地下室で手記

2011/03/01(火)21:46

今日の読書 マンガはなぜ規制されるのか/長岡善幸

読書 ノンフィクション(258)

「非実在青少年」この話題を一度も目にした事がないという日本人はいないはずです。 少なくとも、間違えて私のブログを目にしてしまうような人であれば、非実在青少年に対する規制という、わけのわからん事を言っている人について、頭がいかれているという感想を抱くのではないでしょうか? マンガの規制、これは古くからある問題でありますし、私はマンガであれば何をやってもよいというような気持は無く、ある一定限度のお行儀は守る必要はあるとは考えています。 エンターテインメントにエロと暴力素材は切っても切れない関係にあるでしょう。 もちろん、これをそのまま真に受けて現実社会でそのままの行動をしだしたらば、地獄絵図になる事は間違いないでしょう。 しかし、今の日本でそういった地獄絵図になっているかと言われれば、決してそういう事にはなっていないはずです。 虚構と現実が区別つかなくなるほど、頭が弱い人間はもちろんいるでしょう。 しかし、それが大多数になると言う事は絶対に無いと言いきっても良いくらいだと思います。 しかし、そういう論理的検証を一切拒否し、青少年に有害であるというその一点突破で、自分たちが気に食わない表現を一掃したがる狂信的な存在がいる事は、知っておかないといけないでしょう。 こういうった正義を振りかざしている人間は、往々にしてストッパーを失います。 そして、手段と目的がいつの間にか入れ違い、青少年のために有害なものに規制を、という事からいつのまにか、青少年のためになっているかどうかをどこかに置き忘れて、ただやみくもに人の話に耳を傾ける事無く、規制の対象を拡大させるように増殖していきます。 マンガというものは、その点非常にわかりやすい生贄になってしまいます。 最近では、日本のマンガが海外で評価されるような事にもなっていますが、歴史としては浅く、芸術作品扱いをされる事はなかなかなく、非常に下にみられる、無くても誰も困らない存在として認識されているのではないかくらいの扱いなのではないかと思う事が多々あります。 非実在青少年という、意味不明の存在が出来上がった頃、マンガやアニメに対する規制は嬉々として進めようとする某為政者は、小説や実写に関してはその対象にするようなものではないと発言していたりもしました。 かつて、その為政者は強 姦 輪 姦やりたい放題の小説を書き、それが映画化され社会的悪影響を問われていたにもかかわらず、そこはスルーし、現在何かのブームが起きにくい趣味の分散化が顕著な時代に、あたかも影響力が大きいかのように喧伝し、科学的なデータも何も無しに規制強化ありきで話を進めようとする姿は醜悪そのものでしょう。 そこに、何も疑問を抱かない人は表層的な面、エロ漫画は別に無くても構わないという点のみに意識がいくように陽動されています。 問題は、恣意的に有害か否かを上で勝手に決め、拡大解釈が可能で場合によっては遡及的に言論統制を可能にするという事であるのではないかと思います。 さて、有害だから規制という考え方ですが、全否定はしません。 正しい部分も十分にあります。 その正しい部分もあるというところからの拡大解釈や論理の飛躍に対して何の疑問を抱かせないようにしている事が問題だと声を大にして言いたいと思っている人は多いでしょうし、私もそうです。 何か大きな事件があると、その原因にエンターテインメントの世界とつなげて、~に影響して犯罪を犯したというような扱いをされる事があります。 そんな馬鹿な事があるわけないと言うつもりはありません、そういった馬鹿だって存在するでしょう。 しかし、じゃあ模倣犯が出た時はどうするのか? 未成年者が、女性を大量に拉致監禁し自分にとってのハーレムを作ろうとしたとします、その動機に、北の将軍様を見て羨ましくなって自分でもやってみたくなった。 そのように動機を語ったとします。 この場合、規制するべきなのはどこに行くのでしょうか?報道番組なんて規制すべきだ!となるでしょうか?犯罪国家は有害だから自主規制すべきであると国家ぐるみで圧力をかけに行ったりするでしょうか? そういう結果は絶対に無い事は分かりますね。 どう考えても成果を見せる事はできませんし、金も時間も労力も大変な事になりますから。 その点、日本国内の出版社はどうでしょうか、規制をかけるのは簡単です、さらに出版社というのは政治がらみの利権は他のメディアと比べて少ないもののようですし、さらに取り締まる側として、自分に都合の悪い事も扱われる事も多々あるので、積極的に圧力をかけたくなるという動機もでてくるでしょう。 私の考えですと、どうにも青少年を有害から守るという旗印が胡散臭い大人の事情が見え隠れするようにしか思えません。 そういった私の持っている偏見をある程度固めてくれるような証拠を書き綴っているのが本書になります。 ここに書かれている事をどう判断するのかは、私は強制するつもりはありません。 どんどん、規制すべき!と感じる人も、それはそれで仕方が無いと思います。 ですが、表面的にしかこの問題を知らない人は、是非とも手にとって読んでもらいたい1冊になっています。 特に、東京都民はこの事をスルーしてしまうと言論の自由が奪われる結果になる選挙がすぐそこに迫っていますし。 第1章 ドキュメント「非実在青少年」規制問題 第2章 規制の論理とその仕組み    1 法による規制    2 国などの指針    3 青少年条例などの自治体の条例    4 業界の自主規制   第3章 マンガ規制の歴史1(1950年代から80年代前半)    1 悪書追放運動    2 東京都青少年条例制定をめぐる動き    3 マンガ・劇画ブームと規制の強化 第4章 マンガ規制の歴史2(80年代後半から現在)    1 「有害」コミック問題    2 児童ポルノ禁止法の成立とネット時代の表現規制 第5章 マンガ規制は何を意味しているのか

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