2017/07/22(土)16:36
他人が記録した移動軌跡を使った屋内ナビゲーション
GPSやWi-Fiなしで屋内ナビを実現するには? Microsoftのユニークな試み(ITmedia)
今やスマートフォンの地図アプリとナビゲーション機能さえあれば、知らない街でも迷わず目的地に行けるのが当たり前になった。こうした機能はGPSのような衛星を使った位置情報システムで実現されているが、残念ながらGPSの電波を受信しにくい屋内や地下では十分なナビゲーション機能を提供できていない。
興味深い(というかいい視点の)記事。
地理空間情報業界でも屋内測位、あるいは屋内外のシームレス測位は市場の伸びしろが大きく注目を集めている分野だ。
その要因は2つあって、一つは記事にあるように標準化された測位方法がないこと。
そしてもう一つは、プラットフォームとなる地図情報がないことだ。
前者についてはさまざまな方法が並行して開発・検証されているという事情も大きい。
そのため特定の(閉じた)エリアで実用化されているサービスはあっても、その方法や機器が全国どこでも使えるということにはなっていない。
個人的にもこれまでビーコンを使ったものやLEDの可視光通信、超音波などさまざまな手法の研究や実証を取材させてもらっているが、いずれも有効性の高さを示しているものの、どの方法にも一つ二つ課題があって、標準化に至っていないというのはもどかしいことでもある。
中には全国で実用化できる可能性が高いものもあるのだが、実際にはそれぞれの陣営の思惑もあり(さらにそれぞれローカルエリアでは機能しているという事情がある)、インフラとして統一するところには至っていない。
一方記事にあるナビは、他の人の軌跡を利用するという、いわば他人のふんどしで相撲をとるような形だが、利用するのはスマホのセンサーのみという圧倒的な潔さがある。
「共有」がポイントになっているあたりはオープンデータ時代にふさわしいやり方ともいえるし、アプローチとしては非常に面白い。
ただしやはり現時点では閉じた空間のナビであり、また性質的にも特定の施設など閉じた空間向けであるともいえる。
ここから標準化に持っていくのはちょっと難しそう。
実用化されるのがいずれの手法であれ、屋内地図プラットフォームが整備されていないことにはその実力がフルに発揮されるのは苦しい。
実は本当に待たれているのは「地図」なのではないか。
なお、今年の9月18~21日に札幌の北海道大学においてIPIN2017(Indoor Positioning and Indoor Navigation:屋内測位・ナビゲーション国際会議)が開催される。
世界中の屋内測位研究者が集まる国際学会で、8回目を迎える今回、初めて日本での開催となる。
大きな動きがあるかもしれないのでこちらも注目したいところ。