めざせ!社会復帰

2019/03/06(水)17:30

飼い主のいない動物に向き合う獣医師

動物愛護(1057)

alterna 2019年3月4日 2:13PMより一部転載 各地の動物愛護団体の地道な活動により、年々、犬猫の殺処分数は減っています。しかし一方で、命はありながらも危険にさらされ、劣悪な環境で生きる犬猫たちがいることをご存知でしょうか。「飼い主のいない動物たちの生に向き合う獣医師も必要なのではないか」。そう感じた一人の獣医師が、課題解決のために立ち上がりました。(JAMMIN=山本 めぐみ) 保護しなければならない犬猫をこれ以上増やさないために ​​余剰犬猫問題蛇口モデル。「人と動物の共生センター」ホームページから抜粋​​ 岐阜を拠点に活動するNPO法人「人と動物の共生センター」。理事長を務めるのは、獣医師の資格を持つ奥田順之(おくだ・よりゆき)さん(33)。獣医学部に通っていた学生時代、飼い主から愛され大切にされる犬猫がいる一方で、人知れず殺処分される犬猫がいることに違和感を覚えたといいます。 「置かれた立場によってこんなにも扱いが違うんだということを知った時、矛盾を感じた。飼い主さんがいる動物は、たくさんの獣医師がその命のためにがんばっている。けれど、飼い主のいない動物たちの生に向き合う獣医師も必要なのではないかと感じ、それを自分が担いたいと活動を決意した」と、活動を始めたきっかけを振り返ります。 ​​「人と動物の共生センター」理事長の奥田順之さん​​ 「殺処分される犬猫の問題は社会的に注目を集めているが、私たちは『蛇口を締める活動』、つまり保護しなければならない犬猫がこれ以上生まれないよう、『野外で繁殖する犬猫を減らす』『飼い主が飼えなくなってしまった犬猫を減らす』『ペット産業において余剰となってしまう犬猫を減らす』活動をしている。よく水道の蛇口で例えられるが、保護活動はあふれ出た水をすくっている状態といえる。殺処分ゼロになっても保護される動物はゼロにならない今、あふれ続ける水を止めることが必要」 野外猫のロードキル推定数は、同じ年に殺処分された猫の数の8倍 ​​全国ロードキル調査。2018年、全国の74の政令市・中核市を対象とし、野外で死亡した猫の遺体の回収数をアンケートによって調査したもの​​ 人と動物の共生センターの活動のひとつが、野外犬や野外猫の調査です。2018年度には全国の野良猫のロードキル(交通事故による轢死)の数を調査しました。 「私たちの調査によると、野外猫のロードキル数は推定で347,875匹。同じ年の殺処分数(43,216匹)の8倍にもなる。動物愛護の活動では殺処分数に注目が集まることがほとんどだが、同じように失われている命があるという事実をまず知ってほしい」と訴えます。 犬猫を取り巻く環境を考慮し、飼い主へアプローチ ​しつけ教室(成犬コース)の様子。飼い主が学ぶことに重点を置いている​​ 「保護しなければならない犬猫を増やさないためには、飼い主へのアプローチも重要」と奥田さんは指摘します。 「飼い主が犬を手放す理由の一つが、咬む、吠える、引っ張るといった問題行動だが、犬の飼育放棄の直接的な原因として、20%ほどが問題行動によるもの。専門知識を持つ獣医とトレーナーの視点から飼い主と愛犬の間で起こる問題を整理し、犬を訓練するのではなく飼い主が適切な知識を学ぶことによって問題行動を改善し、末長く共に暮らせる環境づくりのサポートに力を入れている」 ​​ペット後見互助会。契約者の一人、武富さんご夫婦と愛犬のリキちゃん​​ さらに近年、高齢の飼い主の入院や死亡によってペットが取り残されたり、保健所に収容されたりする問題が増加傾向にあることを受け、立ち上げたのが「ペット後見互助会」事業です。 万が一ペットを飼えなくなった時に備えて、弁護士や老犬・老猫ホームとも協働しながら、飼えなくなった後もペットが幸せに生きられるよう、飼い主が飼育費を残し、新たな飼い主につなぐしくみの提供も行っています。 他にも「ペットと防災」事業では、ペットと共に自宅で災害に備えられるよう、飼い主の自助力・減災力を高めるためのツールを開発、行政や地域、動物取扱業者や飼い主に向けて、ワークショップや講座等も開催しています。

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