Wikipediaができて、百科事典の価値はどうなったのか
Wikipediaの普及によって、日常、百科事典を引くことはまずなくなった。電子辞書などの便利なツールもあるが、Wikipediaの更新速度やポータビリティには勝てない。一方で、百科事典はなくなったわけではないし、どうしても百科事典が必要なこともある。とはいえ、百科事典もWikipediaも人間が書いており、百科事典が特別な存在、とされる時代は終わった。既存メディアも、インターネットコンテンツの普及により、マスコミで働く人が、特別な存在である、とされる時代は終わったように思う。もちろん、「テレビに映像を配信する」ということの特権性は失われていないどころか、ますます強まっていくだろう。情報サービス業とは、供給が需要を圧倒的に上回った世界である。供給が増えにくいもの以外は、ものすごいスピードで価値がなくなっていく。いっぽう、CDの価格が10分の1になったとしても、感動できるCDに出会える枚数は10倍に増えない。需要者側の心を動かすものの総量は、きっとあまり増えないゼロサムゲームにある。環境の変化が、独占状態から、寡占、完全競争に向かわせ、そこで淘汰されて、生き残ったものが自然独占の状態を生み出す。情報サービス業のこの10年はそういう時代だったように思う。