Chobi's Garden

2005/09/22(木)11:05

村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」

読書(59)

村上作品は一時期、まとめて読んでいたのですが、 この作品は、なぜか読んでいなかったのを思い出し、読んでみました。 「難解」との誉れ高い?作品だそうですが、 あんまり深く考えずに、こういうものだと思えばいいんじゃないでしょうか? 「海辺のカフカ」と同じような感覚で読みましたが。 「あっちの世界」と「こっちの世界」(それは空間として存在するのかもしれないし 個人の深層心理の中にあるのかもしれないです)の行き来を すんなり受け入れられるかどうかなのかなぁ? この作品では、因果応報とか、輪廻転生とかの仏教思想も感じましたが、 どうでしょうね? 心の中に深い闇を持っているクミコが、「僕」と結婚したら すべてが良くなると思っていたんだけれど、やっぱりだめだったから、 ある日突然、失踪してしまいます。 これってわかる気がします。 自分の置かれている環境が変わったら、事態も良くなるのではないかと思っちゃうの。 けっこうそれでやって来ましたんで、私(u_u;) 結局、自分自身を変えなければ、まわりも変らないということに、 いろいろイタイ思いをして、やっと気がついた次第です。 クミコを取り戻すために、井戸に入る「僕」。 「井戸に入る」ということは、自分の心の奥深くに入って行くということなのかな? 深層心理が、あっちの世界で感応し合うことってあるように思うのです。 結局、クミコは「闇」の根源であった兄を殺した後、帰っては来なかったけれど、 涸れ井戸から水が湧き出て来た。 これは、2人の明るい未来を象徴しているように思うのですが、そうだといいなぁ。 「村上春樹、河合隼雄に会いに行く」という対談集があるのですが 「ねじまき鳥~」の話題も多く出て来て、おもしろかったです。 河合先生の「夫婦が相手を理解しようと思ったら、理性だけで話し合うのではなくて、 「井戸」を掘らないとだめなのです」という言葉が 印象的でした。 この小説では、「ノモンハン事件」や満州での中国人撲殺など、 数多くの「暴力」が、目を背けたくなるようなリアルさで描かれています。 人間の心の闇の深さや、業の深さを感じられずにはいられず、 それを象徴しているのが、真っ暗な「井戸」なのかなと思いました。 いずれにしても、この村上ワールド、村上氏にしか描けないよね。

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