憲法上の権利と条約上の権利-著作権はどこに?
bn2islanderさんにコメントをいただきましたが、正面から答えられる自信がないので、頭の整理をしてみます。(以下、世界人権宣言と国際人権規約をまとめて「条約」といいます)結論を言ってしまうと、「人権」の定義の仕方の問題なだけだと思います。つまり、条約上の権利も日本国憲法上の権利も区別することなく一括して「人権」といってしまうか、ちゃんと区別するかどうかってことです。で、岡本先生は区別しようという意識はなさそうだなあと思うわけです。「憲法と条約」についての憲法優位説からすれば、条約上の権利と憲法上の権利を同列に扱ってしまうことは受け入れられないでしょう。憲法上の権利はあくまで憲法から導き出さなければならないのであって、条約を締結したからといって、自動的に憲法上の権利に組み込まれるわけではないので。1 条約には著作権は人権であると書いてある2 条約上の権利は人権である1のようにいっていいかは、条約で保護すべきとする権利と日本の法律で保護している「著作権」とはイコールではないことからしてやや疑問がありますが一応認めるとして、そして2のほうは所詮人権という言葉の問題だと割り切ってしまえば、「著作権は人権である」と結論づけてよさそうですが、ここからでてくるのは、あくまでも「著作権は条約上の人権である」というところまでであって、「著作権は日本国憲法上の人権でもある」というためには、日本国憲法それ自体から導き出さなければならないと。私も、著作権は日本国憲法上の人権であるといってもいいと思いますが(一般的自由説による)、あくまでも人権が「対国家権」であることは守らないといけないと思っています。著作権が人権だと主張する相手方は、国家であって私人ではないと。私人に対してはあくまでも私権としての著作権を主張できるだけだと。少なくとも、著作権を一方で「人権」だといいつつ、他方で「私権」だということのその関係をしっかり書いておかなければ、読者は誤解するんじゃないの、と疑問に思ったわけです。もちろん、著作権が人権でもあり私権でもあるということ自体を間違いだと言っているのではありません。もう少しよく考えてみます。世界人権宣言 第二十七条1 すべて人は、自由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、及び科学の進歩とその恩恵とにあずかる権利を有する。 2 すべて人は、その創作した科学的、文学的又は美術的作品から生ずる精神的及び物質的利益を保護される権利を有する。 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)第十五条1 この規約の締約国は、すべての者の次の権利を認める。 (a) 文化的な生活に参加する権利 (b) 科学の進歩及びその利用による利益を享受する権利 (c) 自己の科学的、文学的又は芸術的作品により生ずる精神的及び物質的利益が保護されることを享受する権利 2 この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためにとる措置には、科学及び文化の保存、発展及び普及に必要な措置を含む。 3 この規約の締約国は、科学研究及び創作活動に不可欠な自由を尊重することを約束する。4 この規約の締約国は、科学及び文化の分野における国際的な連絡及び協力を奨励し及び発展させることによって得られる利益を認める。