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晴走雨読

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November 11, 2006
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テーマ:たわごと(26814)
カテゴリ:つれづれ・・・
 
 
 
 
 
彼に会ったのは2度目だった。

何故彼だと分かったかと言うと、彼はお腹の横の辺りに独特の斑点を持っていたからである。


その日は冷たい風の吹く、底冷えのするような朝だった。

朝日がかなり斜めの低い位置から差し込む中、僕は洗濯物を取り込もうとベランダに出た。

身を屈め手早く取り込んでしまおうとトレーナーに手をかけようとした時、

彼がそこに居ることに気づいた。

彼は風に揺れるトレーナーの肩にしっかりと掴まったまま身を固くしていた。

”こんなところに居たって獲物はやってこないよ”

僕は彼を獲物の取れそうな所へ移そうと、彼の背後からそっと手を伸ばした。

カマキリを捕まえる時は小さい頃からそうしていた。


ある程度の抵抗を予測しながらゆっくりとそして慎重に指を近づけていった。

そして掴んだ。


僕の予測は裏切られ、そして心に波が立った。

彼は死んでいた。



僕はそっと手を引いた。

”死”するものの圧倒的な威厳はこの小さな生物からも力強く放たれていた。


おそらくこの冷たい風が彼に死を運んできたのだろう。

しかし彼は何故ここを死に場所に選んだのだろう。

ここを登る時に、彼は一体何を思っただろうか。



風は相変わらず彼をもてあそび続けた。




しばらくして少し落ち着きを取り戻した僕は、再び同じ指で彼を掴んだ。

そしてしっかりと食い込んだ細い足をそっとトレーナーからはずし、

アボカドの茎の根元にそっと置いた。

僕は手早く洗濯物を取り込み部屋の中に戻った。






いつもと変わらない一日が始まろうとしていた。

ただ僕は、指の先がぼや~っと違う世界に浸ったままのような違和感を少しだけ感じていた。







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Last updated  November 11, 2006 08:47:38 PM
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