2006/08/08(火)23:21
岡本薫『誰でも分かる著作権』
A5判本文374頁でこの値段は安いと感じてしまうのは、だいぶ専門書相場に毒されているんでしょか。
著者は、文化庁とか文部省とか文科省とかを歴任された方のようで。
以下、ざっと読んだ印象のみ。
問題点は、
・目次がざっくり過ぎるのと索引がないせいでとてつもなく極めて検索性が低い。
・条数の摘示が読んでて気持ち悪くなるほど皆無。著者を通した姿でしか著作権法を知ることができない。現行ルールに文句があるなら民主主義の手続きにのっとって制度をかえればいいじゃない的なことを言ってるのに、当該現行ルールが何条に書いてあるのかさえ示してくれない。
・具体例を挙げて説明してるので理解しやすいが、条文の引用がないせいで、じゃあその例とは違う場合はどうなんだってことを考えにくい。
・権利制限規定をひたすら羅列してるところは、目次がないのと相まって食傷気味になる。
・身内の問題について歯切れが悪くなるのは、まあご愛敬。
良い点は、
・著作隣接権は業界の特権保護のため、とか本音ベースで語っている。
・現行法をすでにあるものとして解説するのでなく、なんでそんなことになったのかって経過を書いている。
・著者の立ち位置からして、どっかの業界に偏ることなく、著作権を強化すれば権利者としての自分はうれしいけど自分が利用者の立場になったときに困るんだよ、とバランスを考えたスタンスで論じられている。
・条約との関係、欧米の制度との関係などにも触れられている。
・文化庁と各業界とのあれやこれやの問題はおもしろい。
この方、かつては「著作権は人権だ」ってことを強調してたみたいなんですけど(こちらの文章を参照)、この本では、著作権それ自体に価値がある訳じゃない、著作権保護は手段だって言ってるんで(しかも人権も人為的なルールだとも言ってます)、だいぶトーンが変わってきたんですかね。
ちゃんと読んでからこの文章を見返してみます。
(追加)
著作権人権説は、白田先生のサイトでもネタにされていて(→こちら。しかも脱線話として)、なんとなくかわいそう。