テーマ:たわごと(26614)
カテゴリ:つれづれ・・・
その日布団に潜り、時折咳き込みながら見るでもなくテレビを見ていた。 何時になったか分からなかったが番組が変わった。 写真家であるというその男はぎこちない歩き方でのそのそと登場した。 学生のようでもあり、オタクのようでもあり、浅草キッドの水道橋博士に似ていると思った。 この一見冴えない男は一体どんな”目”を持っているというのだろうか。 僕は少しだけ身を起こして、画面に向き直った。 作品の紹介が始まる。 それはミニチュア模型の写真だっ・・・・ ん・・?・・・ いや・・!?・・・ まさか・・・ そんな・・・!! ・・・・・ 布団から起き上がった僕は硬直していた。 目が必死にその写真を写し取り、脳みそがそれを懸命に解析する以外動きが止まってしまった。 (※ 文末に余談あり) 僕は乏しい写真に関する知識を頭の中に広げ続けた。 そして、それは、ぼかしによる効果であり、おそらくは、Photoshopなどを使ったものであろう、と、一つの結論を出した。 司会者が話し出す。 ”初めて見る人はミニチュアにしか見えませんよね。僕もこれがどうしたの?って思いましたよ。 まさかこれが実写とは・・・驚きました” さらに続ける。 ”どうやって撮っているのですか?とか、何かで加工されているのですよね?とか聞かれませんか?” と。。。 そして、その男の解説が始まる。。。 彼が撮影に使用していたカメラは昭和初期に町の写真屋にあったようなカメラ。 アコーディオンのようなジャバラを伸ばしたり縮めたりしてピントを合わせるのだそうだ。 そしてこの写真を撮るポイントは、 像を写し取る側を微妙に傾けることによって水平方向の一部だけに焦点が合うように工夫しているところだった。 再び作品が画面いっぱいに現れる。 今度は少しだけ落ち着きを取り戻していた しかし、何かに突き放されて落ちていくような感覚の中で画面を見つめた。 このブログとほぼ同時進行で写真も撮ってきた。 当初はここまで写真にのめり込むとは考えていなかったが、気がつけば一眼レフを手放さない日々を送っている。 書店や図書館では先人達のさまざまな写真に触れ、 アイデアや構図、アングルなど自分が惹かれるものは頭にコピーアンドペーストをしてきた。 しかし”その男”の作品はいままでのどの作品とも違っていた。 これまでのものとは明らかに異質であった。 なにかをコピーしようなんて気を起こさせない斬新で決定的なものだった。 番組が終わりしばらくすると咳が出始めた。 残り僅かな薬を冷め切ったお茶で飲み込んだ。 一瞬だけなにか別の世界に少しだけずれてしまったような居心地の悪さを感じた。 ふと、本田宗一郎の言葉を思い出した。 ”車は頭で作らずに、手で作れ” これからどこに向かおうか。。。 ![]() 本城直季(Tokyo Source-NO.12) ※ 余談ですが、交通事故など一大事の時の記憶はスローモーションであることが多いそうです。 それは緊急事態に際に、何はさておきその状況を打開するために脳と目がフル稼働することによるそうです。 全てのエネルギーを集中させる為にいつも以上に処理能力が上がる結果、 普段よりもスローに感じるということらしいです。 また、モノトーンに感じる事例もあるそうですが、これも色が危機的状況で必要ないと判断されているからということのようです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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