地下室で手記

2010/08/08(日)19:30

今日の読書 小暮写眞館/宮部みゆき

読書 小説(266)

読み始めから凄く懐かしいと思えるような展開、ノスタルジックという意味ではなく、宮部みゆきの作品では久しくやっていなかった事が詰まっているなという所ですね。 現代ものを書く事が少なくなってから、さらに現代もので超能力を扱う事も無くなり、高校生の少年が主人公になるものも書かなくなっていたわけですが、初期作品ではよくあったものをもう一度やるようになったのかという嬉しさが強く感じたのですが、初期作品以上に詰め込めるものはきちんと破綻なく詰め込めるだけ詰め込むというのは、現代ものを一時書かなくなったきっかけともいえる「模倣犯」に通じるものを感じますかね。 少年を主人公にして気楽に読めるんだけども、実は結構重たい部分があるという意味で、「今夜は眠れない」や「夢にも思わない」のシリーズであるとか、巻き込まれ型であるとか、子供に振り回されるという意味では「ステップファザー・ステップ」なども思いだすなぁと。 物語は、閉鎖した写真館を家としてそのまま購入した一家の長男を主人公としたもので、その写真館は元の店主の幽霊の噂がたっていたり、また不思議な写真の謎を解明する事に巻き込まれたりという連作短編になります。 幽霊の話だけでも十分に独立した話を作れますし、不思議な写真の謎を一度解明した事からそういった類の厄介事に巻き込まれて奮闘する事になる軽めのコメディとして作っても十分に1冊にする事ができたり、また高校生と小学生の兄弟のあれこれだけでも十分に1冊にする事ができるしと、最初の話を読んだだけでは予想もつかないくらい、多重構造と感じさせながら無理なくまとめていて、趣味嗜好に多少のマニアックな要素が入ってはきますが、どの層にでも受け入れられるど真ん中の作品だなと。 難を言えば、読み応えがありすぎるというか、こんなに長くする必要ないんじゃないかと、シリーズものにしてどんどん刊行すればいいのにと思うくらいのものなのですが・・・一冊にまとめないとダメだなぁと終盤にはわかるようになるというか。 とにかく、やっと宮部みゆきはこういうのを書くのに戻ってきたなと思える1冊でした。小暮写眞館

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る