2005/09/22(木)11:05
村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」
村上作品は一時期、まとめて読んでいたのですが、
この作品は、なぜか読んでいなかったのを思い出し、読んでみました。
「難解」との誉れ高い?作品だそうですが、
あんまり深く考えずに、こういうものだと思えばいいんじゃないでしょうか?
「海辺のカフカ」と同じような感覚で読みましたが。
「あっちの世界」と「こっちの世界」(それは空間として存在するのかもしれないし
個人の深層心理の中にあるのかもしれないです)の行き来を
すんなり受け入れられるかどうかなのかなぁ?
この作品では、因果応報とか、輪廻転生とかの仏教思想も感じましたが、
どうでしょうね?
心の中に深い闇を持っているクミコが、「僕」と結婚したら
すべてが良くなると思っていたんだけれど、やっぱりだめだったから、
ある日突然、失踪してしまいます。
これってわかる気がします。
自分の置かれている環境が変わったら、事態も良くなるのではないかと思っちゃうの。
けっこうそれでやって来ましたんで、私(u_u;)
結局、自分自身を変えなければ、まわりも変らないということに、
いろいろイタイ思いをして、やっと気がついた次第です。
クミコを取り戻すために、井戸に入る「僕」。
「井戸に入る」ということは、自分の心の奥深くに入って行くということなのかな?
深層心理が、あっちの世界で感応し合うことってあるように思うのです。
結局、クミコは「闇」の根源であった兄を殺した後、帰っては来なかったけれど、
涸れ井戸から水が湧き出て来た。
これは、2人の明るい未来を象徴しているように思うのですが、そうだといいなぁ。
「村上春樹、河合隼雄に会いに行く」という対談集があるのですが
「ねじまき鳥~」の話題も多く出て来て、おもしろかったです。
河合先生の「夫婦が相手を理解しようと思ったら、理性だけで話し合うのではなくて、
「井戸」を掘らないとだめなのです」という言葉が
印象的でした。
この小説では、「ノモンハン事件」や満州での中国人撲殺など、
数多くの「暴力」が、目を背けたくなるようなリアルさで描かれています。
人間の心の闇の深さや、業の深さを感じられずにはいられず、
それを象徴しているのが、真っ暗な「井戸」なのかなと思いました。
いずれにしても、この村上ワールド、村上氏にしか描けないよね。