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2017/03/29(水)02:26

雪崩災害は防げなかったのか

災害・防災(794)

「雪崩被害は防げなかったのか」(NHK解説委員室) 3月27日に栃木県那須町のスキー場付近で発生した雪崩に登山の講習会に参加していた高校生らが巻き込まれ8人が死亡、40人がケガをした事故について、NHKの松本浩司解説委員による見解。 ・引率した教師たちは登山経験が豊富であり、雪崩が起きやすい状況にあるということ認識していたはず ・講習会の最終日で登山を雪のために中止し、第2ゲレンデの周辺で深い雪の中を進む「ラッセル」の訓練を行った ・今期のスキー場の営業は既に終了しているが、那須町によれば第2ゲレンデの上はたびたび雪崩が起こる場所。シーズン中は頻繁にパトロールを行い兆候が見つって第2ゲレンデを閉鎖することもシーズンに数回ある ・この登山講習会は50年以上の長い歴史があり、近年は同じ場所で開催されている。雪で登山が中止になったため最後にラッセル訓練を経験させたいという思いがあったのでは。ただ、よく知った山だけに油断があった可能性も ・自然の中での活動はリスクが必ずある。ただし教育活動として行う以上安全に最大限の配慮が必要 雪崩で8人死亡 講習参加の全員が発信器持たず(NHK) こちらの記事では講習に参加していた生徒と教員の全員が、雪崩に巻き込まれた際に居場所を発信する「ビーコン」を持っていなかったことを指摘 ・雪崩の可能性がある山に登る際は携帯するのが望ましいがビーコンは今回の講習での持参品リストには入っていなかった ・登山を中止してラッセル訓練に講習の内容を変更したことは現場から主催者側には伝わっていなかった ・防災科学技術研究所・雪氷防災研究センターの上石勲センター長によると、新たに積もった雪が崩れて流れ下る「表層雪崩」が起きた可能性が高い ・那須町によると、現場付近は毎年雪崩が発生しており、危険がある場合はゲレンデを閉鎖している ・日本山岳ガイド協会の磯野剛太理事長は、研修の成果をきちんと出そうと訓練をしたことがあだになったと指摘。スキー場だからといって安全ではなく、ラッセル訓練をするのなら、もっと樹木が多い場所を選ぶべきだった点、ビーコンを携行していなかったことは雪崩を想定していなかったと言わざるをえない点から、判断に問題があった可能性に言及した 雪崩、尾根で生死わかれたか 生存の生徒、発生時を語る(朝日新聞) ・講習会に参加していた高校山岳部の男子生徒が、亡くなった県立大田原高の生徒たちは尾根をまたいだ反対側の斜面を歩いていたこと、雪崩の雪が尾根で分かれて、自分たちの側は雪が少なかったので助かり、向こう側は雪量が多かったことで被害が大きくなった可能性を証言 【事故調査】170327那須岳雪崩事故・速報(日本雪崩ネットワーク) ・現地調査の結果、面発生乾雪表層雪崩であり、規模がサイズ2(走路およびデブリ量より推定)であるとした ・雪崩の流下方向と被災現場を推定。現場が完全な山岳エリアであり、スキー場ではない点を指摘 雪崩から身を守るために(政府広報オンライン) ・雪崩の発生しやすい場所として傾斜が30度以上の斜面が挙げられている。雪崩ネットワークの調査によれば現場の斜度は20~25度、推定発生区への見通し角は33度とのことであり、これに該当する ・同じく雪崩の発生しやすい場所として低木林やまばらな植生の斜面が挙げられており、今回の現場は疎林であり、やはりこれに該当する ・被害を防ぐために心掛ける点として危険個所の把握、気象庁や市町村が発信する情報をチェックすることが挙げられている。気象庁では前日に雪崩注意報を発表していた 以上、さまざまな情報を合わせると雪崩のリスクが高かったことは読みとれる。 現場の特性や気象状況等を考えれば、ラッセル訓練を行ったこと、ビーコンを携行していなかったこと(記者会見で主催者側は現在の山の状況を「冬山」ではなく「春山」と認識していた旨を発言している)も含め、適切なリスク管理がされていたのかには疑問を持たざるを得ない。 もっとも、山に登るなど自然の中での活動は少なからずリスクを伴うものであり、2014年の御嶽山噴火のようなケースもあり、すべてを防ぎきれるものでないことも認識されるべきではある。 一方で、教育活動の一環としての「講習会」であった点を考慮すれば、訓練の強行には疑問が残る。 今回はスキー場での被災だったが、雪崩は道路や住宅地を襲うこともある。 被害を防ぐには、やはり日頃から多くの人が雪崩災害を意識しておくことも必要だろう。 新潟県の自治体などでは雪崩ハザードマップも用意されており、発生しやすい場所や発生しやすい気象条件などを把握しておくことも重要。 今回の事故といい、先日の長野での救助訓練の防災ヘリの墜落事故といい、「本番ではない訓練」での犠牲が続いている点は残念なこと。 せめて再発防止につながって欲しい。

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