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カテゴリ:読書 ノンフィクション
1999年に書かれた『世界大不況への警告』の改訂版になります。
1990年代初頭の日本のバブル経済崩壊、97年のアジア通貨危機といった事をメインに思い起こし、それらと過去の世界恐慌との類似性などをとりあげ、改めてアメリカのサブプライムローン関連を発端とした大不況を分析しています。 物凄く単純化してしまえば、バブル崩壊なんていうものは、何がしかの幻想(日本にしろ今回のアメリカにしろ結局は土地神話)を基に膨らみ、一度幻想が解けてしまうと、今度は同じような勢いで幻滅が遅いパニックを起こしてしまい、健全な部分まで破壊してしまうという事になりますね(本当に単純ですが) 改訂前のものを読んだ当時は、まだ日本はバブル崩壊の影響に苦しんでいましたし、アジア金融危機により、まるでアジア全て幻想が吹き飛んだような気がするようなものであり、アメリカはこの世の春を誇っておりましたし、それこそアジア金融危機はアメリカのファンドによって引き起こされた陰謀論にも説得力をもっておりました。 直後にニューエコノミーなんていうバカげた理論は吹っ飛び始めていましたが、ITバブル崩壊もアメリカ全体が吹っ飛ぶレベルにまではならず、結果として即座に見つけた土地バブルで救われたため、破壊力を増してしまう結果になってしまったのですが。 クルーグマンは日本についてはインフレターゲットが必要だとある意味しつこすぎるくらい言ってきました、有効需要の必要性の強調であり、日本が陥っているのは流動性の罠だと、だから政府はやれる事は全てやり需要を刺激しろという事ですね。 最近になり、現在のアメリカと照らし合わせ日本に対して苦言を言い続けてきて来たが、言う事とやる事は大違いであり、日本だから政府対応がおかしかったのではなく、簡単にできる事ではなかったと日本に対して謝罪したいというようなコメントがあったようですが、それはひとえに現在のアメリカが陥っている状況が当時の日本よりも深刻なのに、有効な手段を迅速に行えていないという事に対する苛立ちのようなものがあるのではないかと思われます。 まぁ、アメリカという国の特徴から言って日本の失敗から学ぶことができても、国民性の違いにより国主導というだけで騒ぎになるのは仕方が無いのでしょうけどもね(苦笑) とりあえず、これからの世界は恐慌型の世界という予測をしています、決して明るい未来は予測されるものではありませんが、そういった中で需要を刺激するようなバブルではない幻想を作り上げるような政策を出せるような人間って、いないんじゃないというのが悲観主義な私の考え方だったりします。 ノーベル賞受賞するような経済学者が現在の状況をどうやって考えているのかというのを知るには、読みやすいですし、90年代の問題点を振り返る意味では、改訂増補という形でまとめられた意味はあるかなとも思えるので一読するのも悪くはないでしょう。 読んだからと言って、不況の脱出手段がわかるわけではないですけどもね。 第 1章 「問題の核心は解決された」 第 2章 無視された警告 1995年、中南米諸国の危機 第 3章 日本がはまった罠 第 4章 アジアの恐慌 第 5章 倒錯した政策 第 6章 世界の支配者たち 第 7章 グリーンスパンのバブル 第 8章 影の銀行 第 9章 恐慌の総和 第10章 恐慌型経済の復活 世界大不況からの脱出 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月13日 21時08分28秒
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