編集する人ですよね?」

「とりあえず友人知人に当たってみましょうよ」

「そうですね、できれば無料でやってもらえると嬉しいです♪」

「了解♪」

翌日稔は女性レポーターにもらっていた名刺を見て直接電話をしてみた。

「あ、モシモシ希望稔です」

「あら、こんにちは。きょうは何ごと?」

「お友だちとお話して僕が出たテレビ放送をユーチューブに流そうっていうことになったんです。そしたらテレビ局の人に了解をもらってって言われたので」

「あらそうなの、上司に聞いてみるから チョット待ってね」

「はい」

「お待たせ、録画は使って良いそうよ。ただしあの5分だけね」

「はい、ありがとうございました」

テレビ局に了解をもらった稔は掲示板に了解をもらったという伝言を書いておいた。

ローカルテレビの出演から世界へデビューすることになりそうです。



        <世界が注目>



掲示板では栄治が緊急メッセージと題してコメントを入れていた。

「皆さんに嬉しいメッセージがあります。友だちに稔君のテレビの映像を見せたら感動して『僕に翻訳させてくれ』って言ってくれたんです。彼は帰国子女なんです。とりあえず彼に任せることにしました」

突然の朗報に美佐枝と素子がさっそくコメントを入れた。

「栄治さん、ありがとう」

「栄治さんは素敵な友だちに恵まれているんですね」

その夜は掲示板ではメンバーが集まって編集会議が始まった。

稔出演のテレビ映像の前後に解説を入れるものだった。

「稔君の紹介といきさつを簡単に説明したらどうでしょう?」

「誰が説明するの?」

「美佐枝さんが良いんじゃないですか?」

「え?ダメですよ」

「栄治さんが良いんじゃないですか?」

「僕は若すぎてダメです」

「素子さんなら」

「私は老いぼれているからダメね(笑)」

「あ、それなら提案書を書いた幸夫さんが良いんじゃないですか?」

「そうね。それが一番良いんじゃないかな?」

「幸夫さんに決まりですね」

「仕方ないですね。私がやります」

幸夫の解説で日本語と英語の二種類の動画を作ることになった。

数日後みんなの協力で二種類の動画が出来上がり、さっそくユーチューブに載せることになった。

「さあ、皆さん世界へ発信しますよ。皆さんのブログからも動画を紹介してくださいね」

栄治は裏方の仕事は大好きだった。

お金儲けのために働くのは嫌だったが誰かの役に立つことをすることに疲れを感じていなかった。

栄治がユーチューブに動画を投稿した。

タイトルは

「12歳の少年が国連で演説!?」というテレビ番組と同じ題名であった。

あらかじめ拡散していたこともあって時間とともに視聴回数が増えていった。

視聴回数が2000回を超えてから減速気味ではあったが少しずつ増えていた。

「なんだか選挙の投票を見てるみたいね笑)」

美佐枝が掲示板でコメントを入れていた。

ユーチューブ動画のコメント欄には多くの賞賛の声が書かれていた。

「本当に国連で演説できたら良いですね。応援しています」

「すばらしい!稔君がんばれ。応援していますよ」

「世界平和が実現する実感が湧いてきました。稔君ありがとう」

「早く実現できるように私たちも拡散します」

3日後には視聴回数が1万回を超えた。

4日後には一つの民放が朝の情報番組で取り上げた。

たった1分の紹介だったがユーチューブの視聴回数はますます増えていった。

掲示板では

「すごい反響ですよ」

「みんな演説に期待してるみたいね」

ユーチューブのコメント欄には多くの意見が書き込まれた。

「僕は大学生です。安全保障について考えていたけど世界平和の実現が一番良いんだと気付かされました」

「政府がやれなかったことが一般人でもやれることが出来るような気がします」

「私は中小企業の経営をしています。社会に役立つ製品をいっぱい発明したけど儲からないので廃業を考えています。でも、この提案書を読んでみて私たちの技術が社会の役に立てそうな気がしています。私たちもぜひ参加させてください」

など。とくに日本の中小企業の経営者や大学の研究員が注目していた。

自分が培ってきた技術が経済活動の中では実用化されてこなかったこと。

資金不足のために開発を断念せざるを得なかったこと。

彼らはお金儲けのために技術を磨いてきたわけではなかった。

社会のために自分たちの技術を活かしたかったのだ。

大手企業も販売量を増やすために発展途上国への進出して一時的に売り上げを上げても為替の変動で利益を上げられず、利益中心の経営に将来の不安を抱えていたが、今回の提案に企業の将来性を感じ取ったようです。

そして、世界平和の実現に注目したのは軍事基地を持つ市町村の人たちだった。

「世界平和になれば軍事基地は要らなくなるんですよね。そうなれば大賛成です」

「私たちは基地があるから平和が守られると教わってきました。だから軍事基地を受け入れて危険や騒音を我慢してきました。世界平和はそういう我慢をしなくても良いんですよね」

「私は核を無くす活動をしてきたけど戦争抑止力のために必要だと言われて反論できずにいました。これで解決できますね」

テレビ番組ではお金中心の経済活動に疑問を投げかける話題が多くなっていた。

お金がかかり過ぎるオリンピックの誘致を辞退する都市が増えたり、経済活性化のために賭博と言われるカジノを合法化したり、全国で800万戸を超える空き家があっても新築が止まらない。

経済のために耕作放棄地が増えている。

活用されない田畑が商業地や工場団地に変えられている。

お金を稼ぐ必要のない社会になれば本当に必要なものが守られるのではないか?

そういう話題が増えていた。

掲示板では幸夫が

「みなさんもすでに知っていると思いますがユーチューブの視聴回数が100万回を越えました。先日民放のテレビ局からメールが届きました。稔君と一緒にテレビに出て欲しいと言うことです。稔君に了解をもらわないと返事が出来ないので保留状態にしてあります。稔君、これを見たらご両親と相談して返事してくださいね」

これを読んだ稔はすぐ両親に相談して了解をもらった。

そして

「幸夫さん、お父さんとお母さんに言ったら条件付でOKが出ました。条件はいつも通りに学校へ行くことでした。よろしくお願いします」

とコメントを入れた。

「稔君ありがとう。さっそくテレビ局へ了解のメールをしておくね。それから稔君の都合の良い日とテレビ局の都合の良い日を相談しながら決めますね」

「よろしくお願いします」

そろそろ忙しくなりそうです。



        <全国ネットのテレビ>                       



民放のテレビ局は稔と幸夫を招いて一時間の特別番組を作ることに決まった。

収録日時は幸夫と稔の都合に合わせて日曜日になった。

収録前日の土曜日には幸夫は稔を連れてテレビ局の近くのホテルに泊まった。

往復運賃や宿泊費は局もちだった。

「幸夫さん、あしたはうまくいきますか?ぼく緊張してきました」

「大丈夫だよ。難しい話になったら僕が代わりに言うからね。何も心配しなくて良いよ」

「はい、わかりました」

収録日には幸夫はノートパソコンを持って行った。

自分たちの活動内容がすべて入っているからである。

撮影は10時から始まった。

ローカルテレビの取材とは違って大きなスタジオの中に数人のコメンテーター、ひな壇には50人くらいの視聴者代表などがいた。

スタジオには大きなテレビモニターがあり、あらかじめ作られたビデオが流されるようになっていて、話題に応じてビデオを見ながら話が進められた。

一番論議がされたのが戦争や紛争が多い地域で平和活動が可能なのか?

お金の要る世界の中でお金のない世界に混乱は起きないのか?

インターネットで多くの人と議論してきたことがスタジオの中で再現された。

やはり、国際支援団の活躍が全員の興味を引いた。

全人類の代表者たちが一緒に行動するからである。

午前中の収録は12時に終わり、一時間ほど休憩に入った。

「幸夫さん稔君お疲れ様でした。昼食は局の食堂で自由に食べてください」

とスタッフが食券を二人に渡しながら言った。

昼からの収録は13時半から始まった。

午前中の侃々諤々の議論に打って変わって世界平和やお金のない世界の良いところや疑問などが話し合われた。

とくに経済学者の理論が視聴者代表たちを納得させることが出来なかった。

彼らは人間社会にお金の必要性を感じなくなっていた。

お金の要る社会とお金のない社会の比較をしたとき進化を感じ取っていたのである。

いままで「21世紀型世界」を社会学者や政治家が言ってきたことと明らかに違う。

そういうことがわかった時点で司会のアナウンサーが締めくくった。

「皆さん、きょうは長時間ご苦労様でした。稔君が国連で演説したいという熱意もわかりました。視聴者の皆さんにも伝わったと思います。世界平和とお金のない世界の素晴らしさもわかりました。温暖化も解決し、戦争も貧困も難民も無くなる世界も実現するかもしれません。私たちはこの提案に大賛成です。世界が平和になり新しい文明社会が実現するように祈って終わりにしたいと思います。ありがとうございました」

収録は16時に終わった。

収録した番組は1週間後に放映されることを伝えられた幸夫と稔はテレビ局の売店でお土産を買って帰途に着いた。



        <全国放送と国連の反応>



自宅に帰った稔は家でも学校でもテレビ局での話題に持ちきりだった。

「芸能人に会ったの?」とか「サインもらえばよかったのに」とか。

掲示板では収録の報告会が行われた。

5時間に及ぶ収録が1時間番組に編集される。

しかもCM時間を入れると40分程度である。

その代わり日曜日のゴールデンタイムにしてもらった。

「幸夫さん、稔君お疲れ様でした。一週間後には有名人になってますね(笑)」

「僕たちより世界平和やお金のない世界に興味を持ってもらいたいね」

「テレビの収録で思ったことなんですけどね。経済学者に専門的なことを質問されて答えられない場面があったんです。そんな時どう対応したらいいのか?」

「そうだよね。僕たちは専門家ではないからね。僕たちはきっかけを作るための活動だと思えば良いよ。世界平和はこうすれば出来ますよって、方法を提案するしか出来ないからね」

一週間後テレビ番組の放送日が訪れた。

番組タイトルは「12歳の少年が世界を変える!?」だった。

放送時間がゴールデンタイムと、ユーチューブのコメント欄に放送予定が書かれたこともあって視聴率は高かったようである。

放送の翌日、学校では稔はヒーローのように扱われたが稔はいつもの態度でいた。

一方掲示板では多くの賛同者がコメントを入れていた。

「稔君、国連に行けるよう応援してるよ」

「私たちの学校でも勉強会をしますね」

など読みきれないほどだった。

「稔君、ここまで広がったら挑戦してみたいことがあるんだよ」

「幸夫さん、なんとなくわかりますよ」

稔がこう応えると栄治が

「ついにやってみますか?」

と理解したようにコメントを書いた。

「何々、みなさん何を計画されているんですか?」

美佐枝も参加してきた。

「ついに来たんですね。国連でしょ?」

と素子が入ってきた。

国連での演説はどうすれば出来るのかは誰も知らなかったが、思いつくままに関係機関のブログへ行って提案投稿することになった。

数日後

「皆さんに報告があります。国連本部からメッセージが届きました」

と幸夫が緊急連絡を掲示板に載せた。

幸夫は密かに国連関係のブログに何度も提案投稿していたようです。

世間でも話題になっている国連演説は国連本部でも話題になっていた。

掲示板では幸夫の緊急連絡に仲間たちがコメントを入れ始めた。

「幸夫さん、どんな内容ですか?」

「良い話なら良いのにね」

「こんなに早く国連からメッセージが来るなんてね」

「実はかなり前から国連関係のブログに何度も提案投稿していたんですよ」

「そうなんですか」

「それでね、メッセージと言うのが国連でも取り上げたいことなので直接会って詳しくお話を聞きたいって」

「え~そうなんですか。それでいつなんですか?」

「僕たちの都合の良い日を教えてくださいって」

「すごいじゃないですか。もちろん幸夫さんが話しに行くんですよね?」

「そうですね、稔君と一緒に行ったほうが良いと思うんです」

幸夫が「世界平和の提案」の原稿を作って稔が演説をする計画は大きな前進を始めた。

提案が実行に移されるかはまだ未知なるものはあったが提案を発表する場が提供されるだけでも大きな前進と言えるのかもしれない。

数日後幸夫は稔の都合の良い日を国連に伝えた。

そして

その翌日国連から会談の日時が報告された。

幸夫はすぐに了解の返事を送った。

「皆さん、ついに会談の日時が決まりましたよ。

稔君の両親も賛同してくださったので話が早く進みました」

「それは良かったですね。楽しみです♪」

「もちろん提案書の内容についての話なんでしょうね?」

「おそらくそうなると思います。提案書の内容に過不足があれば変えるけど僕たちはこのままで通したいと思ってます」

「そうですね、小さいことは私たちだけでは決められませんからね。基本さえ伝えれば良いと思いますね」

そしてその日がやってきた。

国連関係者との会談は国連関係の施設の中で行うことになった。

国連関係者はすでに民放で放送された録画を何度も見て内容を把握していたようだった。

国連関係者は稔の考え方を確認したかった。

わずか12歳の男の子が「世界平和を国連で演説したいなんて」と不思議に思っていたのだ。

それが

「国の借金を子供の僕も返さなきゃいけない」

という疑問から始まったことに笑いが止まらなかった。

会談は始終和やかに行われ快く国連での演説を承諾してくれた。

そして

演説の日時は後日知らせてくれるということ、

宿泊費や交通費はすべて国連が支払うことなど伝えて会談は終了した。

帰りすがら幸夫は稔に言った。

「稔君ついにやったね」

「はい。少し不安だけど」

「何が?」

「僕飛行機乗ったことないんです」

「そう言うことか。ハハハハ・・・てっきり演説のことかと思ったよ」

「演説もだけど僕高い所が恐いんです」

「そっかそっか大丈夫僕がそばにいるから」

ともあれ国連での演説が決まった。



        <国連での演説が決定>



国連での演説が決定してから、もう一度提案書の内容を確認することになった。

それは栄治が

「一つの国の中でも違う民族がいたり生活や風習が違えば支援の仕方が違わないと支援の押し付けになるんじゃないですか?」

という疑問だった。

提案書には

「世界中の国と地域が参加して作られます」

と書かれてあるものの、地域性をもっと強調しておかないと発展途上国の人たちに不安を与えるかもしれないと思ったからであった。

栄治の提案で提案書はこれ以上の長文にならない程度に文章の書き加えを考えた。

「このあいだ誰かが言っていたけど地域によって生活が違うから

地域に応じた活動が出来るようにするために地域の人がリーダーになって指示するようにしたら良いんじゃないです?」

美佐枝が提案した。

「そうですね、たしかにこういう話はしたけど提案書には書いておいたほうが良いですね」

「他にも疑問に思うことは出てくると思うけど世界平和への道筋がイメージできれば細かいことはあとから考えても良いんじゃないですか?」

「そうですね、とりあえずこの文章だけ入れておきましょう」

~~~~~

国際支援団の活動の仕方を少し説明させていただきます。

国の代表だけでは部族間の格差が出来ますので地域活動の組織編成は地域の人がリーダーとなって世界中の人が参加して行います。

地域の風習やしきたりや宗教に合わせた活動が求められるからです。

それぞれの地域や宗教を大切にし合う関係を作れば世界平和にもつながると思っています。

~~~~~

新しい提案書が出来て演説の準備は出来上がった。

そして

演説の二日前に幸夫と稔は東京羽田からニューヨークまで行くことになった。

およそ13時間ものあいだ稔は高所恐怖症を感じることもなく飛行機から見る地球の素晴らしい姿を満喫していた。

ニューヨークに着いた二人は国連職員の迎えを受けてホテルまで案内された。

そして、翌日は国連本部に案内されて演説のための打ち合わせが行われた。

打ち合わせが終わると二人は職員の案内で街の観光とお土産を買うことになり有意義な時間を過ごした。

いよいよ演説の日を迎えました。

ホテルでは早めに起きた幸夫と稔は国連職員の迎えが来るのを待った。

あまり待つ時間もなく国連職員が乗った車がホテルの前で静かに止まった。

「稔君さあ行こう」

幸夫は稔に言って車に向かった。



        <国連本部で演説(1)>



国連本部に到着した幸夫と稔はすでに会議が始まっていた会議場のそばで待つように言われた。

心の準備は出来ていたものの本番が目前に迫ると緊張が高ぶってきた。

会議場の中では稔の紹介がされているのが稔の耳に入ってきた。

「出番になりましたのでこちらにどうぞ」

と案内され、稔と幸夫は会議場の中に入って行った。

各国の代表者たちは立ち上がって拍手をして二人を歓迎した。

稔は壇上へ幸夫は稔のそばにある椅子の横に立ってゆっくりと丁寧にお辞儀をした。

幸夫は椅子に座り、稔は手に持っていた封筒から提案書を取り出した。

そして

読み始める前に一言国連と各国代表者の人たちにお礼の言葉を言った。

そして

「それでは僕の提案を読ませていただきます」

と言って提案書を読み始めた。

~~~~~

私たちは世界平和の実現を提案します。

いままで私たちは軍隊を無くせば平和になれると思っていました。

なぜ軍隊が無くならないのか?

軍隊を必要とする世界だからです。

奪い合いや騙し合いの世界だからです。

世界平和になれば軍隊は要りません。

軍隊や核を無くすための努力より世界平和の実現に努力を傾けたほうが良い。

そう思うのです。

世界平和は「支え合い」「分かち合い」の世界です。

互いが互いを必要とし助け合っているのです。

それが実現するための提案をします。

一つ目の提案ですが、国連を中心とした

国際支援団(International support group)の設立をお願いします。

「国際支援団(ISG)」とは「国境なき医師団」を参考にして世界中の国と地域が参加して作られますが国際支援団(ISG)は常時活動する団体です。

設立の目的は世界の貧困や差別を無くすことです。

世界のあらゆる地域が独自の文化が守られ安心して生活できるお手伝いをすることです。

世界中の技術と資源を無駄なく有効活用します。

国際支援団の仕事はそれぞれの国の代表が

「自分の国が出来ること、出来ないこと」

「自分の国に足るもの、足らないもの」

「自分の国が必要なもの、して欲しいこと」

などのシェアをし合います。

そして

農業生産が出来る所

工業生産が出来る所

科学技術が得意な所

世界中で生産と技術を分かち合うのです。

たとえば

「私たちの国は土地は広いけど砂漠が多いです」

「私たちは砂漠を農地に変える技術を提供します」

「海に面しているけど水不足で困っています」

「私たちは海水淡水化の技術を提供します」

「水はいっぱいあるのに汚染がひどいです」

「私たちは汚泥浄水装置を提供しましょう」

「広大な農地はあるけど生産能力が低いです」

「私たちが生産能率の高い技術を提供します」

「きれいな海に面しているので養殖技術が欲しい」

「私たちが養殖の技術を提供しましょう」

などなど

もっとたくさんの協力関係が出来上がります。

国際支援団の活動の仕方を少し説明させていただきます。

国の代表だけでは部族間の格差が出来ますので地域活動の組織編成は地域の人がリーダーとなって世界中の人が参加して行います。

地域の風習やしきたりや宗教に合わせた活動が求められるからです。

それぞれの地域や宗教を大切にし合う関係を作れば世界平和にもつながると思っています。

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ここまで読んだ時、会議場で拍手があがった。

とくに発展途上国や部族間で争いが多い国であった。

そして、

その拍手は会議場全体でしばらく続いた。

稔も幸雄も支援団の働き方の文面を追加したことが良かったと安心していた。

拍手が終わってから稔は続きを読み始めた。



        <国連本部で演説(2)>



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そして

人々が平和に共生することと同時に地球との共生を大切にしなければいけません。

そこで

公害を出さない、資源を無駄にしない完全循環型システムを構築するためにすべての国と地域に大規模リサイクルセンターの建設を提案します。

大規模リサイクルセンターはすべての要らない物を回収する所です。

そこでは

・すぐ使える物はきれいにして再利用

・修理できる物は修理して再利用

・修理できない物は部品として再利用

・その他は溶解して原料として再利用

・外食産業や家庭生ゴミ、下水処理のヘドロ については肥料として再利用

・再利用できない物は無害化して自然に戻す

このシステムの特徴は

・資源を無駄なく使います。

・永続的な循環型社会が実現します。

限られた資源を無駄にしないこと環境に良いもの健康に良いもの必要量以上に生産しないことそれぞれの国や地域に応じて生産する。

温暖化対策や生活必需品、食糧生産など地球環境に悪影響を与えないシステムです。

先進国が培ってきた新技術で地球と人類がいつまでも健康でいられるそういう世界を実現させたいのです。

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世界平和が実現するために提案をさせていただいておりますが基本的な提案をしたいと思います。

それは

「すべての提供者はお金を要求しない」

と言うことです。

物を提供する人や団体も技術を提供する人や団体もサービスを提供する人や団体もすべてボランティアです。

そうすればすべての人や物が自由に流通します。

利益のために人や物が動くのではなく平和のために人や物が動くのです。

国際支援団の活動が円滑になるだけでなく世界中の人々の交流が増えると言うことです。

温暖化や異常気象が続くと食糧不足や生産能力が陥ってしまうことがあります。

「有る所から無い所へ」

「余る所から不足する所へ」

物や人材が自由に行き来することが出来ます。

世界平和は人々の交流が基本です。

互いの文化を尊重し互いの不足を補う関係を作ること。

損得なしで行動できるシステムにしたいのです。

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ここで会議場がざわついた。

稔はしばらく戸惑っていたが

「あとで詳しく説明しますので続けます」

と言って静かになってから続きを読み始めた。



        <国連本部で演説(3)>



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生活のために人々の交流は大切ですが文化交流も大きな力を持っています。

文化交流は互いが「自分を知ってもらう」ことです。

世界中に友人ができれば

子どもたちの笑顔を見たら・・・

戦争なんて考えられません。

音楽や芸術をはじめ生活文化など互いに紹介しあったり専門職の技術は多くの人に知って欲しいです。

私は子どもたちの声が大好きです。

人種を超えて歌う歌声は心が豊かになります。

その一つが

「What a Wonderful World」です。

(なんと素晴らしい世界だろう)

子どもたちが仲良くなれば大人も同じ。

「いつまでも平和でいたい」と思います。

軍隊も核もない世界は努力しなくても実現します。

世界は楽しいと思える環境を作ることです。

テレビ番組もユーチューブも大きな力です。

新しいもう一つの世界を創りましょう。

世界中でそう思うだけで実現します。

お金のない平和な世界です。

よろしくお願いします。

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最後にみなさんにもう一度

イメージしていただきたいことがあります。

一つの時代に二つの世界を作ることです。

今のお金の要る世界とお金を使わないもう一つの世界です。 

戦争も貧困も飢餓も核もあるこの世界に、戦争も貧困も飢餓も核もない世界を作ります。

同じ時代に二つの世界を作ろうと言う訳です。

もう一つの世界は世界中が手をつなぎます。

世界中の情報をまとめるには国連が必要です。

ここにおられるみなさんの力が必要です。

僕は12年前日本で生まれて日本で育ちました。

日本の食事「和食」がユネスコ無形文化遺産になりました。

僕は日本の心「和をもって貴しとなす」が大好きです。

意味は「何ごとをやるにも、みんなが仲良くやり、いさかいを起こさないのが良い」と言うことです。

今までは軍事力で世界平和を訴えていますが、これからは「和をもって尊しとなす」を実践してこの言葉がユネスコ無形文化遺産になるように頑張りたいです。

二つの世界は二階建ての家のようにお金の要る社会とお金のない社会が同居します。

お手本の社会を創ると言うことです。

お金のない社会が軌道に乗ればお金の要る社会は崩壊します。

それで

本当の世界平和が実現するんです。

よろしくお願いします。

大切な時間をいただいてありがとうございました。

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稔は提案書を読み終わって幸夫を紹介した。

「僕の提案のためにこの原稿を作ってくれた幸夫さんを紹介します」と。

幸夫は壇上に立ってゆっくりお辞儀をして話し始めた。

「内容に驚いたところがあると思います。稔君も僕たち仲間もお金の存在を真剣に考えてきました。世界平和をイメージしたときお金のない世界がみんなの頭の中に浮かんだのです。国際支援団の活動には生活を支えるためにお金が要りますが、それは世界中の軍事費の一部を投入していただきたいと思っています」

それを聞いた代表者たちは全員立ち上がって拍手をした。

軍隊はすぐには無くせないが軍事費の一部を出し合うだけで世界平和が実現するのなら惜しみなく支援する決意を持ったのである。

二人はそろって挨拶をして会場から出て行った。

出てもしばらくスタンディングオベーションで送り、あちらこちらで歓声が上がっていた。

演説は大成功で終了したのだ。



        <国連で大成功>



演説を終えた稔と幸夫は国連事務総長室へ招待された。

事務総長から感謝の言葉をもらって今後の活動方法について協力以来があった。

国連では国際支援団の活動を前もって準備していたようです。

国際支援団の設立理念を世界中に浸透することと同時に世界中の企業や研究機関の協力を得るために力を注いで欲しいということだった。

稔も幸夫も出来る限り協力することを約束した。

二人はその日はゆっくり体を休め翌朝ニューヨークを飛び立ち東京羽田に向けて帰国の途に就いた。

羽田に到着してロビーに出るとたくさんのカメラが二人を待っていた。

二人が国連で演説したというニュースが世界中に流れていたのだ。

二人は報道陣の中に連れて行かれ記者会見コーナーがすでに設置されていた。

およそ30分のあいだ多くの質問に答えて二人は解放された。

「幸夫さん、ビックリしましたね」

「そうだよな、まさかこんな大騒ぎになるなんて。疲れたよ」

「僕も疲れました」

稔は両親が迎えに来ていた。

「あ!お父さん、お母さんもありがとう」

「お帰り、ご苦労さん」

「幸夫さんご苦労様でした。ありがとうございました」

「稔君もご苦労様、じゃあね」

全員それぞれの家に帰って行った。

一週間後

国連が国際支援団の設立を正式に発表した。

世界中の企業と大学や一般研究機関などに技術や資源の提供を呼びかけた。

日本ではテレビや新聞で参加希望の企業や研究機関が紹介され、

日に日に参加希望者も増えていった。

経営不振の中小企業が息を吹き返したように活気付いていた。

大学や専門学校を卒業して就職先が見つからなかった若者もインターネットを活用して参加仲間を募っていた。

そして稔と幸夫は各地で講演を依頼されて土日は休日返上で講演会に行った。

インターネットの掲示板ではいつもの仲間に加えて多くの賛同者が意見交換していた。

異論反論はなく国際支援団が順調に活動できるために何をすれば良いかという話題が多かった。

仲間たちは「提案書どおりに行きそうだね」と確信をもって話していた。

掲示板の中に興味のある質問があった。

「わたしは稔君のフアンです♪皆さんの意見交換を見ていつも思っていたことがあります。歳の差があるのになぜ同じ志を持って国連まで行けたのですか?」

その質問に興味のある答えが書かれた。

「私も同じような経験があります、それは生まれる前にやるべきことを決めた仲間が居るってことです。生まれる順番は違うけど約束をした仲間が自然と集まったんでしょうね」

これらのコメントには多くの「いいね」が贈られた。



        <もう一つの世界>



国際支援団は国連中心で結成され世界中に参加希望を募集した。

参加希望者は100万人を超え、

企業は1万社を超え大学や研究所なども5千団体超える参加希望があった。

稔と幸夫は日本の心「和をもって貴しとなす」の精神を理解してもらうために世界中で勉強会をすることになった。

栄治と美佐枝、素子は掲示板を活用して参加希望者の疑問や質問の対応に力を注いでいた。

彼らの努力もあって半年後には世界中で活動が始まった。

当初200万人の支援団が月日を経るごとに希望者が増え子供たちのあこがれの仕事になっていた。

稔は中学生になって留学を兼ねて世界中で新しい世界の勉強会に奔走していた。

夢にまで見たもう一つの世界が順調に作られていることを実感し、最初の悩みであった国の借金のことは稔の頭の中にはなかった。

その後国際支援団は規模を拡大して「和をもって貴しとなす」が世界中に浸透し、軍事基地など軍備はもちろん核も解体されることになっていた。

そしてお金の要る世界からお金のない世界に移行するのも身近な話題になり世界中が一つの家族のようになっていた。


おわり


続きは
世界平和実現へのシナリオを作ってみました。
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