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カテゴリ:読書 小説
必殺マニアとしても有名な貫井徳郎の最新作は、得意とする晴らせぬ恨みに対する復讐を冤罪というテーマで扱ったものとなります。
日本は法治国家であるからには、好むと好まざるとを関わらず、その法律の中で対処するしかありません。 悪法も法なりという形で、法律の不備のせいで、理不尽な思いをしようともその思いを晴らすために復讐をする事は禁じられています。 しかし、その禁を破ってまでも復讐したいと思わせる事例もいくらでもあるというのも又現実ではあります。 そういった法律の壁に泣き寝入りした人の復讐を代行する事に正義はあるのかと、少年犯罪という法律に守られた相手に対する復讐を扱った、『殺人症候群』逆に、殺人をおかしたものの少年法のおかげで罪人という扱いではないために起こる事態を描いた『空白の叫び』 どちらもかなり重たいテーマですが、法治国家故に晴らされず、どこに持っていけばいいのか分からない怒りや嘆きをガッツリと扱った読み応えのある作品でした。 この作品もそのいった作品に連なるものになります。 冤罪によって人生の全てを狂わされてしまった男の復讐、法治国家としては復讐というものは許されるものではありません。 しかし、その法治国家としての前提として法律に基づいた決定そのものが間違っていたらば、その絶望をどこに向ければ良いのか、復讐という非合法な手段を行使してしまったとして、誰が真正面から非難できるのかというものです。 冤罪を受けた男というのが、容姿に恵まれず、内気で口下手という私にとってものすごく共感しやすい要素があるだけに、復讐を遂げさせてあげたいと本気で思わずにはいられなかったですね。 貫井徳郎に外れ無しとは常に感じている事ですが、十分すぎるくらいの力作であり、得意分野中の得意分野だと思えましたし、いろいろな意味で灰色だなと。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年11月24日 21時40分02秒
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