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カテゴリ:街
東京の墨田区押上は、京成線や地下鉄半蔵門線など4路線が乗り入れる交通の要衝ながら、これといった特徴のない下町のローカルタウンだった。
それが東京スカイツリーの出現で、突如として全国区の知名度となり、タワーの建設中から多くの人が押し寄せている。 当然地元への波及効果も期待されており、周辺の商店街はご当地キャラクターを作ったり、独自のみやげ物を考案したり、開業直前の週末にはみこしを担いで雰囲気を盛り上げるなど、波に乗ろうと準備を進めてきた。 しかし東京の下町で生まれ育ち、今もスカイツリーを近くに眺めて暮らす筆者としては、目論見通りに事が進むかどうか気がかりだ。 最寄りの押上駅、とうきょうスカイツリー駅(旧・業平橋駅)から周辺のどの商店街へ行くにも、スカイツリーまでの道から少し外れるか、逆方向に歩かなくてはならない。 しかもスカイツリーには300店以上を収容する巨大な商業施設が併設されている。 飲食も買い物も、すべてスカイツリー内で完結し、期待していたほど周囲にお金が落ちない懸念が浮上している。 隅田川を挟んで、浅草という横綱級の観光地が隣接していることも、押上には不利に働くかもしれない。 遠方からの観光客が、スカイツリー見学のついでにもう一カ所訪れるとしたら、回り道が必要な商店街よりも、電車で3分程度の浅草に向かう可能性が高い。 浅草寺の五重塔とスカイツリーを同じ写真に収めるのは悪くない。 ただ、押上界隈にも潜在的な集客力はある。 スカイツリーから程近い鳩の街通り商店街の周辺は、作家・吉行淳之介の芥川賞候補作「原色の街」、芥川賞受賞作「驟雨」の舞台となった。 もう少し足を伸ばせば、永井荷風が「?東綺譚」で描いた玉の井(現・東向島辺り)があり、往年を忍ばせるタイル張りの民家がわずかながら今も残る。 すでに鳩の街には古民家を利用したカフェなどが登場しているものの、文豪の遺産を観光資源としてさらに生かせば、文京区と台東区にまたがる谷中・根津・千駄木のような、文化的な香りのする人気スポットになれるかもしれない。 スカイツリーの近くまで行くと、昭和のまま時代が止まった町並みに、何の脈絡もなく巨大な塔がそびえ立つ風景に少しぎょっとする。 スカイツリーという巨木は、栄養を吸い上げて周囲を枯らしてしまうのか、それとも周囲と調和し、たわわな実を落として地元を潤すのか。 スカイツリーは5月22日、開業した。 (ロイターブログより) -------------------- 華々しく開業した東京スカイツリー。 天候が悪かったり、強風でエレベーターが止まったりと上手くいかない部分もあったものの、あれだけの人が並んだという事実からもその注目度が尋常でないことを感じる。 ツリーだけでなく、水族館や商業施設など、付属施設も充実している。 東京でも今後一大観光拠点となっていくことは間違いないだろう。 ただ、記事にあるように地元商店街への波及効果については危惧される部分も多い。 街の活性化に際しては極力地元への配慮がされてしかるべきだが、以前からこの点については疑問を持っていた。 例えば、駅名の改称。 業平橋駅は東京スカイツリー駅になった。 東武鉄道にとってはシンボル的な意味合いも強く、意図は分からなくもない。 ただ、地元はスカイツリーの開業を期待して「おしなり君」というキャラクターを導入していた。 おしなり=押上と業平橋である。 これで駅名を変えられてしまったら立つ瀬がない。 要は、事前に地元との協調がしっかりとされていたのか、という疑問である。 開発の方針や、商業施設に伴う地元商店街の立ち位置など、ある程度配慮されるべきではなかったか。 場所だけ提供して根こそぎ持っていかれるのでは地元にとってあまり美味しいものではない。 街づくり的な部分では、企業の論理があまり前面に出過ぎてしまうのも感心しない。 地元への配慮はどの程度されているのだろうか。 そして商店街に利益をもたらすことになるのだろうか。 開業後の動向を注目したい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.05.23 00:06:17
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