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ちゃいにーずティー

ちゃいにーずティー

私のイギリス出産体験記

陣痛を感じたのは、夜中の1時半。
重い生理痛のようなものを感じて、目覚めた私は、おかしいなぁと思い、トイレへ。

すると、10ヶ月ぶりにみる、膣からの出血。

…とうとう、来たか…

これが、第一印象。
部屋に戻って、イビキを掻きながら寝ているセイを起こして、

「出血してる。天ちゃんもうすぐ、来るよ」

セイは、寝ぼけまなこで、

「ん。それで?」

あのね~、もっと緊張感持ってよ~!

「でも、明日、仕事行かんと、オレがカギ持ってんねん。」

…仕事よりも赤子でしょうに~!セイのバカ!!

と、言っている間に、また、陣痛が始まった。

1階で寝ている母親にも出血の旨を伝え、痛み止めのTENSマシーンを背中に張ってもらう。
早速、スイッチを入れてみると、感覚としては電流が背中を走っているような感じ。
そして、陣痛が治まると、休止にモードを切り替える。

あ、そうそう、間隔測っとかないと。

そう思って、測り出すと、その時点ですでに4,5分間隔。
セイに、

「マッサージ、マッサージ!」

と、仙骨の辺りをさすってもらうが、あまりにも間隔が狭いので、セイは、最初私が冗談でマッサージをせかしていると思っていたらしい。
私も、最初はもっと陣痛の間隔が広いものだと思っていただけに、いきなりの4,5分間隔に焦りを隠せない。

もっと、ゆっくり来るもんじゃないの~??いきなり、こんな間隔じゃ、病院に行かないと…

そういうわけで、セイに病院に連絡してもらうが、病院のナースは、陣痛が始まったばかりならもう少し家で様子を見たら、というアドバイス。
陣痛の間隔は、もうすでに4,5分ごとなのに。

しばらく経つと、陣痛がもっとひどく、重くなってくる。母も、出血しているし、病院に行った方がいい、と心配顔。
私も、これで家で生まれてもらっても困るし…とセイに頼んでもう一度病院へTEL。
そして、あわただしく準備をして、病院へ向かう。

病院は、車で3分の近場。到着すると、早速デリバリースイート(分娩個室)へ通され、ベッドに横になる。
その時点で、すでに陣痛が3,4分間隔でうだるような腰の重さ。もともと私は生理痛がひどい方だが、その10倍はあるだろうか。
TENSマシーンの鎮痛モードはすでに10まで上がり(強さを1~15まで調節できる)、担当の助産師、シャロンが、エンテノックスの笑気ガス(麻酔ガス)を手渡してくれる。

後でカルテを見て知ったことだが、入院時で子宮口はすでに8cm開大していた。

陣痛時にエンテノックスガスを使っていたが、吸っていると不思議~な感覚に襲われる。
多分、入院して、20分くらいで、陣痛時すでに「アウアウ」言っていたのだが、まるで他の誰かが私のために叫んでくれているような感覚。羞恥心も何もなし。周りの音も自分の声も聞こえるものの、どこか違う所で観賞している感じなのだ。

陣痛が治まると、ガスをはずし、下界に戻ってくる感覚で、ふうぅぅ~、とリラックスする。横にいて、私に冷やしタオルで汗を拭いてくれたりしていたセイは、

「スケアリ~やなぁ(私の叫び声に対して)」

と、びっくりしている様子。母は、落ち着いて私を見ている。
入院して30分ほど経った頃だっただろうか、そうこうしているうちに、すごくいきみたい気分になってきた。

セイに頼んで、シャロンを呼んでもらう。シャロンにプッシュしたい気分になる旨を伝えると、シャロンは、しょうがないわねぇ~、という感じで内診をする。
ところが、

「オーマイガっ!もう、すぐそこまで来ているわよ~!」

という、シャロンの声。
急いでもう1人の助産師を呼び、人工的に破水させて、赤ちゃんの保育器まで登場する。
私は、

「えぇ、そんなに早いの~!」

と、自分でもオドロキを隠せない。
正直、心の準備も何もなかったが、プッシュすればいいんやからガンバろ、という思いと、エンテノックスで自分も外野気分を味わえるのとで、痛がりで怖がりの私でも何とか乗り越えられる…かな、というかなり他力本願的な思いにも助けられていた。

人工破水させたせいで、温かいものが股の間を流れていく。
陣痛は、すでに1分ごと、またはそれより短い間隔で襲って来ている。シャロンが、

「POO(お通じ)したいでしょ、POOをしていいから、いつもするように、出すようにね!」

そう。
すごく、そういう気分だった。とにかく、史上最大のうOこがスタックしていて、出したい~、という気分。

そういえば、日本じゃお産前に浣腸するんじゃなかったっけ…と、ふと頭をよぎるも、その頃には羞恥心も何もない状態。
セイも母もいる前で、大股広げて叫んでいるのだから。
しかも、日本のように、足台に足を乗せて、タオルで覆ったりもしていない。
もう、自然そのものの状態でのお産なのだ。

シャロンの声が遠くから聞こえる。

「次、陣痛がきたら、思いっきりプッシュするのよ!足を両手で持って、思いっきり股を開いて!」

来た。
すっご~い、ビッグ・ウエ~ブ。
降りてきている。
本当に、大きな大きな、アレが!!

もう、何がどうなっているのか全然分からない状態で、とにかく、自然の摂理とでもいうのか、つまったものを押し出す、という気持ちで押した-----。

「ほら、レイ、頭が見えてるよ!!」

母の声が遠くから聞こえた。
つぶっていた目を開ける。

あっ、本当!

股の間に小さな頭が見えた。不思議にも痛みは全然感じない。

「レイ、次、もう一度、頑張ってプッシュ!」

シャロンの声にあわせて、思いっきりプッシュ、プッシュ、プッシュ……!

そして、大きな大きな開放感と共に、赤ちゃんの体が出てきた!!
グルグルとぐろを巻いた臍帯の向こうに赤ちゃんが。

オギャ~、オギャ~、オギャ~…!!!

元気な泣き声が聞こえてくる。
シャロンの言われるままに、セイが臍帯を切っているのが見える。
そして、そうこうしているうちに、シャロンが赤ちゃんを私の腕に持ってきてくれた。
赤ちゃんは、予想に反して女の子(10ヶ月間”天ちゃん”呼ばわりしてきたのに…)、体重は2650gだった。
ずっしりとした、赤ちゃんの重みを感じながら、ほっとする私。

「あぁ、ようやく会えたね…。生まれてくれて、ありがとう…」

生まれたらきっと感動して泣いてしまうだろうなぁ~と思っていたが、感動というよりは、開放感と安心感でほっとする私。

ところが…

「信じられないわ…、あんなに安産だったのに…」

シャロンと他の助産師の話し声が聞こえてきた。どうやら、会陰裂傷しているらしい。
正直、会陰切開や裂傷のことについて出産前はかなりナーバスになっていた私だったが(←痛がり屋)、出産を終えた今、何が来ても大丈夫、という気持ちだった。

イギリスでは、助産師が会陰裂傷の縫合をするのだが、何針か縫った後シャロンが、

「出血が止まらないわ…、かなり深いわね。私の手に負えそうにもないから、ドクターを呼ぶわ」

と、ドクター登場。
そこから、20針は縫われただろうか…肛門の辺りまで裂傷しており、出血も500cc以上を数えた。

どうやら、分娩時、必要以上にいきみ過ぎたらしい…。(←でも、あの状態で”いきみ”を加減するなんて、インポッシブル!!)

私は、出血しているし、かなり体力も使ったから、水分補給をしないと…、と持参したミネラルウォーターをがぶ飲みしていた。

悪夢の縫合を終えると、今度は赤ちゃんへ初乳をあげる。出産してすぐの母乳は、コロスタムといって栄養素がたっぷりなのだ。また、赤ちゃんが母乳を吸うことによって子宮復古を促すという。
そうこうしているうちに、また、シャロンが登場。今度は何かと思いきや、

「お風呂に入るでしょ?ラベンダーオイルを入れておいたから、気持ちいいわよ~」

と、進めてくれる。

日本じゃ、縫合後のお風呂なんて、禁忌もいいところなのに、いきなりお風呂かい…

と思いながらも、郷に入れば最後まで郷に従うか、と腹をくくって、セイに付き添われてバスルームへ。
その時点で、すでに歩行している自分が信じられなかった。
ラベンダーの香りのするお風呂へ浸かり、すっきりして、産科病棟へ。

病棟では、スタッフ待遇ということで、個室を提供してもらえた。
そんなに出血もしたし、縫合もしたから、無理かなぁ~と思いつつ、

「いつ退院できますか?」

と、聞いてみると、

「小児科医が赤ちゃんを診察してOKなら、今日中に帰れるわよ」

という返事。さすが、イギリス…。日本の常識は、どこまでも通用しないらしい。
しかし、早期退院を望んでいた私には思いも寄らぬ朗報で、半日入院し、赤ちゃんの健康を確認した後、当日無事退院するに至った。

この出産を通して、日本とイギリスの病院の違いを患者として経験することが出来たし、何より人としてすばらしい体験をしたと思う。

この感動をいつまでも忘れず私の心の中にとどめておきたい。


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