今日の読書 ひきこもりから見た未来/斎藤環
新年一発目に何を読もうかなという事で、非常に私とも関わる問題ですし、新年にふさわしいだろうと考えて読んだ1冊ですね。著者はひきこもりに関する著書やサブカル方面に見識のある精神科医師であり、私は考え方に近しいものを感じ(もちろん、私は専門的な見識そのものを持ち得ていない無知蒙昧な底辺の人間でしかなく、お前の考え方なんか知ったこっちゃないと言われるだけですが)結構な数の著書に目を通してきました。本著は筆者の専門分野だけではなく、その時々の時事問題や政治問題について、自分の専門分野から大きく外れた政治信条などを押し付けるような事は避けて書かれたものになります。現在の日本だけではなく世界的に、どうにも結論ありきの一見正論に見える論調であるとか、他者との繋がりに関して気をつかわなすぎる、利己が蔓延している事が問題となっているのではないか、それが若者の問題であり、日本は引きこもりやニートが増加し、ヨーロッパは若者ホームレスが増加するという形で表出してきていると。ひきこもりやニートに関しては、どうしても本人の甘えであるから、力づくでも引きずり出せというような論調がどうしても目立ってしまいます。もちろん、そういった側面がある事は否定しませんし、私なんかは人間の99%は甘えで出来ていると言っても過言ではないので、正面切ってそう言われてしまうと、ごめんなさいと謝るしかないのですが、大壇上の正論や説教、批判だけしていればそれで事が収まるというように考えている人はよほど、精神的に強者であるか、成功者としての経験論でしか物事を見る事ができないか、もしくは、日ごろのたまった不満を、明らかに自分よりも弱いとしか思えない存在に向かって、叩きつけようとしているだけでしかないと。単なる経験論や単なる感情論を抜きに、本気で取り組まなければいけない問題があっても、そう言った事が邪魔となり、また、単なる消費される流行として捨てていかれるために、何の解決もされないまま後回し後回しになっているのではないかと本気で危惧している部分は感じられます。1つ1つ書かれている事は短いエッセーであり、ここ5年くらいの時事問題ですので、書かれた時とすでに違う状況に流れていたり、話題に繋がりが無かったり(時系列でまとめられていないので)ありますが、1つ1つが短いために読みやすさと、考える余地があるものとなっています。現在の巷間にあふれている論調でありますとか、マスメディアが喧伝するような事、どこかに歪さを感じ、どこかに片手落ちを感じ疑問を抱いている人は、その引っかかりがどこにあるのか、考える助けになるかもしれないですね。第1章 徴候としての「現在」 病気と「時間的損失」 不登校児は「不良品」? 権力関係と「暴力」 ニートの親は動物にも劣る? ネットカフェ難民 若者の貧困問題 ひきこもりの今 成人と成熟のあいだ 高齢者と犯罪 ひきこもりの高齢化 日本化する世界第2章 消費されていく「悲劇」 精神障害者と犯罪 JRバッシングは「祭り」だ 「少年犯罪」を物語るな 若者の通り魔殺人 敵の見えない時代の倫理 自殺防止サイトにリンクせよ ひきこもりは爆発する 奈良小一女児殺害事件の教育 ウィニー以前には戻れない 宮崎勤被告の死刑判決に思う 犯罪の裏にある孤独 「健全教育」のために 飲酒運転と刑法三十九条 人はなぜ「飲酒運転」をやめられないのか第3章 医療が置かれている場所 医療と成果主義 失言と報道の責任 「医療崩壊」の行き着く先 「在宅ホームレス」を救え 若者政策の困難 「自立」という弱者の切り捨て 母性を装う「人権擁護法案」 「若者政策」をEUに学ぶ 障害者につけこむ自立支援法 「女王の教室」は美談ではない 暴力で「ひきこもり」は治らない第4章 時代の空気を読む 「KY」の仕組み ホリエモンは「2ちゃんねらー」 自民党は総選挙で「惨敗」した 「欧州のコイズミが必要だ」 「エルヴィス物真似芸人」の症状 「キャラ」で勝った福田首相 昭和天皇を翻訳したロシア映画 オバマ大統領への親近感 参院選と「空気」第5章 寛容は寛容によって護られる 脳と心霊をつなぐもの 私的欲望としての九条 中国との文化交流 メディア・リテラシー 四川大地震後の中国 皇太子妃のご病気 国家体制と自由 石こう像教育の転倒 奇妙な「戦犯」 欲望より不安の時代【送料無料】ひきこもりから見た未来価格:1,680円(税込、送料別)