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2015/11/02(月)00:32

「これでいいのか岩手県」 辛口批評本が地元で大ウケ

地理(283)

「所得や医療など大きな格差が存在するキビしい現実」「学力はビミョーだけどスポーツは案外イケてる!?」――。可愛らしいイラストとともに辛辣(しんらつ)な見出しが表紙を飾る批評本「これでいいのか岩手県」(B5判144ページ、1404円)が、盛岡市内の書店で好調な売れ行きだ。 出版したのはマイクロマガジン社(東京都中央区)。2007年、東京23区内を皮切りに「地域批評シリーズ」を始め、北海道から鹿児島県までの都市・地域で現在70冊を数える。岩手県は東北6県で最後の登場。全国では69番目に発売された。 取材は編集者とライター2人が10日ほど県内入り。地図を片手に歩き、住民に話を聞いたり、地元有識者に見解を求めたりして構想を練ったという。 巻頭の約30ページはカラー特集。南部藩と伊達藩の対立がテーマの「分割支配が生んだ南北のビミョーな感情」や、インフラ事情を指摘した「縦軸はいいけど横軸は相当ヤバい!」、観光を取り上げた「海・山・世界遺産などスポットは多種多彩」などの項目が並ぶ。通勤圏の拡大や県南地域の衰退を挙げ、「ボーダーレス化せざるを得ない状況の中で、伊達人の南部人化が進んでいる」と指摘する。 続くモノクロページでは地図や年表、グラフなども使い、現状や課題を示す。忍耐強いとされる県民性については「それだけストレスを感じている」と分析。「そのはけ口が飲み会であり、祭り。酒と祭りが岩手で欠かせないのは忍耐強い県民性だからなのかも」と結んでいる。 9月上旬、書店やコンビニに本が並び始め、盛岡市大通2丁目のさわや書店本店では、9~10月に全書籍で一番売れたという(10月28日時点)。店長の竹内敦さん(46)は「これまでに出たうんちく本やガイド本と違い、学術的・専門的な内容がうけているのでは」とみる。マイクロマガジン社によると、コンビニでの売れ行きも好調で、発売2週間の実売率は60%を超えたという。 シリーズを手がける第1編集部長の高田泰治さん(57)は「僕らは地域活性化の『応援団長』でいたい」と語り、あえて地元にとって耳の痛い話題も取り上げるという。「東京をまねるのではなく、岩手は岩手らしいやり方で活性化させられるはず。その方法を見つける上で、この本が役に立てばうれしい」 (朝日新聞DIGITALより) ------------------------------ これでいいのか岩手県 [ 岡島慎二 ] 話題の1冊。 地域批評という一般向けの本としては斬新な切り口に加え、表紙の辛辣さも目を引く。 (特に自虐的な県民性とも思えないだけに)これが地元で売れるのだから面白い。 切り口こそ逆説的だが、地域活性化への大きな後押しになりそうな企画でもある。 伊達と南部の対立軸や地勢やインフラ事情による県の分断という地理学的な考察や、忍耐強いとされる県民性→ストレスの蓄積→酒と祭りでの解放という社会学的な分析などかなり興味深い内容で手にとってみたくなる。 サブカル的な立ち位置ながらも専門性も高く、読み手知的好奇心を満たすアプローチは秀逸。 取材も大変だったと察する。 この地域批評シリーズが70冊も出ているのは知らなかった。 これはこれで一つのジャンルとして成立しそうな。

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